10月22日 加齢黄斑変性 人工網膜で視力改善

視力が低下する加齢黄斑変性の患者に、人口網膜の技術を使うことで、一年後に文字が読めるようになった、と欧米の研究チームが発表した。

加齢黄斑変性は、視神経が集まる黄斑部の細胞が失われ、失明の原因になる病気で、進行を遅らせることはできるが視力を改善させる方法はない。

人工網膜は、視細胞が失われた患者の網膜にデバイス(チップ)を入れ、目の中に残っている細胞に電気的な刺激を与え、脳に信号を送る仕組み。

今回の臨床試験は、視力が落ちている60歳以上の患者に移植し、1年後に視力を評価すると、32人のうち26人で一定の視力改善が確認された。参加した半数に眼圧の上昇や網膜下の出血などがあったが全員が2カ月以内に回復した。

眼科医で人工網膜の開発に関わる大阪大の不二門尚特任教授は、「視力が低下した患者が本を読めるようになったのはすばらしいことだ」と評価する。

一方で、見え方に不自然さが残り、「技術的にはもっと良くなることが期待される」と話す。

(2025年10月21日 朝日新聞)

9月2日 視覚障害者を誘導「AIスーツケース」

取っ手を伸ばすと地面から120センチほどの高さ。見た目は一般的なスーツケースとさほど変わらない。だが内部には、本来なら荷物を入れる空間にバッテリーやモーター、コンピューターがぎっしり入っていた。重さは28キロに及ぶ。

大まかな仕組みはこうだ。まず、利用者は取り付けられたスマートフォンでAIと対話し、目的地を設定。車輪を動かすモーターがスーツケースを自立走行させ、目的地まで誘導する。その際、センサーやカメラの画像により障害物を認識。ルートを常に自動計算しながら、人や物にぶつからないように案内していく。約3センチまでの段差なら問題なく走行できる。

握っているハンドルの上部にはコインほどの大きさの円盤は取り付けられ、そこに親指を当てておけば、スーツケースが進む方向を円盤が動いて示してくれる。速度も手元で調整でき、スーツケースが勝手にスタスタと進んでしまうことを防げる。

日本IBMなどの企業でつくるコンソーシアムの事務局長、及川政志さんは「もっとスムーズに動くようにするなどの技術的な課題はある。法整備、社会的に受け入れられるかという点でも社会での活用にはまだ遠い」と話す。それでも「このスーツケースに安心して身を任せることによって、視覚障害者の人たちが周りの雰囲気を楽しめるような余裕が生まれる。新しい場所に迷わず行けて、いろいろなことが楽しめるようになる。そんな世界が実現すればいいなと思っています」と力を込めた。

 

2025年8月25日 中日新聞

7月8日 高齢期の斜視 甘く見ないで

「高齢期の斜視は、アイフレイル(視機能の衰え)の一種。軽視すべきではない。」

国際医療福祉大医学部教授で同大熱海病院(静岡県熱海市)眼科部長の後関利明さんはこう指摘する。

高齢期で特に多いのは、眼球を支える組織の老化による「サギングアイ症候群」だという。

眼球や目を動かす筋肉を支える組織が、加齢に伴い薄くなってたるんだり、断裂したりして、目を動かす筋肉もずれを起こす。その結果、周囲に気づかれにくい程度の小さな角度の上下回旋斜視になったり、視線をうまく調節できず、遠くを見るときだけ内斜視になったりする。

「車を運転していてセンターラインが二重に見える」という「複視」の訴え以外にも、視線のずれが「ぼやける」「焦点が合いにくい」「距離がつかみにくい」といった乱視のような症状で現れることも。後関さんによると、内部の支える組織と表面の皮膚組織の変性は類似するといい、瞼が下がる「眼瞼下垂」や、上まぶたが瘦せてくぼむといった特徴が顔に出やすいという。

予防法は今のところない。治療は、眼球を動かす筋肉のバランスを改善するための筋肉を付け替える手術をしたり、視線のずれを補正するプリズム眼鏡をかけたりする。

後関さんによると、手で片方の目を覆って物を見て、両目でみるよりくっきりと見えれば、斜視の可能性がある。それを眼科で伝えると、診察の助けになるという。

2025/7/8中日新聞より

7月7日 盲学校児童 力士にタッチ

県立名古屋盲学校小学部の児童8人が、中川区にある大相撲名古屋場所(中日新聞社共催)の八角部屋名古屋宿舎で力士と交流した。

児童たちは手の大きさを比べたり、両手で力士の腹を押してみたり。力士同士がぶつかり合い「バチン」と音が響くと「迫力がすごい」と声が上がった。

2年の金田一斗真さんは「手がお父さんより大きかった。抱っこしてもらえてうれしかった」と笑顔。「ご飯をどのくらい食べるの」と質問した2年の永田美結さんは、丼で3~4杯は食べるとの答えに「そんな食べられるなんて不思議」驚いていた。

参加した序二段力士の北勝伊(ほくとよし)さんは「みんな元気で応援もしてもらい、パワーをもらった」と笑った。

名古屋市千種ライオンズクラブが2日に開催。目の不自由な子どもたちに相撲や力士のすごさを知ってもらおうと企画した。八木茂前会長は「力士や土俵に触れたのを良い思い出に、いろんなことに挑戦してほしい」と話した。同クラブは同部屋に米100㎏を贈呈した。

 

2025年7月5日 中日新聞より

7月4日 視覚に頼らないレシピサイト

食品メーカー味の素は、視覚障害者も使いやすいレシピサイト「音でみるレシピ サウンドフルレシピ」を公開している。

同社は、視覚障害者の声をサウンドフルレシピに生かした。混乱の元である広告は挟まず、読み上げ間違いを防ぐ工夫もこらす。

たとえば、自動音声が100gを「100ジー」、1/2を「1スラッシュ2」、主菜を「ぬしな」と読み上げてしまうのを防ぐため、あらかじめ「100グラム」「2分の1」「しゅさい」とかな書きなどにした。

2025年7月4日 朝日新聞

7月4日 見えない人も見える人も 感じて料理

目が見えなくても、一人で調理ができるし、過程を楽しめる。「見えなくなったからこそ出会えた料理の楽しみ方を、見える人にお裾分けしたい」。そんな思いで発信する人がいる。

「料理大好きのみき」こと声楽家の川端美樹さん。弱視だったみきさんが視力を失ったのは、広島の実家を離れて通っていた特別支援学校高等部のとき。寮で一人暮らしで、その頃から料理を始めた。

いまは視覚障害者がある夫と二人暮らしで、毎日弁当を作る。食品のパッケージのなかには、形など触っただけで判別できないものも。そんなときは文字は画像などを音声で伝えてくれるアプリを起動し、スマホをかざして読む。

「もし、当事者が料理をしたがっていたら、周囲はできるだけ手を出さず、挑戦させてあげてほしい。怖がらずやってみる。失敗は改良の糸口。何事もなれです」

2025年7月4日 朝日新聞

6月18日 目を閉じて冒険ボードゲーム

ボードゲーム人気が高まるなか、尾張旭市が職員の提案をもとに6歳以上を対象にしたボードゲームをつくった。目を閉じたままプレーする「冒険者」が、「案内役」の指示だけを頼りにフィールドを探索。敵を倒しながら経験値や道具を手に入れ、最後にボスを倒す。

目と目とが合った相手を石に変えてしまう怪物を倒すため、2人1組でプレー。怪物と目を合わせないため、「冒険者」役は目を閉じたまま探索しなくてはならない。

もう一人は「ナビゲーター」となり、冒険者が持つ杖を操って指示を出す。フィールドには4種類のモンスターが散らばっていて、対戦しながら経験値や道具を手に入れていく。この2人1組の設定により、ボードゲームならではの面白さを味わいながら目が不自由な状況も体験。特に子供たちには障碍者と介助者の立場を理解してもらい、思いやりの気持ちを育んでほしいという狙いがある。

ボードゲームは100セットを制作した。5月中旬までに小学生らが利用する市内の児童館9カ所に配備した。

市は今後、普及を目指して一般販売や、ふるさと納税の返礼品として活用を検討するとしている。

 

2025年6月16日 朝日新聞より

6月18日 点字考案200年 変わらぬ役割

点字がフランスで考案されて今年で200年。視覚障碍者による情報のやりとりに大きな役割を果たしてきた。

 

名古屋市中村区で今月1日にあった「祝200歳 点字の誕生祭」。点字はフランスの盲学校生、ルイ・ブライユが1825年に考案した。

靴下商社のマリモ(名古屋市)は全盲の人でも触って色が分かる靴下「みちる」を出展。はき口の近くに、黒なら「BLK」といった形で、色を示すアルファベットと点字を圧着した。

生活上同組合コープあいちは、携帯電話の端末を使って商品の情報を音声化し、ボタンで注文する仕組みの「音声カタログ」を紹介。

イベントを主催した社会福法人名古屋ライトハウスは、点訳を請け負ったり、点字の本や音訳した録音図書を貸し出したりするなどして視覚障碍者を支えてきた。ライトハウスの森さんによると、鉄道の自動券売機や金融機関のATMなどには、全盲の人でも使えるようにテンキーが設置されていたり、点字の案内が付されていたりしている。一方、飲食店での普及が進む注文用タッチパネルの端末は、そういう配慮がなされていないという。森さんは「タッチパネルが視覚障碍者のバリアになっていることを知り、使えない人がいたら柔軟に対応してほしい」と願う。

 

2025年6月16日 中日新聞より

2月18日 点字ブロック

点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)は、ある発明家によって日本で生まれた。

点字ブロックを考案した三宅清一さんは、交差点で白い杖を持った視覚障害者が、車道を横断する際に横を車が勢いよく走り去ったのを見かけて、「盲人の安全歩行」のための補助具を考えた。

そこで考案されたのが、コンクリートブロックの表面に凹凸をつけ、注意を喚起することだった。突起はどんな形で、何個つけるのが適切かなど、試行錯誤を重ね、最終的に7列×7列で計49個の半球状突起をつけた形に行き着いた。その見た目が点字に似ていたことから、「点字ブロック」と名付けられた。

点字ブロックは「視覚障害者にとって、安全安心に道路を歩くためのみちしるべ」であり、我々の命を守ってくれる生命線」である。点字ブロックは、全盲の障害者だけではなく、見えにくさに不自由を感じる人たちも多く使う。そのため、「彼らがたどれるように目立つ黄色であることが重要」だか、新しい建物などの場合、デザインに配慮して黄色を避け、床材と同系色のものが選ばれることがある。その結果、わからずに転んだりする人もいるという。

点字ブロックは今も進化を続けている。点字ブロックに丸や直角三角形のマーキングを行い、それをスマホのアプリで読み取ることで、現在位置や周辺の施設などの音声情報を提供する「コード化点字ブロック」の敷設を進めている。

(朝日新聞 2025年2月8日)

2月14日 目の難病に希望の「光」

慶応大学と名古屋工業大学などの研究チームは13日、光を当てることによって狙った神経細胞の活動を操作する「光遺伝学」という技術を使い、目の難病で失われた視覚を再生する遺伝子治療薬の臨床試験(治験)を始めたと発表した。6日に慶大病院で1例目の患者に投与した。光遺伝学の臨床応用は国内で初めてという。

治療薬は高い感度で光に反応するタンパク質「キメラロドプシン」をつくる遺伝子が入っている。

治験の対象は、「網膜色素変性症」。視野が徐々に狭まって視力が低下し、最終的には失明する場合もある。網膜をつくる複数層の神経細胞のうち、最も外側での光のセンサーの役割を果たす視細胞の機能が失われるのが原因。国内に約3万人の患者がいるとされる。

今回は失明状態の患者に投与した。1カ月たつと視細胞の内側に残っている神経細胞でタンパク質がつくられ、視細胞の代わりに光を検知することが期待される。今後、有効性と安全性を確認していく。治療法のない病気なので期待が高い。

2025.2.14中日新聞

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