2024.7.2  虫が飛んでる?

『虫みたいなものが見えるけど、手で払っても消えないんです』

『空を見たら、糸くずみたいなものが動くのが見えるんです』

『白い壁に、点々が見えるんです』

このような訴えで来院される患者さんはかなり多いです。

『何か病気ではないか?』

『網膜剥離では?』

などと心配されて来院されます。

視力や眼圧と言った一通りの検査や問診の後、両眼の瞳を開いて、目の奥を観察します(散瞳検査)。

 

瞳が開いたら、患者さんに上下左右8方向を見てもらい、院長もダイナミックに動き周辺まで観察します。

これで、病気か否かが分かります。

 

飛蚊症による病気は

1.網膜裂孔・網膜剥離

網膜(眼の奥)に穴が開いたり、そこから網膜が剥がれている状態です。

程度に応じてレーザー治療や手術を勧めます。

2.硝子体出血

眼球の中身は、硝子体というゼリーのようなもので満たされています。

糖尿病や高血圧・外傷などで眼底に出血が起こり、その血液が硝子体にも流れることで起こります。

少量の場合は自然治癒もありますが、原因を調べ手術になることもあります。

3.ぶどう膜炎

ぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜)に炎症が起こり、血管から硝子体に、炎症が及ぶことがあります。

入院になることが多く、炎症を抑えるために、内服や点眼薬で治療します。

 

病気でないと判断すれば、患者さんに『安心してください。心配ないです。気にしないでくださいね』とまず一言。

それから、虫みたいなものが見える(飛蚊症 ひぶんしょう)原因をお話しします。

 

光が目の奥に入っていくと、網膜で光やモノを感じます。

硝子体は透明なゼリーのような物質ですが、何らかの原因で濁りが生じると、その濁りの影が網膜に写り、目の動きとともに浮遊物のように見えます。

これが飛蚊症です。

 

原因としては、生来と加齢によるものがあります。

胎児のときの硝子体の血管の名残が、生後も残存していると飛蚊症として感じることがあります。

(一般には、眼球完成時に胎児のときの硝子体血管は消失する)

これは、健康な目でも起こる飛蚊症なので気にする必要はありません。

 

多いのは加齢によるものです。

加齢により、硝子体はゼリー状から液状に変化し収縮して網膜から剥がれます(硝子体剝離)。

また、強度近視の場合は、硝子体剥離が早期に起こり易く、若くても飛蚊症を自覚することが多くなります。

 

きちんと検査をして、異常がなければ不安になる必要はありません。

急に、いつもと違うたくさんの数の浮遊物が見えたり、視力が低下したり、見えない部分が出た場合は、すぐに検査を受けてください。

 

最近は、飛蚊症に対してのレーザー治療を行う施設もあります。

硝子体の濁りをレーザーで紛糾します。

ただし、自費診療です。

気になって仕方がないと言う人は、試してみてもいいかもしれません。

 

院長も強度近視で、時々、ミジンコみたいな浮遊物が見えます。

生理的な(病気ではない)飛蚊症だから、慣れるしかありません。

『おっ!ミジンコが出てきた、出てきた』

積極的治療(自費)を受ける気はありません。

加齢と上手くつきあう覚悟の院長です。

 

 

 

 

カテゴリー:眼に関すること

2019.10.1 Optosがやって来た!

先日、講習会の案内が届いた最新機器、超広角眼底撮影のOptos(オプトス)。

講習会参加の旨を、ディーラーさんに話したところ…早速、試乗車ならぬ試用Optosを手配してくれました。

 

Optosは、1ショット0.4秒、無散瞳で眼底の約80%の面積を撮影できる操作型レーザー検眼鏡です。

簡単に言えば、瞳孔を薬で大きくしなくても、目の奥の隅々まで一回で撮影できる眼底カメラです。

 

普段の診療で見ている(見えている)部分は、視神経や黄斑と言った、一番大事な中心部分です。

しかし、飛蚊症や糖尿病などがあり、周辺部まで詳しく見る必要のある場合は、瞳孔を大きくして観察しないといけません(でした)。

そのうえで、患者さんに『左上見てください、左、左下…』と目の向きを指示します。

更に、眼科医も、患者さんの目の動きに合わせて、身体(腕)を動かします。

傍から見ていると、腕と首と腰を使ってストレッチをかけているような動きです。

一朝一夕では身に付かないので、研修医時代に、身体と目の動かし方でどこまで見られるようになるかを習練します。

 

それが…もっと広い角度を、Optos1枚撮ることでカバーできるのです。

 

スタイリッシュなデザイン。

インテリア(こんな高価なインテリアはありませんが)として置いても違和感がありません。

 

早速、撮影した画像は…どれも、広範囲で鮮明!

 

飛蚊症で来院された患者さんに撮影して、心配がないこともお話しできます。

糖尿病網膜症は、周辺部から小さな出血が見つかることもありました。

もちろん、必要な場合は、更に、瞳孔を大きくして精密眼底検査をしますが。

 

試用品ながら、すっかり虜になってしまった院長。

『絶対欲しい!』

講習会までに(もちろん講習会参加しました)購入を決定!

先週、新品のOptosがやって来ました。

 

春にOCT&OCTA(名前はトリトンです)がやって来て、大活躍中。

今秋にはOptos(名前はデイトナです)がやって来て、こちらも、日々の診療に大活躍してくれること、間違いなしです。

 

『最新機器だね~』と声を掛けてくださる患者さんも多く、ちゃんと自分の受ける検査機器を観察しておられるようです。

 

同時に、電子カルテも導入しました。

眼科は、他科と違い、視力を始め視野やOCT&OCTA、Optosなどあらゆる検査と画像をカルテに繋げないといけないので、質量ともに多く、大変です。

今までも、視野や画像の一部は診察室のPCに繋いでいましたが、今まで以上に『診療の見える化』を図りたいと思います。

まだ慣れるまで、バタバタしておりますが、日々スムーズに稼働できるようになってきています。

 

15年位前、大学病院で緑内障外来を担当していた時に電子カルテが導入されました。

その当時はとても使いにくかったのですが、同メーカーながら、現行版は、ずっと改良されてます。

 

また、先日、東日本大震災で津波に被災した三陸の開業医の先生から、紙カルテは全滅だったけれど、電子カルテは1か月で復旧したとの体験談を聞きました。

 

Optosがやって来ました!

電子カルテがやって来ました!

こうクリニックも、オバサン院長も、まだまだ『わくわく』!

またまた『わくわく』!です。

ときめき?の秋です。

検査機器の紹介ページもご覧ください。

カテゴリー:クリニックに関すること

2019.8.20 虫が飛ぶ

日々の診療の中で、『虫が飛んで見える』『糸くずのようなものが見える』と訴えて来院される患者さんがあります。

基本的な検査をした後は、瞳を検査薬で大きくして精密眼底検査を勧めます。

この場合、帰りは、車を運転して帰ることはできません(瞳が開いて眩しくなり、ピントが合わないので)。

 

精密検査をした後、ほとんどの患者さんには『飛蚊症(ひぶんしょう)ですね。心配ないですよ』とお話しすることが出来ます。

 

『飛蚊症』とは、眼球内に糸くずや虫(蚊)のような黒い影が飛んでいるように見えることです。

眼球内には、硝子体(しょうしたい)というゼリー状の物質がつまっています。

若い時は、ゲル状で網膜にぴったりくっついています(ゼリーでしっかり充填されている眼球)。

加齢に伴い、ゼリーの中でも、水が多いところ、ゲルが強いところに分かれます。

その境界に光が入ると、光の影が、黒いものとして目に映るのです。

 

硝子体の水分が増えて、網膜の後方から剥がれることを『後部硝子体剥離』と言い、50代では25%、80代では90%の人に起こり、飛蚊症の原因となります。

 

網膜に問題がなければ、必要以上に心配する必要はありません。

『飛蚊症は治りますか?』と聞かれれば、『問題のない飛蚊症は、無くなることはないです(濁りだから)』

もちろん、濁りが光の筋道に入らなければ、目に映らないので、治ったような気になることはありますが。

残念ながら、病気でないものに治療法はありません。

飛蚊症に慣れるしか…です。

 

ただし、網膜に弱いところが見つかった場合は、定期的な検査をお勧めします。

場合によっては、網膜裂孔(網膜に穴が開く)、網膜剥離(網膜が剥がれる)につながるおそれもあるからです。

 

検査の結果、心配がないことがほとんどですが、あくまで精密検査をした結果。

精密検査をしないで、『大丈夫ですよ~』という無責任な発言は慎むのが眼科医です。

 

さて、先日、黒い水玉が見えると、来院されたAさん。

1週間前

から、黒い水玉が見えるけれど、様子を見ていたとのこと。

どんどん黒い水玉が増えるとともに、視力が落ちてきた…とのこと。

下方も見にくいです…と。

予想通り、『網膜剥離』でした。

しかも、上方から網膜が剥がれており、中心にかかっています。

緊急性マックス!

結果についてお伝えし…

『即、病院へ紹介します。緊急手術になります』

『そんな大変なことになっていたんですか?』

『そうなんです。乗ってきた車は、そのままにして、出来るだけ体と頭を動かさないように、タクシーで向かってください』

 

その日、緊急手術になったAさん。

Aさんの車は、しばらく当院駐車場にそっと置かれたままでした。

術式から、術後はベッドの上でうつむき姿勢(治療のため)を強いられているAさんを想像する院長でした。

 

幸い、Aさんの術後は良好。

視力も回復しました。

『助かりました~』

 

飛蚊症の原因は、病気ではないものがほとんどです。

しかし、網膜剥離や硝子体出血・炎症などの場合も、稀にあります。

気になれば、検査を受けてくださいね。

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