2024.11.12  小学校に上がる前に

今年度の就学時健診も全て終了。

院長と就学児童の年齢差はどんどん広がっていくばかり。

仕事では赤ちゃんや子供と多く接しますが、私生活では大きな子供たち(息子)ともなかなか接点がない院長。

長く通院されている同年代の患者さんからは孫の話題も出てきて、そういう年頃なのね~と気付かされます。

 

就学時健診では、視力(ABCDで判定)・眼位・目の病気の確認を。

再検査を促したり、アドバイスも。

 

視覚は成長とともに発達します。

出生直後は光覚弁(明暗が分かる)くらいでも、生後3か月で0.05、1歳で0.2~0.3、2歳で0.4、3歳で1.0に達すると言われています。

3歳児健診で1.0が理想。

ですが、個々の発達やその時の機嫌により、眼科要精査になる子も多々。

受診用紙を持って来院した子供さんには、成長・発達がゆっくりで上手く視力検査が出来ないのか、早急に眼鏡などの治療をすべきかを判断し、方針を決めます。

視力検査は練習も有効なので、家でやり方に慣れること・眼科に慣れることも大事です。

 

就学前の子は、大人のように視力検査表で測定するのは苦手。

多くの中からひとつを見分けるのが苦手なのです(読み分け困難)。

そのため、ランドルト環という切れ込みがある丸い輪っかをひとつずつ見せて測ります。

 

3歳児健診で、就学時健診で受診用紙をもらって来院した患者さん。

以来ずっとお付き合いの患者さんもいます。

当院開院27年なので、〇〇ちゃんと呼んでいた患者さんも、今では立派な成人。

○○さんと呼びますが、記憶の中に小さな○○ちゃんがいます。

 

検査をして、斜視・弱視があれば、治療用眼鏡や訓練を行います。

強度の遠視・近視・乱視も眼鏡の適応になります。

軽度の遠視で裸眼視力が出ている場合は、本人が見えにくそうな時があるかがポイント。

子供はピント合わせの力が強く、視力検査は良好なことが多いです。

しかし、ピント合わせの緊張もずっと続くわけではなく…集中できなかったり、見づらくなったりすることがあります。

その場合は、今が一番遠視が強い状態(年齢とともに減少)なので、しばらく(数年)眼鏡をかけることにします。

 

調節麻痺剤を使って近視と診断されれば、回復はしません。

現在、近視抑制効果があると言われているのは、オルソケラトロジーと低濃度アトロピンです。

進行抑制効果(近視が強くならない)は期待できますが、近視をなしにすることは出来ません。

また、それ以外にも近視をなしにする治療はありません。

教室の後ろの席で黒板の字が見にくくなるのは0.7(屈折度数も重要)。

それより下がれば眼鏡を考える時期です。

最近では、一部の例外を除き、原則的には完全矯正にします。

緩めに矯正すると、近視進行しやすくなります。

 

遠視や近視の検査・治療など、時代とともに変化しています。

医学分野では特に、過去に常識だったことが、数年で非常識になります。

その変化に対応した知識と技術と機器を獲得し患者さんに還元がモットーの院長です。

小学校に上がる前に、気になることは解決しましょう!

 

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カテゴリー:眼に関すること

2024.5.28   3 分だけど…

眼科医にとって近視はとても身近です。

近視と一口に言っても、乳幼児から高齢者まで。

緑内障や白内障、網膜の病気や斜視など。

年齢も病気も多岐にわたり近視と深く関係しています。

近視を軸として、眼科の病気を考えるのが近視学会。

 

土曜日の午後の講演に間に合いたい。

診療延長とその後の事務掃除などの時間を予想。

東京駅から会場までの距離と時間。

それらを勘案して指定券を購入。

 

当日、スタッフ全員巻いて巻いて何とか予定の新幹線に乗れました。

新専門医制度になってから、単位の取得は、毎回講演10分後に締め切られます。

当初の計算で行くと、ぎりぎり開始10分後に単位申請出来る見立てでした。

 

さて、今回は小さな会場。

学会参加の受付をして同じフロアの講演会場に行く予定。

受付でQRコード提示するも『パスワードは?』

『え~!?覚えてない。うちのPCにあるはずだけど…』

焦るも進みません。

会場スタッフが『名前からお調べします』と言ってくれ難を乗り切った院長。

大急ぎで会場に行くも、単位申請読み取り機がありません。

『3分前に締め切っちゃたんですよ』

ガーン…仕事巻き巻きで来たのに…

単位は取らなくても聴くことは出来ます。

恐らく今回取らなくても、更新に支障ない単位数を取得できているはず。

それにしても…3分の見込み違いにショック!を隠し切れない院長でした。

 

さて、今回の学会も、本当に勉強になりました。

 

最近当院でも力を入れているオルソケラトロジーについて…

軽度近視群では、オルソケラトロジーと低濃度アトロピンの併用は、単独群より大きく近視抑制効果があることが実証されました。

ただ中等度以降は併用効果がないので、きちんと見極めることは必要です。

また、アトロピンの濃度は0.01%が主流でしたが、0.025%で更に近視抑制効果があることが実証されています。

研究では、0.05%が最も抑制効果がありましたが、止めてからのリバウンドも大きい(進行が速くなる)と報告されています。

現在日本で使用できる点眼濃度は0.01%と0.025%。

当院でも、早速0.025%アトロピンを導入する予定です。

 

強度近視は、一般的にはオルソケラトロジーの対象ではありませんが、強度近視にオルソケラトロジーをして弱めの近視にし眼鏡を装用しても、眼軸長(目の奥行)の伸びが抑制されたという報告も。

これは、乱視の場合の報告もあったので、今後オルソケラトロジーの適応が広がるかもしれません。

また、片方だけ近視が強い場合も、近視の強い方にオルソケラトロジーをすることで眼軸長の伸びが抑制されたという報告も。

 

年齢が若いほど、近視進行は早いです。

6~8歳が急激に進行(眼軸長が伸びる)するので、この時期にオルソケラトロジーを始めるのがベストです。

もちろん、どの年齢で始めても眼軸長の伸びの抑制効果はありますが(中学生くらいまで)。

 

双子研究も興味深かったです。

ひとりに眼鏡、もうひとりにオルソケラトロジーをすると、両者の眼軸長の伸びに2倍の差(眼>>オルソ)が生じたとのこと。

 

その他にも、サギングアイ症候群・後天性内斜視・緑内障・白内障との関連講演をたくさん聞いてきました。

これも折を見て発信していきたいと思います。

 

今回はタイトなスケジュールのため、徒歩圏内の日本橋デパート(初)のみ。

ざーっと歴史的な建物を楽しんだだけですが。

デパ地下のお惣菜を新幹線のテーブルに並べて日本橋?を味わいました。

ひとり、乾杯!

 

 

 

カテゴリー:眼に関すること

2023.10.24 見える!

秋の学校視力検査、就学時健診が始まりました。

学校での視力検査は、ABCDと4段階で判定しています。

A 1.0以上

B 1.0指標が見えない

C 0.7指標が見えない

D 0.3指標が見えない

眼科での視力検査のような詳細な値は示されません。

 

それでも、学校生活を送る上での目安になります。

A 教室の一番後ろからでも、黒板の字がよく見えている。

B 後ろの方でも黒板の字はほとんど読めるが、近視の始まりの可能性が高い。

C 後ろの方では、黒板の字が見づらく、近視になっていたり他の病気があるかも。

D 前の方でも黒板の字ははっきり見えていない可能性があるので、眼科で診察対処を。

 

就学時健診時は、初めての場所(小学校)のせいか、泣いたり緊張している新一年生も見受けられます。

院長は必ず就学時健診の際に、目の病気の有無と視力検査の結果を伝えます。

B以下があった場合、程度に応じて、もう一度(速やかに~就学までに)視力検査を受けるよう勧めます。

 

結果を聞いて、子供に『○○ちゃん、目悪かったの!?』と聞くお母さん。

子供からしたら『知らんがな~』

小さな子供に視力低下の自覚はありません。

『たまたま緊張していただけです』

『視力検査が理解できてないんだと思います』と、受診する必要はないと言い張るお母さん。

悪い結果は信じたくないけれど、再度眼科で検査して問題なければよいし、何か見つかれば就学に備えて対処することが出来ます。

 

学校からの受診のお勧め用紙を持参される患者さんたち。

Dでも『見えている』『困っていません』と言う人もあります。

見えるは、その人の感じ方もあるので、はっきり見えてなくても『見える』と言うのは事実です。

ただし、学校生活に支障ないように必要な(はっきり見える)視力が必要とされています。

免許を取るにも、自分の『見えている』では通らないのと同様に。

 

視力検査で受診された時、子どもは、ピント合わせの力が強いため、通常の屈折検査では正しい状態(近視?遠視?乱視?また程度)が分かりません。

そのため検査用点眼薬で毛様体筋の緊張を取り、正確な屈折程度を確かめます。

 

点眼薬で近視に出れば、間違いなく近視で、回復は見込めません。

 

当院でも行っているオルソケラトロジーは、初めて近視と診断された時にスタートするのが好機です。

もちろん近視と既に診断された方にも適応です。

コンタクトレンズを付けて就寝、起床したら外す。

昼間は裸眼(1.0~1.2)で生活できます。

特に水泳や接触スポーツ・バレエなどの習い事にも安心です。

 

当院のオルソケラトロジーの患者さんたちも、良好な視力で学校生活を楽しんでいます。

もちろん定期検査をしっかりし、院長が責任を持ってフォローしています。

 

親(大抵母親)が、コンタクトの管理をすることになります。

母と子のスキンシップが朝晩出来る(せざるを得ない)ので、母子のスキンシップは遥か昔になってしまった(息子たちは成人)院長としては羨ましい限り。

朝起きてコンタクトレンズを外したら、子供が『見える!』って言ったんです。

お母さんからの嬉しい報告。

 

次男はアトピーがひどく、一時期、毎晩処方された軟膏を指に塗って、布で巻き、その上にネットをかぶせていました。

『最後に帽子(ネットをそう呼んでいた)被せようね、帽子並んだね(5本指)~良くなるといいね~』で終了。

面倒な時もあった指の治療も今となっては懐かしい思い出です。

 

オルソケラトロジーも、きっと母子(主に母)の良い思い出になるはずです。

 

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2023.9.5 何しにカンボジア?  その3

*前々回・前回からの続きです*

 

おそらく、カンボジアではゼロ(正視)から遠視の人の割合が高いのだと思います。

近視は、近くにピントを合わせられるので、老眼になっても距離を合わせれば、自分の目で見ることは可能です。

遠視の場合、老眼が始まると自分の目で近くを見るのは困難になります。

日本人と比べて、あまり細かな書物を読んだり書いたりする文化はそれほど根付いてない(ように思える)ため、老眼に対しても積極的に眼鏡を使おうという意識(必要性)がないかもしれません。

 

10年ほど前の緑内障に関する沖縄久米島のスタディでは、遠視の割合は34%(近視は29.5%)と報告されています。

また、日本の都市部に比べ近視の割合がかなり低かったとも。

視力が良い人が多いと言うことです。

しかし、狭隅角の人が多く、閉塞隅角緑内障に多く罹患していることもわかりました(今、日本人に多いのは正常眼圧緑内障)。

それゆえ、急性緑内障発作も多くなります。

現在では、沖縄でも近視の人が多くなり、本州とあまり変わらなくなっています。

 

カンボジアに来て、そのスタディを思い出しました。

恐らく、カンボジアの人は狭隅角が多い。

強い紫外線を年中浴びて、若くして白内障になる人は多いはず。

急性緑内障発作もかなり発症していると思われます。

かなり激しい頭痛と眼痛が特徴ですが、医療制度の体制が不備な地では、なんとかでやり過ごして失明してしまう人もいるかも。

日本では、予防法・治療法は確立していますが。

ただし、カンボジアの平均寿命が69歳(健康寿命は58.1歳)と聞くと、不具合が生じる前に寿命が尽きてしまう可能性も。

それゆえ、日本で多い緑内障や加齢性黄斑変性症など加齢に伴う病気も多くないと思います。

 

翌日、今度はコンタクトレンズの購入について、別の眼鏡屋さんに行きます。

今すぐ用意できるメーカーは米国製の有名なブランド。

単焦点です。

ジッパーの袋に度数ごとに入っています。

トライアルレンズか?と聞くと、売り物とのこと。

ここでは1ペア〇ドルで購入できるとのこと。

ただし、すぐ入手できるレンズは中等度度数以下。

それ以上強い近視は、箱買い(日本では通常)のオーダーで2週間後受け取りとのこと。

ちなみに院長装用の遠近コンタクトレンズは、オーダー後2か月かかるとのこと。

発注はすべて外国に。

当然自国ブランドは無し。

時間もお金もかかります。

近視大国の日本、コンタクトレンズの需要が高いこともありますが、自国ブランドであれ海外ブランドであれ入手できる環境にあることは、恵まれています。

カンボジアでは、コンタクトの需要も低いのでしょう。

それにしても、眼鏡やコンタクトにも、こんなに国の差があることは驚きでした。

 

まだまだ発展途上のカンボジア。

若年人口が多いこの国はどう変化していくのでしょう?

 

カンボジアの歴史と医療・文化に少しだけ触れた旅。

短い旅でしたが、衝撃は大きかったです。

もしカンボジア人なら…『老後の始末を考えないといけない年齢』

そう思うと、身が引き締まります。

 

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2023.6.20 何しに台湾?  その1

近視関連の学会や話題が多くなってきた近年。

オルソケラトロジーも含め近視関連の論文を読んでいると、意外に中国・台湾・シンガポールといった東アジア発が多いことに気が付きます。

論文は英語なのですが、何篇も中国・台湾・シンガポール…と出てくると、近い外国だしいつか行ってみたい…

そんなきっかけから約1年前独学で中国語を開始。

腕試しも兼ねて一番行きやすそうな台湾行きを決行!

与那国島から見えたくらいだからね~

 

中部国際空港から台湾桃園国際空港へ。

人々の顔は似ていますが、中国語が飛び交います。

来ちゃったけど、大丈夫?

 

今回のミッション

1.台湾の小学校での近視進行予防の取り組みを聞いてみる

2.台湾でのオルソケラトロジーの話を聞く

3.台湾でコンタクト処方をしてもらう

 

故宮博物館を観覧していると、小学生の集団がやってきました。

小学3~4年生くらいです。

20代男性の先生が、注意を述べた後、自由観覧となりました。

チャンス!

すすすーと近づき

『初めまして。私は日本から来た眼科医です。2時間以上の屋外活動で近視を抑制したという台湾の論文を読みましたが、現場ではどうでしょうか?』

初対面なのに、かなり図図しい日本人オバサン(院長)。

若い先生は、警戒することなく(いい人だった~)対応してくれました。

ちなみに、最初の2文(中国語)は練習してきたからスムーズ。以後、文にならず…途切れ途切れ…だんだん英語に…

先生も、最初は中国語でゆっくり話してくれましたが、院長に合わせて英語で。

しかし、双方とも医学用語や教育用語など微妙なニュアンスが伝わらず、後半は日本語・中国語翻訳アプリの登場となりました。

アプリ恐るべし。

子どもたちが珍し気にどんどん集まってきました。

『何してるの?』『この人だれ?』って感じで。

どの国の子供も同じ。

 

まとめると…

小学生の近視の増加は、学校も気づいているし、気にしている。

厳密に何時間屋外活動とカリキュラムに取り入れられてはいないが、担任ごとに努力はしている。

例えば、昼休み90分の間はPCやテレビを見ないように指導。

月に一度は野外活動を計画。

先生は、『名古屋』や『三重』の地名や日本語も少し知っていて、大学で学んだとのこと。

 

別日に出かけた台湾民主記念館でも、同様の答えが。

この時は、小学1年生だったせいか、屋外でもさらに賑やか。

また、あちこち行かないように複数の先生が号令を。

天気の良い日だったので、バイオレット光も良く浴びました。

 

屋外活動が良いということはわかっているが、厳密に管理されているのではない。

(論文は、方法をきちんと設定したうえでのデータ)

しかし、教育の現場は何処も学童近視が少しでも進行しないように、努力している。

 

博物館からの帰り、タクシーに乗ってホテルを告げると、運転手さん『?』

地図は日本語と英語表記。

大きなホテルです。

しかし、ホテルも中国名で言わないとわからない運転手さんでした。

メーターは上がる、ちっともホテルに着かない…

どうしよう…焦っていると、交番の前で停車。

『場所を聞いてくる』(速い中国語で聞き取れず)と言ったよう。

戻ってくると、中国でホテル名を言いグ~の合図を。

ホテルはすぐそこでした。

メーターより安くしてくれて、謝ってくれました(ここは聞き取れた)。

『謝謝』

 

ミッション1終了。

続きます。

 

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2023.4.11 2023日本眼科学会総会

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2018.3.6 子供の近視

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2023.6.13  近視進まないで~

オルソケラトロジーの近視抑制効果が証明されてきた近年。

医学は進歩し、医師の頭も上書き保存の連続。

親が近視なら、子も近視になるのは仕方がない。

親と同程度の近視になるのは仕方がない。

眼科医(院長)でもそう思っていました。

成人になった息子たちには申し訳ないが、当時はわかってなかったんだもん!

 

当院もオルソケラトロジーを導入しました。

今回は、よく尋ねられるQ&Aを。

 

Q1:近視抑制治療は何歳から始めて何歳までくらい続けますか?

A1:近視になった時が一番のタイミングと考えられます(学校検診で初めて用紙をもらった時など)。

ただし、自覚がないことが多いので、ためらうことも多いと思います。

次は、視力が低下(近視進行)して、眼鏡を処方しようかどうかの段階。

眼鏡をかけて経過を見たいか、オルソケラトロジーを始めるかを考えましょう。

治療を早く始めるほど、最終的な近視度数を抑えられると考えられています。

眼軸長(眼の奥行)の伸びと身長の伸びはある程度相関すると言われています。

一般には、眼軸長の伸びが落ち着く15歳(中学卒業)くらいが目安です。

もちろん、高校生以降も続けることに問題はありません。

 

Q2:30センチ以上離して、正しい姿勢で読んだり見たりすると目に良いのは本当ですか?

A2: 文部科学省の『児童生徒の環境に留意してICTを活用するためのガイドブック』から。

視距離は30センチ以上

背中を伸ばす

目線は画面に直行する角度に近づける  など。

シドニーの研究では、30センチより短い距離で読書すると、近視化を促進すると報告されています。

また、スマホなどの20センチの近業は、両眼で融像(左右の目でひとつに見る)できるギリギリの距離なので、視覚負荷が大きいことが分かっています。

ですので、近用時最低30センチは必要な距離です。

 

Q3:明るい部屋で読書をすると目に良いのは本当ですか?

A3:紙媒体の本を読むときは、室内光が明るい方が、読書速度の低下や眼精疲労の惹起を軽減します。

また、スマホやパソコンの場合、外の輝度と画面の輝度に違いがありすぎると、視線を移動したときに、順応の切り替えが必要になり、眼精疲労を起こしやすくなります。

ですので、室内照度は画面の輝度と同程度にすると疲れにくいと考えられます。

 

Q4:30分ごとに休憩すると目に良いのは本当ですか?

A4:労働衛生学的には、デジタルデバイスを用いた近業時に、眼精疲労を軽減するために、20-20-20ルール(20分近業作業→20秒作業中断→20フィート(6M)より遠方視)が推奨されています。

さらに、子供は1日2時間の屋外活動も推奨されています。

オーストラリアの研究では、30分程度の近業後休息を入れることで、近視抑制効果があることが示唆されています。

 

Q5:スマホ、テレビ、ゲームは目に悪いのは本当ですか?

A5:最近では、単なる近業時間の長さではなく、一定以下の視距離で行われる近業時間の長さが、近視発症の原因として重要視されています。

スマホや携帯型ゲーム機では十分な視距離を取ることが難しいのです。

中国のスタディでは、両親の近視の有無に関連なく、すべての生後1歳以内の乳児はスクリーンタイムを避ける必要があると結論づけられています(遺伝だけでなく環境も重要)。

生後8か月までは眼軸長は劇的に伸長するため、3歳まで屈折値の変動が非常に大きいので、視機能に大きな影響を与えます。

 

これから成長する小さな患者さんのために近視進行抑制のお手伝いします。

学校健診の紙をもらったら早めの受診を。

 

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寝押しのイメージ

2023日本眼科学会総会

 

カテゴリー:健康 公センセの家族・恩師・友人など 眼に関すること

2023.4.11 2023日本眼科学会総会

春は日本眼科学会総会(日眼)の季節。

昨年は、恐る恐る現地に出向いたのですが、今年は解禁!?

やはり会期中1日でも現地に足を運びたい院長です。

今回も現地聴講・ライブ視聴・オンデマンドと3体制。

院長は平日ライブで視聴し、週末東京へ。

 

土曜日は新幹線移動中にスマホでライブ視聴。

ライブ講演時間に合わせて新幹線を選びました。

途中、恒例の?アイスクリームを注文時、イヤホンを落としエライ(大変な)ことに。

 

まんべんなく聞くのは後日オンデマンドで。

 

『近視』は最近とてもホットな話題です。

当院でもオルソケラトロジーを開始したので、特に気にして学術的な情報を集めるようにしています。

眼軸長(眼の奥行)の伸長が近視進行の要因です。

眼軸長が伸び、近視が進行すると、緑内障を始め様々な目の病気の罹患率が上がります。

中高年以降に目の病気になりやすいということです。

緑内障は慢性的かつ進行性なので、今の緑内障治療をもっても回復・改善はしません(院長も緑内障を専門としていますので、悩みどころです)。

近視進行させないためには、眼軸長を伸ばさなければいいのだ!

というのが、今の近視予防の主流的な考え方です。

 

オルソケラトロジー

低濃度アトロピン点眼

二重焦点レンズ

以上が最近効果があると報告されている方法です。

 

オルソケラトロジーを施行した眼とそうでない眼では、明らかに眼軸長の伸びに差が出ています。

目はとても小さな臓器なので、1mm伸びると約3D(ジオプター)近視が進行したことになります。

発表では、弱度近視から始める方が、効果が大きいとのこと。

 

低濃度アトロピンも、近視になる以前の0度数やわずかな遠視の状態から開始すると、近視の発症を抑制したという報告がありました。

 

いずれも保険外診療ですが、試してみては、と思います。

そして、息子たちも院長似の強度近視にさせてしまったことを母としては少々悔やみます。

もっとも当時は、眼軸長と近視の相関関係がはっきり解明されていませんでしたが。

もう成人しているので、スマホやタブレットの視聴時間や距離を言っても聞く耳を持ちません。

せめて、毎年、母(院長)の定期検査を受けて~

 

その他、最大限聴いて終了。

 

今回のお楽しみはM先生とのランチです。

ある分野ではとてもエライ(偉い)先生。

お姉さんのような素敵な先生です。

3年前の学会で一緒のホテルに泊まる予定でした。

予約の件でラインしたら『HP読んだ?新型コロナで現地開催なしになったって』

 

3年分の話が弾みます。

3年間色々あった過去から現在、そして今後の展望まで。

『オルソケラトロジー始めたんです』

『うちは、もうとっくに始めてるよ』

あれま!?毎度、眼科の知識・情報をもらいます。

 

食後『江戸城付き合って~』

皇居ってこと!?

おもむろに取り出したのは、日本100名城スタンプ帳。

かなりの数のスタンプが。

『そうなのよ、はまってるの』

皇居=皇居ラン(以前マラソンにはまっていた時は上京したら走っていた)のイメージの院長。

ゆっくり歩くのも良い気分です。

城石を見て『切込接やわ~』とはしゃぐM先生。

城石の解説をしてもらいます。

スタンプを押して、江戸城制覇!?

 

犬山城と名古屋城は既に印が。

岡崎城・長篠城・岐阜城・岩村城・松阪城はまだとのこと(←100名城と知らない無知な院長)。

学会以外にも会える機会が増えそうです。

 

今回も、現地参加だからこそのお楽しみありの学会でした。

 

 

 

 

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 眼に関すること

2023.3.30 みんなが、周りが

『ICL(アイシーエル)ってどうなんですか?』

長年当院でHCL(ハードコンタクトレンズ)を処方している30代後半の患者さん。

HCL処方だけでなく、角膜炎や何やらで時々治療もしています。

『ICL考えているのですか?』

『ん~、周りがどんどんICLやり始めたので、私もやったほうがいいかな?って』

 

ICLとは…

ICLは有水晶体眼内レンズの略です。

 

一般の白内障手術は、濁った水晶体を除いて代わりに眼内レンズを挿入します。

ICLは、水晶体はそのままに(有水晶体)、自分の水晶体の前に(虹彩と水晶体の間)に眼内レンズを埋め込みます。

白内障手術後では、どのくらい見えるようにするか・したいかにより、眼内レンズのパワーを決定します。

一般的には、高齢になると近くのもの(新聞とか、食卓のものとか)がはっきり見えたほうが便利なので、近視に設定することが多いです。

 

一方、ICLは裸眼視力アップを目的とするので、裸眼で遠くがはっきり見えるように眼内レンズの度数を決定します。

白内障手術と類似の方法です。

レーシックと違い、角膜を削らない分、見え方の質が良いと言われています。

また、強度近視にも適応があります。

万一、何か起こっても眼内レンズを取り出せますが、内眼手術(眼の中の手術)であることは、それほど手軽ではないということです。

 

かたやレーシックとは…

角膜にエキシマレーザーを照射して角膜のカーブを変えることで、近視を減らし視力を回復させる手術です。

角膜をレーザーで削るので、強度近視(たくさん削らないといけない)や角膜の薄い人には不適です。

手術時間もリカバリー時間も短く、20年くらい前には大ブームになりました。

経時的に近視の戻りが出たり(視力低下)、グレアやハロー(かすみやぼやけ)、ドライアイが生じてきた患者さんも多く見ています。

角膜が薄い分、眼圧が見かけ上低く出るのも、眼科医としては留意しないといけません。

 

どちらの方法も近年では、老眼対応もあり、どんどん進化してきています。

 

『今コンタクトで困っていますか?』

『う~ん、すごく困ってはいないんですけど、みんながどんどんICLを受けてるから…

裸眼ですっきり見えたらいいな~っと思って』

院長も強度近視なので、その気持ちよくわかります。

特に、若い時は何度そう思ったか。

 

中等度以上の近視だと、生涯近くのものは裸眼で見ることが可能です(距離は様々です)。

50代(院長)だと、日常は弱めの眼鏡(診察用)を使用しています。

運転や学会などでしっかり見たいときは、遠方重視の眼鏡やコンタクトレンズを使用します。

いつも遠くはっきり見える生活では、中年以降は眼精疲労が起こり易くなるからです。

 

以上の話をざーっとした後…

『そういえば、眼科の先生って(近視矯正手術受けず)眼鏡が多いですよね~』

確かに。

院長、近視矯正についてはニュートラルな立場です。

 

ほとんどの眼科医が近視矯正手術を受けないのは、リスクとベネフィットを天秤に掛けた結果。

物事は、どんなことでもそう。

『よく考えて、自分にとって最良の選択を自分自身で決定してくださいね』で〆。

 

みんなが○○、周りが○○…言わなくなって久しいオバサン(院長)です。

 

 

 

 

カテゴリー:クリニックに関すること 眼に関すること

2022.6.14 暗いところで

学校検診後の『受診のお勧め用紙』を持って受診される患者さんが多い毎日です。

ほとんどは、視力低下です。

眼科で視力検査をすると、1.2ずつ出て、近視も遠視もなく、問題のない子もいます。

『学校では何で悪かったのですか?』

『おそらく、緊張とか他の様々な要因でたまたまだったのでは?眼科できちんと検査して問題ないから安心してください』と伝えます。

お勧め用紙をもらって受診、何もなくて何よりです。

対して、B(1.0未満)でお勧め用紙をもらっても、けっこう近視度が強いこともあります。

子どもは、ピント合わせの力が強いので、少し頑張れば見かけの裸眼視力はアップします。

 

学童の視力低下で多いのは、近視です。

近視は、遠くのものが見えにくくなります。

もっとも低学年では、見えにくいという意識が低いため、成人よりも近視が進行していても気が付かないことが多いです。

 

光は水晶体(茶目)を通して、眼球の底(網膜)にピントを合わせます。

網膜上に焦点がきちんと合っていると、物がはっきり見えます(脳が認識)。

近視の場合は、網膜の手前に焦点が合います。

このため、遠くのものが見えにくくなります。

遠視は、網膜の後方にしか焦点が合わないので、遠くも近くも見えにくくなります。

近視・遠視とも、眼鏡によって、焦点を網膜上に合わせることで、物をはっきり見ることが出来ます。

水晶体は、遠くを見るときは薄くなり、近くを見るときは厚くなります。

この調節をするのは、水晶体を支えている毛様体筋です。

この働きが鈍ると、ピント合わせがしにくくなります。

また、一般に、近視は眼軸長(目の奥行)が長く、遠視は短い傾向にあります。

 

近視の進行抑制には、外遊びや、20/20/20ルール(20分PCなどを見たら20秒20フィート(6M)先を見よう)が推奨されています。

『暗いところで本を読んだりゲームをしないほうがいいですよね!?』

院長も子供時代に言われていました。

その頃は、なぜかはわからず、言い伝えみたいなものかと聞いていましたが。

 

暗所で物を見ると、瞳孔(黒目)が開いて光を取り込もうとします。

瞳孔が開き続けると、目に入る光の量は増えますが、ピントがぼやけやすくなります。

これが刺激となり、眼軸長が伸びる(=近視化)報告もあります。

若いと、瞳孔の開きの調節がスムーズなので、暗所でも平気で字が読めますが、注意です。

 

ちなみに、加齢により、暗所の作業はしんどくなります。

薄暗いムーディーなお店では、目を凝らしてもメニューが読みづらいこと。

暗めのカフェで読書する気にもなれません。

同様のことを訴えて来院される患者さんも多々。

院長も経験済みです。

加齢により、瞳孔は小さくなり、暗所で瞳孔を調節することも困難になります。

だから、オバサン(院長)は明所を好むようになります。

ムードは関係なしに。

 

往診で老人ホームなどの施設に行くと、暖色系の灯りで統一されています。

暖かさや落ち着きをアピールするにはいいと思います。

しかし、この照度では、入居者は美味しくご飯を食べたり、読書が出来ているのかしら?

テーブルにLEDスタンドでも置いたら、コントラストがはっきりするのにな~(ムードはこの際なし)と思います。

 

ムーディーな暗所も時と場合によっては必要です。

でも、何かをしっかり見るときは、明るくしたほうが良いです。

見なくて済むものも見えるかもしれませんが。

 

 

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2021.10.12 目の愛護デー

10月10日は体育の日と、今も連想する昭和世代の院長ですが、目の愛護デーでもあります。

10/10を縦に並べると眉毛と目に見えるからです。

 

愛護デーにちなみ、眼の健康について。

 

子どもの視力は悪化傾向にあります。

学校での視力検査で、裸眼視力1.0未満の学生は年々増加。

2020年度では小学生約30%、中学生約60%、高校生では約70%弱の割合です。

もっとも、1.0以上だからと言って、遠視や乱視が隠れているかもしれませんし、近視なのに頑張って裸眼視力を出している場合もあるので、ひとつの目安です。

片眼だけが視力不良の場合も、気づかないことが多いので、『受診のお勧め』をもらったら必ず眼科受診してください。

 

近視は、近くにピントが合いやすく、遠くがすっきり見えない状態です。

近視進行につれ、眼球の奥行(眼軸長)も長くなり、強度近視の眼球はラグビーボールのような形状です(ふつうは球状)。

 

遠視は、遠くが見やすいのではなく、遠くも近くもピント合わせをしないと見えない目です。

近くを見るときのほうが、ピント合わせの力を大きく使うので、近用作業(読書や勉強)に疲れたり飽きやすいこともあります。

遠視の程度によっては、裸眼視力がよくても、眼鏡装用を勧めます。

 

乱視は、茶目(角膜)の縦と横のカーブが違っていて、ピントの距離が合う距離が違っている目です。

ほとんどの人は、多少なりとも乱視があります。

患者さんが自己申告で、『私、乱視があるんです』と言われる場合も、問題になる程度とそうでない微小な乱視と様々です。

眼科的に問題になるのは、乱視を入れないと矯正視力が出ない場合。

一般に角膜はほぼ円形をしていますが、乱視が強いと楕円のイメージです。

 

 

弱視は、視力が育っていない眼の状態を言います。

生直後の赤ちゃんは、まだ視力がほとんどなく、その後周囲の刺激を受けて、視力が発達します。

3歳児健診、就学時健診は節目の検査です。

健診で受診を勧められたら、必ず来院してください。

早く発見することで、視力の成長は可能です。

タイムリミットは8~9歳なので、弱視治療の有効期間は限られています。

 

学童期には、近視と診断されることが多いのですが、原因は『遺伝』と『環境』です。

強度の近視は、眼軸長が伸びている(ラグビーボール状)ので、身長と同様、遺伝によるものは大きいです。

眼軸長は成長により伸びますが、伸び率に差があります。

また、近年は、端末による近用作業(PC、タブレット、スマホ、ゲーム)が増え、屋外活動が減る傾向にあるため、環境要因も大きくなっています。

実際、昨年のコロナ渦での一斉休校期間に、子供の近視は、ずいぶん進行しました。

 

20/20/20ルール。

20分端末を見たら20秒以上20フィート(約6メートル)遠くを見ましょう。

明るい部屋で作業をしましょう。

目が乾燥しないよう、意識して瞬きをしましょう。

寝る前には、見ないように。

睡眠リズムの乱れになります。

太陽光での屋外活動も有効です。

学校の休み時間や体育だけで十分時間は確保できます。

強い日射しでなくても有効です。

 

近視の研究は、近年どんどん新しい知見が報告されてきています。

近視が強くなるに従い、網膜剥離、緑内障になりやすくなります。

強度近視だと、近視のない人に比べて、網膜剥離は22倍、緑内障は14倍の発症率です。

 

学校医として、地域のかかりつけ医として、診ていた子供さんたちも、もう立派な成人。

そのお子さんたちがやってきます。

デジタル端末で何でも調べられる昨今。

眼も心も不安になりやすいから、目の前の眼科医に聞いてくださいね。

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