10月15日 見直し必要?色覚検査の今

全国の小学校で行われていた色覚検査が中止されてから10年。
色覚検査を知らない世代が成人になっている。

茨城県の海運会社に勤める男性(20)は、中学3年の時に学校で初めて色覚検査を受け、「多くの人とは違った色の見え方をしている疑いがある」と指摘された。男性や家族はそれまで、色覚で生活上の問題を感じたことはなかった。
眼科に行き、詳しく検査した結果、色の感じ方に大きな問題がないことが分かり、希望する船員を養成する学校に進学し、その後船員として採用が決まった。
男性の母親(49)は「色覚の違いが問題になる進路を選ばなければ、知らないで大人になったと思う。しかし、特定の職業を選ぶ場合は、あらかじめ色覚のことを知らないと、とまどうこともある。中学1年くらいで検査をする機会がある方がいいのではないか」と感じている。
2010~11年度に行われた日本眼科医会の調査によれば、中高生の2人に1人が色覚の違いのあることに気づかぬまま、進学・就職時期を迎えていたという。同会は希望者は学校で色覚検査を受けられる仕組みが必要と提言した。
しかし、学校の一斉検査で使われてきた石原式色覚検査表は、生まれつきの色の見え方の違いは高精度に調べられるが、就労や日常生活に支障がある程度なのか判別するのは難しい。また過去に、他の児童の前で一斉に行われ、検査表を読めなかった子供が疎外感、劣等感を持つなど、配慮に欠ける面もあったことなどこら、根強い反対意見もある。

そのような動きの中、色の見え方で不自由を感じずに生活できる社会作りを目指す取り組みもある。
東京慈恵会医大の岡部教授は、多様な色覚を持つ人々も使いやすい印刷物や電気機器などの色づかいを提案するなどし、色覚への理解を広げる活動を続けている。
岡部教授は「色覚検査は学校で行う必要はないが、自分の適性を知る機会はあった方が将来の人生設計に生かせる。多くの人が色覚への理解を深めることも大切。」と話している。

(朝日新聞 10月8日)

 

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