5月18日 紫外線、子どものうちから対策を
春から夏に向けて強くなる紫外線。肌と同様に注意したいのが目への影響だ。
専門家は「将来の眼疾患を予防するため、小児期から十分な紫外線対策を講じてほしい」と注意を呼び掛けている。
▼ 「アフリカ人は視力がいい」はウソ!?
金沢医大 の佐々木洋教授(眼科学)は、東アフリカのタンザニアで紫外線と眼疾患の関係を探る疫学調査を実施した。タンザニアの小中高校生計231人を対象に裸眼視力を調べると、93・6%が1・0以上の良好な視力だった。ところが、紫外線が原因とされる眼疾患の一つ「瞼裂斑」の症状の有無を調べると、中高生で100%、小学生を含めた全体でも実に97・3%が既に発症していた。これは23・0%だった日本の4・2倍と予想以上の多さだ。さらに、こうした環境にさらされ続けた40歳以上の937人を対象に調べたところ、年齢が上がるにつれて裸眼視力0・3未満の低視力の人や失明した人の割合がどんどん高くなり、60代では37・4%、70代以上では74・6%に達した。70代以上の低視力が9・9%の日本とは対照的な結果となった。
▼ 紫外線と「瞼裂斑」「白内障」の関係
瞼裂斑は白目の表面を覆う結膜のタンパクが変性し、黄色っぽく変色したり盛り上がったりする病気。充血や局所的なドライアイの原因となり、放置すると、結膜が黒目部分に覆いかぶさる「翼状片」という病気につながる恐れもある。赤道に近いタンザニアの紫外線強度は日本の2倍以上。
屋外での活動時間が長く、めがねやコンタクトレンズの使用率が非常に低いため、タンザニアの子どもの目が浴びる紫外線量は、日本の3・3倍に上る。
さらに、目のレンズに当たる水晶体が中心部分(核)から白く濁ってくる「核白内障」が年齢とともに急増。紫外線によって白内障が早く発症したことで、水晶体が硬くなりピントが合わせにくくなるため、老眼も早い時期から始まっていることが分かった。「日本人でも目に大量の紫外線を浴びれば、タンザニア人と同じことが起こり得る」と佐々木教授は警告する。
▼ 対策は?
つばの広い帽子や紫外線カットの眼鏡、サングラス、コンタクトレンズが有効。紫外線の強い屋外で長時間遊ぶときは、これらを併用することでより高い予防効果が得られる。ただし、眼鏡はデザインによっては、顔と眼鏡の隙間から紫外線が入り込んでしまうことも。また、色の濃すぎるサングラスは視界が暗くなるため瞳孔が大きく開き、側面からの紫外線が水晶体に直接ダメージを与える可能性があるので、注意が必要だ。
(北海道新聞 4月30日)