色を認識する感覚「色覚」。色の見え方は、みな違います。中には、見え方の違いが大きく、問題を生じることがあります。
▼なぜ違って見える?
色は光の波長の違いを脳が感じることで見えています。人間の目に入った光は、目の奥の網膜に届きます。網膜には、わずかな光も感じる「桿体(かんたい)」というセンサーと、色の見分けに関わる「錐体(すいたい)」というセンサーがあります。
この錐体は3つに分かれます。短い波長の光を吸収する「S錐体」、中間の波長を吸収する「M錐体」、長い波長の光を吸収する「L錐体」です。それぞれの錐体は、受け取った光に応じて電気の信号を出し、それが脳に届きます。「S錐体」の信号が多ければ、脳が「青」と感じます。「M錐体」の信号が少なく「L錐体」の信号が多ければ「赤」と感じます。信号を手掛かりに、脳は色を感じます。
遺伝によって、一部の錐体の働きが欠けたり、弱かったりする人がいます。すると、他の人と同じ光を見ても、脳の感じる色が他の人と少し異なることになります。違いが一定以上の人を、日本眼科医会は色覚の「異常」としています。男の人では20人に1人、女の人では500人に1人の割合です。しかし、「異常という言葉は差別的」として、「色覚に特性がある」などと言うこともあります。
▼本当に「異常」なの?
検査で『異常』とされても程度の軽く、実際には薄暗いと間違えやすい色がある程度で、生活に困らない人が大半だと言われています。色を感じられない、すべての錐体が働かない人は10万人に1人もいません。
多くは、M錐体かL錐体の働きがないか、弱いタイプ。一部の色の組み合わせを除き、大半の色を見分けられます。M錐体の働きが弱いと、黄緑とオレンジ、ピンクと水色などを見間違えやすく、L錐体が弱いと、それに加(くわ)えて、赤い光が薄暗く見えやすいといいます。
色覚のタイプと程度で、見え方は大きく違うのです。
色覚の特徴を知ることで、『赤い光を暗く感じやすいから注意しないと』という対応もできるので、色覚の状態を知るために、眼科専門医のもとで詳しく検査をするは大変重要となります。
▼多様な色覚
研究では、2種類の錐体(2色型)しか持たないサルは、3種類のサルより、周りの樹木などに似た色の虫を多く捕まえられることが分かりました。その理由として「2色型の色覚は、明るさなど色以外の違いに敏感だから」と説明されています。
NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO(クドー))副理事長の伊賀公一さんは「人類の進化の中で、多様な色覚が受け継がれてきたことには意味がある。異常とされるが、多数派でないだけ」と話します。
1990年代までは、色覚に異常があるとして多くの大学や職場に入れない差別がありましたが、今では仕事に差し支えるごく一部の職種を除き、原則、色覚は問われません。
さらに、いろいろな色覚の人を前提に、誰もが見分けやすい色使い「カラーユニバーサルデザイン」が提唱され、そうした色使いの出版物や看板が増えています。
伊賀さんは「『その赤い本を取って』でなく『右から3番目の本を取って』など、色の名に頼らないコミュニケーションをみながするといい」と話しています。
文部科学省は小中学校に4月から、色覚の正しい知識を子どもたちや保護者に伝えるよう求めています。 色覚を正しく理解することで未来への可能性を広げていきましょう。
(4月17日 中日新聞)