2024.6.11  運転止める?続ける?

眼科の学会も規模の大きなものから小さいものまで。

森(眼科全体)に対してか、木(病気から・症状から・検査から・治療から…など)に対しての学会か。

今回は視野画像学会。

以前は視野学会だったのですが、眼科の画像機器の進化は著しく、視野画像学会と名称が変わりました。

 

開催地は新潟。

2回目の新潟です。

初めての新潟は、研修医一年目、初めて学会参加でした。

初学会参加に緊張と興奮。

でも、講演内容はほとんど理解出ず。

同期と『よくわからなかったね~』(研修医あるある)

上司I先生(女性)が登壇されたのを『かっこいい~すごい~』と眺めていただけ。

あっと言う間に学会が終わり即帰路に。

何が何だか?学会って異次元?

 

さて2回目の新潟は…

 

今回聞きたかったセッション、座長はI先生。

あの頃30代で登壇されたのですが、今もずっとパワフルでお元気、緑内障や視野の世界では重鎮です。

テーマは『視野と運転』

 

日本視野学会には「交通と視野委員会」があり、運転免許と視野についても調査研究が行われています。

現在、免許更新には規定の「視力」は必要ですが、視力が適すれば視野異常については触れていません。

しかし診察していると、視力が出ていても視野欠損・視野狭窄の患者さんは多くいます。

 

高齢者の運転が問題になっています。

運転は、認知・判断・操作からなります。

認知の中には視野障害も含まれています。

信号が見にくい・夜間見にくい・雨天に見にくいなどは、加齢に伴い自覚が増えますが、それでも高齢者で自覚しているのは4割と報告されています。

視野異常がある場合も同様で、自覚のない人が多いです。

高齢&視野障害ありは要注意です。

 

視線(眼球運動)のばらつきは、視野の広がりと連動しています。

視線のばらつきが小さいと事故を起こしやすく、大きいと事故を起こしにくいとされています。

視線のばらつきが小さいということは、注意力が低下しているということです。

高齢者では小さくなり、若い人では大きい傾向があります。

DS(ドライビングシュミレーター(模造運転装置))では、年齢が上がるにつれ、視線の水平方向のばらつきが小さくなったと報告されています。

速度によっても、視野の動きは小さくなります(より速度が上がると視野が狭くなる)。

またDS上で緑内障患者さんを対象に検証したところ、交通事故(仮想)の直前の視線の動きは小さくなり、さらに垂直方向の低下が著しいことがわかりました。

上方で信号を見、前方水平上に車や人を見、下方で計器を見ることを絶えず繰り返して運転しているのですが、どこかで少し視線が停留した時に事故が起こっています。

 

注意が向く箇所が多いということは、視線が大きいということ。

 

DSの目的は、自分の運転を模擬体験し、どこにリスクがあるかを自覚してもらうことです。

自身の視野異常を理解し、眼科医の助言の元に、注意して運転することで事故を起こさないようにする。

もしくは、視野異常を理解した上で、運転を止める自己決断をする。

 

DSおよび運転外来は、全国で2施設しかありませんが、私たち眼科医も運転が気になる患者さんには助言をしています。

 

2シーターのマニュアル車を運転していた(若かりし頃)院長も、運転技術の低下・視線のばらつき低下を感じるこの頃。

運転は最低限に。

公共交通機関&ママチャリ大いに活用しています。

 

運転が気になると思う方は、ご相談ください。

 

 

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2023.5.30 脳と緑内障

名古屋で視野画像学会。

岐阜県多治見市で第一回が開催。

中央線に揺られて行ったのは、もう11年も前のこと。

 

眼科と言っても、大きな日本眼科学会総会や臨床眼科学会のみならず、部位や病気や検査など細分化されて、規模の小さい学会が多数あります。

例えば、角膜・水晶体・神経・網膜硝子体とかの部位。

近視・アレルギー・白内障・緑内障・糖尿病などの病気別。

視野画像・眼光学・眼薬理・眼循環など検査や基礎的な仕組み別。

総論と各論みたいな。

切り口色々。

そして、それぞれが繋がっています。

物事全てそう。

 

さて、今回の学会。

緑内障は、視野検査はもちろん画像検査も欠かせません。

患者さんの多くが、乗り気ではない視野検査は、病気・進行判定にとても大事間検査で、定期的に施行することでデータの信頼性も増します。

世界標準の自動視野計(当院も設置)は、発売当初(30年以上前)より非常に時短になり、進行予測も計算してくれます。

それでも更に短時間で正確な視野計を目指して、各社がしのぎを削っています。

 

眼圧は、緑内障診療では、アプラネーショントノメーター(点眼麻酔をして眼科医が測定)が世界水準ですが、自己測定用の自動眼圧計もいつも話題に上がります。

実用化され廉価になれば、家庭血圧計のように普及するかもしれません。

 

OCT(光干渉断層撮影)により、緑内障早期発見率がぐっと高まりました。

神経線維の厚みも、神経を栄養する毛細血管の様子もわかるようになりました。

診断機器の能力や可能性は日々進歩しています。

使いこなして、患者さんに還元しないと、宝の持ち腐れになってしまいます。

 

視野と画像…深い深い、もっともっとマニアックな話題が多々。

 

今回の学会で一番驚いたのは、『MRIによる緑内障患者の脳構造と機能』という題目の放射線科医からの発表。

眼科医は、眼科機器の進歩には敏感ですが、MRIの進歩までは…。

MRIの進歩も相当なもの。

緑内障は、視神経の変性ですが、視神経で起こっている変化は、脳に行く途中や脳内でも変化を起こしているようなのです。

実際、緑内障早期患者の脳では、局所的な脳の一部の機能低下や体積の減少が起こっていることが報告されました。

特に、中心視野の欠損症例に起こり易いそうです。

 

緑内障早期の変化を、脳構造の変化としてとらえることが出来る日が来るかも。

そうなると緑内障は眼科だけの病気でなく、脳関連の病気となる日が来るかも!?

 

緑内障疫学調査『多治見スタディ』では緑内障有病率は約5%でした。

その後の2017~2018の『久山町スタディ』では有病率は7.6%とアップ。

緑内障もありふれた病気になってきています。

だからこそ早期発見・早期治療が重要。

院長が眼科医になった時よりは、視野検査も画像検査も格段に改良・発展。

それらを駆使しても眼科医自身のスキルアップは必須です(ずっと勉強しないといけない)。

 

基本から最前線の事項まで。

専門過ぎて、ついていくのに必死な講演もありましたが、いつもより脳は活性化した自覚。

そのせいか、リフレッシュコーナーで供された赤福餅がとても美味しい。

物心ついた頃からある赤福(1771年創業)。

変わらない味のようで、実は時代に合わせて変化しているのか?

その疑問に、原料製法変化なしとの回答。

改良・進歩して良くなっていくもの、変化しないのが良いもの。

世の中、一通りではありません。

 

 

 

 

 

 

 

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