2021.4.20 子供とブルーライトカット眼鏡
先日、眼科医が所属している日本眼科学会・日本眼科医会を始めとする日本近視学会・日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会・日本視能訓練士協会の連名で『小児のブルーライトカット眼鏡装用について』の見解が発表されました。
複数の学会が一堂に会して声明を出すのは、大変珍しいことです。
つまり、とても重大だということです。
1.デジタル端末の液晶画面から発せられるブルーライトは、曇天や窓越しの自然光より少なく、網膜に障害を生じることはないレベルであり、いたずらにブルーライトを恐れる必要はないと報告されている。
2.小児にとって太陽光は、心身の発育に好影響を与えるもの。
なかでも十分な太陽光を浴びない場合、小児の近視リスクは高まる。
ブルーライトカット眼鏡装用は、ブルーライトの曝露自体よりも有害である可能性が否定できない。
3.最新の米国一流科学誌に掲載されたランダム化比較試験では、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないと報告されている。
4.体内時計を考慮した場合、就寝前はともかく、日中にブルーライトカット眼鏡を敢えて装用する有用性は根拠に欠ける。
産業衛生分野では、日中の仕事は窓際の明るい環境下で行うことが進められている。
以上より、小児にブルーライトカット眼鏡を推奨する根拠はなく、むしろブルーライトカット眼鏡装用は発育に悪影響を与えかねない。
というものです。
それぞれには、検証結果が示された論文(日本語・英語とも)が存在します。
ブルーライトが話題になったころ、院長もブルーライト研究会に参加していました。
当時から、ブルーライトは生体の体内リズム(覚醒・睡眠サイクル)に影響することがわかっていました。
睡眠障害を予防するために、就寝時2~3時間前からデジタル機器の使用を控えるのも推奨されていました。
その後、巷では、ブルーライトが目に悪いとか、ブルーライトカット眼鏡を装用したほうがいい…と、根拠のないことが常識化しつつありました。
眼科医(および視能訓練士)以外の世界で。
小学生低学年のお子さんが、メガネ店でブルーライトカット眼鏡を勧められ購入される場合も多々あります。
ブルーライトカットレンズを通すと、やや暗く感じる(個人差あり)ので、違和感を感じる人もいます。
院長は、今まで患者さんからブルーライトカット眼鏡の是非を聞かれると、推進派でない旨・自分も普段装用していない旨を伝えていました。
仕事中は、電子カルテを使用しますが、『20分20秒20フィート』の法則(20分画面を見たら20秒間20フィート以上離れたところを見る)をすれば、眼精疲労を予防できます。
科学・医学は進歩するゆえ、変化します。
その時は、正しかったことも、新しい事実が見つかり、正しくなくなることも多々あります。
それを受け入れていくのが、科学・医学です。
私たち臨床医(患者さんを直接診る医師)も、最新の根拠に基づいた事実を知り、正しく患者さんに伝えるために、勉強を続けています。
知人から聞いた治療法や巷の大衆向けの治療(非医師や専門外の医師)が確立されているなら、既に、私たち専門医は当然その治療法を行っていますし、保険適応にもなっているはずです。
エセ医学に騙されないためにも、大事なことは発信していこうと思います。
休診日、ひとりで農業センターへ。
生まれて間もない仔牛を見、特製アイスを食べ…
それだけで、明日からの気力を充電できます。
ちょっと、太陽光を浴びてみませんか?
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