10月10日 緑内障、見え方自覚し安全運転
国内の失明原因で最も多い緑内障。視野に異常が出始めても自覚のない人も多い。現在、矯正視力が両目で0・7以上でかつ、片目で0・3以上あれば視野異常の検査はなく、普通運転免許は失効しない。しかし、視野の異常に気付かないまま車を運転すると、事故につながりかない。
たじみ岩瀬眼科(岐阜県多治見市)の岩瀬愛子院長は2013~14年、警察庁からの委託で緑内障の患者約70人と視野が正常な約120人を対象に、自動車の運転シミュレーターを使った運転実験をした。
視野が欠けている度合いが高い60代男性の緑内障患者は、左右からの車の飛び出しに反応できず、「急に車が出てきた。全然気がつかなかった」と何度も「事故」を起こした。
しかし、同じように緑内障で視野の欠けた70代の男性の場合、「左から来る車が見えにくい」との自覚があるといい、視線をあちこちに移動させながら運転、見えにくい所では徐行した。
東北大病院による運転シミュレーターを使った実験でも、視野が正常な人に比べ、症状が進んだ緑内障患者の方が事故が3倍多く、視野の欠損部分から車が入ってくる時に事故が起きやすいことが確認された。例えば、視野の下方が欠けていれば左右の飛び出しを見落としやすく、上方が欠けていれば信号を見落としやすい。
緑内障と診断されたからといって運転をすぐにやめなくてはいけない訳ではない。
気をつけなければいけない場面を知ることで、事故を防ぐことも十分可能だという。
もっとも危険なのは運転ができなくなるのを恐れ、眼科を受診しなくなることだ。
緑内障は早期に治療すれば進行を抑えることができるが、自分では視野の異常に気づきにくい。多治見市内で実施した調査では、40歳以上の20人に1人が緑内障と診断され、そのうち9割は無自覚で治療していなかった。
緑内障の診断では、視神経の状態をみる「眼底検査」と視野計で視野を調べることが重要だ。視野計の検査は専門の眼科で受けることができ、自分自身の視野異常を把握できる。
健康診断では視力や眼圧、眼底の検査が主で、視野検査はほとんどされない。そこで、精度の高い簡易型視野計を使って視野異常を調べる試みがある。視野計を使った測定が30分程度かかるのに対して、簡易型だと数分程度で済む。一部の病院が健康診断にこの機械を導入、3次元画像解析で眼底を定量的に評価できる小型機器も出てきた。健康診断への導入や普及が期待されている。
一方、異常を指摘されても、受診する人の割合が低いという問題もある。
緑内障には早期治療が重要。現在、症状の自覚がなくても、一度眼科を受診し視野計などを使った検査をしておくこともおすすめしたい。
(朝日新聞 9月29日)