5月18日 緑内障検査で事故予防!?
本格的な高齢化社会となり、交通の便が行き届いていない地方では高齢ドライバーも増えているが、それに比例し事故も多発している。
中には重症の緑内障患者であっても車の運転が欠かせず、視野狭窄(きょうさく)による安全確認不足が原因と疑われる自動車事故を起こす事例もある。
外来診療で「信号やウィンカーが見づらい」「突然横に車が出てきてびっくりした」など、運転に対する不安を聞くことも多い。
緑内障は、何らかの原因で視神経が傷つき、視野が徐々に狭くなる疾患で、日本では失明の原因疾患の第1位である。40歳以上の有病率は5・0%、推定患者数は約350万人とされている。40代では有病率が2・2%だが、80歳以上では11・4%と加齢とともに高くなり、高齢者の代表的な目の疾患といえる。ゆっくり進行するため自覚症状に乏しく、病気に気づくのも遅れるため、9割が無自覚・未治療とされる。
視野が狭くなると、信号や交通標識の確認、左右からの飛び出しなどの危険予知が困難になる。ホンダの協力で視野狭窄患者用のドライビングシミュレーターが開発され、緑内障患者に試したところ、視野障害度が高いほど事故のリスクが高くなった。
しかし、普通運転免許の取得・更新にあたっては両眼の視力が0・7以上、かつ一眼の視力が0・3以上なら視野検査が行われず、緑内障によって著しく視野狭窄になっていても、免許の取得・更新が可能であるのが現状だ。
緑内障による視野狭窄は、治療により改善することはない。しかし、多くの場合は早期に発見できれば進行を遅らせることができ、生涯にわたり見づらさを自覚することなく過ごすことが十分可能である。また、大多数は自分の目の状態を知り、注意をすることで、自動車事故のリスクを減らすことができる。
2060年には、人口の4割が65歳以上という超高齢社会に突入すると見込まれる。高齢ドライバーの事故を減らす対策の一つとして、40歳を超えたらまずは眼科で検査を受けることをおすすめしたい。
(朝日新聞 5月13日)