11月4日 進化する緑内障治療について
緑内障とは、目と脳をつなぐ視神経が傷つき、視野が欠ける病気。近年では、視神経の状態が詳しくわかる機器が広く普及し、新しい手術法や点眼薬も続々と登場。診断や治療の精度が高まり、早期発見できれば視界を保てるようになってきている。
視野が欠ける主な原因は眼圧で、眼圧は眼球の丸い形を維持するための内圧で、眼球を満たす「房水」が、作られた量と同じだけ排出されることで一定に保たれている。何らかの原因でそのバランスが崩れると上昇し、視神経を傷つけていく。症状が進むにつれて、見えない範囲が広がる。年を取るほどなりやすく、日本人の場合、四十歳以上の二十人に一人、七十歳以上では十人に一人が発症するとされる。だが、片方の目の視野が欠けても、もう片方が補って正常に見えるため、症状に気づきにくい。一方で、診断や治療はここ十年余りで格段に進展した。中でも大きいのが、高性能な光干渉断層撮影(OCT)の普及だ。目の組織の断面を近赤外線を使って撮影する検査方法で、視神経の状態を立体的に調べられる。薬剤を使用せず、従来の眼底検査のようにまぶしくないため、患者の負担が少ない。
この検査が2008年に保険適用となって以来、機器を導入するクリニックが急増。当院でも既に導入している。最新機種は緑内障患者の95%を正しく診断でき、撮影にかかる時間も数秒にまで短縮された。
眼圧を下げる点眼薬の種類も大きく増え、各患者の症状などに合わせやすくなった。房水の排出口に金属の細い管を入れて流れを良くする手術法も開発され、16年には保険適用に。基本的に白内障の水晶体再建と同時に行い、手術時間は十分程度と体への負担が少なくて済む。点眼の手間を減らすことにもつながる。ただ、現状では欠けた視野を元に戻す方法はない。検診で早期発見し治療することが何より大切だ。国内では、眼圧がそれほど高くないのに視野に異常がでる「正常眼圧緑内障」が患者の七割を占める。そのリスク因子とみられるのは、近視、四十歳以上、家族に既往者、の三つ。特に近年はスマートフォンなどの画面を長時間、近距離で見る機会が増え、近視の人が増加傾向にある。三十代で緑内障を発症するケースも報告され、患者の低年齢化が懸念されている。年に一回は眼底検査を受け、早期発見につなげてほしい。
「中日新聞 11月1日」