2014.10.27
10月27日 期待のiPS細胞、実用には課題も…
iPS細胞(人口多能性幹細胞)を使った世界初の移植手術が、「加齢黄斑変性」の患者に実施されて1か月あまり。これまでに問題は起きていないとみられるが、誰でも受けられる安全な治療として確立されるにはまだ道のりがありそうだ。
▼加齢黄斑変性とは
近年患者が急増し、50歳以上の約1%にみられるという難病で、日本人の失明原因の4位。
加齢によって網膜の中心部である黄斑に異常が生じ、視覚の中心が「歪む」「暗くなる」などするが根治療法はなく、悪化すれば失明の可能性もある。進行を抑える薬の注射やレーザーなどの治療法があるが、いずれも機能低下を遅らせるもので傷ついた組織の再生はできず、iPS細胞を使った治療に期待がかかる。
▼手術実用化への道のり
iPS細胞を使った今回の手術は、安全性を確認するための臨床研究。
移植を受けた女性は黄斑変性の進行を抑える注射を18回受けたが、視力が落ち続けた。移植後の効果について、「視力がどれだけ回復するかはわからないが、視力を維持できて注射から解放されるのは大きい」と執刀した財団先端医療センター病院・栗本康夫総括部長は語る。
この女性にも、今後4年間は定期検査を受けてもらい安全性・有効性を確かめる必要がある。さらに移植する細胞の作製には1年近くかかるうえ、多額の費用がかかることも課題。
最新の医療の裏には、じっくりと時間をかけた検証が必要不可欠だ。
(10月21日 朝日新聞)
投稿日:2014年10月27日