1月27日 見えない私から感謝の手料理を

60歳の時に全盲になった豊明市在住の村瀬典世さん(79)が、「ブラインドクッキング」と名付けた料理会を自宅で開いている。自身で米を炊き、包丁を使って巧みに作る手料理は好評で、目が見えなくなっても前向きに生きる村瀬さんの姿に、周囲は明るく励まされている。

村瀬さんは会社員だった60歳の時に眼底出血などにより全盲になった。「自暴自棄になって引きこもった。家族にいら立ちをぶつけてしまっていた」と振り返る。2年ほど経った後、見かねた知人に「そんなことではダメだ。周囲に感謝して明るく生きなくては」と諭された。

「後ろ向きでいても仕方ない。できることは自分しなくては」と気持ちを入れ替え、ブラインドゴルフに挑戦し、携帯電話やパソコンの音声で知らせてくれるソフトを使い、メールのやりとりも始めた。

そして2017年、お世話になっていた点字やガイドボランティアへの感謝を伝えようと始めたのが、ブラインドクッキングだった。

独学で料理の勉強をし、調味料は感触で種類が分かるようにしたり、ご飯を炊く際の水の量は指で確認するなど、手探りで繰り返すうちに、包丁の扱いも慣れた。

今回の料理会では、目が見えていないことを示すため、アイマスクを着用し、自身の立ち位置や調理器具の場所などはボランティアに教えてもらいながら調理を進めた。

村瀬さんは「料理会はみなさんへの感謝を示す場。今後も続けていきたい」と笑顔に。視覚障害者のガイドボランティアを務める伊藤裕美さんは「自分はお手伝い程度で、回を重ねるごとにおいしくなり、楽しく味わっている。いつも前向きで明るい村瀬さんに、こちらが元気をもらっている」と話した。

(中日新聞 2025年1月20日)

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