2020.3.17 全盲デュオの演奏会
全盲二人組による小さなコンサートを聴いてきました。
主催は愛知県保険医協会女性医師・歯科医師の会。
バイオリンは29歳の稲葉さん。
バイオリンは5歳から。
ピアノは37歳の国枝さん。
ピアノは7歳から。
二人とも『未熟児網膜症』により失明したそうです。
『未熟児網膜症』とは…
網膜血管(目の奥の血管)は胎齢30週で完成するのですが、未熟児で生まれて、母体から外界へと環境が急変すると、まだ若い(弱い)血管が異常に増えて、悪さをします。
治療をしても、場合により網膜剥離を起こします。
周産期医療の進歩で、超低体重児も生存率が向上していますが、重症の網膜症も増えています。
現在、小児の失明原因の1位です。
そして、二人は『就労継続支援B型』施設からの派遣です。
『就労継続支援B型』は…
年齢、体力などの面で、雇用契約を結んで働くことが困難な人が、軽作業などの就労訓練を行うことが出来る福祉サービスです。
受給者証が発行されると、作業により生産された製品やサービスの出来高に応じて工賃が支払われます(事業所による)。
得意なことを就労に生かせないか…と考えていたところ、二人の得意分野の音楽に目を付け『DUO ABBEY』というデュオを結成したそう。
『メヌエット』『ユーモレスク』からアラジンの主題歌『ホールニューワールド』など、全12曲。
稲葉さんのこだわりのせいか、バイオリンの絃の調整で、開始が遅れたり、中断することもありましたが、それは想定内のようで、ピアノの前で、稲葉さんの声がかかるまでじっと待っていた国枝さん。
バイオリン側のステップ2回が曲の開始の合図です。
最前席の院長は、二人の表情、指の動きをじっと見ていました。
ピアノを弾く指は、何回も鍵盤から離れるのに、一度も間違えずに指は動き、曲が続きます。
弓を弾く位置、弦を押さえる位置も、ぶれたりしません。
点字用の楽譜はほとんどないそうです。
音楽を聴いて、それを自分で音階にして、楽器で再現。
曲は自分の耳だけで暗記して演奏します。
盲人は、他の感覚、特に聴覚は大変発達・鋭敏になると言われていますが、さらに、優れた音楽的才能があるからこそ、成せる技です。
また、一人で弾くだけでなく、相手と合わせるのは、より難しいことだと思います。
目を閉じて聞いていれば、目の見えない人達が奏でているとは想像もできない、心に響く素晴らしい演奏でした。
障害を持っていても、持っていなくても、人の価値は変わりません。
それぞれの出来ること・得意なことを発揮できる社会に。
『DUO ABBEY』の活躍を期待します。
良い音楽を聴き、心落ち着かせた院長でした。
ふだん『動』が多めの院長ですが『静』の時間も大切にしたいです。