2021.10.26 恋です!変です?

「恋です!」

10月から始まったラブコメディードラマ。

新聞番組欄の案内に惹かれ、見ることに。

 

弱視で盲学校に通う主人公ユキコと純粋(かつ短思考)なヤンキー少年・森生が出合い、それぞれを理解しあい、惹かれあっていくというストーリー。

 

白杖を持ち、点字ブロックを歩いているユキコ。

ある日、ユキコの進行先の点字ブロック上に座って、他のヤンキー達とたむろしていた森生。

ユキコの白杖が森生に当たったことが出会い。

恋の始まりです。

 

あり得ない設定ではありますが、若い二人のラブコメディは、『視覚障害』というハンディも、重くならず。

 

弱視と言っても、盲学校に通うレベルになると、視覚障害者認定を受けているはずです。

私たち眼科医(障害者認定資格要)は、認定のための申請用の診断書を書きます。

数年後に変化する病気(回復もしくは悪化)なら、〇年後に再申請が必要になります。

全盲の場合は、等級が変わることはありません。

 

名古屋市では、小学校により弱視学級が設けられており、院長の受け持ちの小学校の一つでは、数年前まで開級されていました。

盲学校まで行くほどでもないけれど、教科によっては、特別な配慮が必要な場合です。

年一回、生徒の現状について、教育委員会・盲学校・弱視学級併設学校関係者(教師・眼科医)で会議が開かれます。

弱視学級は、該当者がいなければ閉級になります。

 

さて、ユキコは、白杖を使い颯爽と点字ブロックを歩いていきます。

白杖は、自分の先に障害物がないかを確認するので、障害物や物の位置を把握するのに有用です。

 

携帯電話や時計は音声で。

映画も音声ガイド付きのを利用します。

目が見にくい人にとって音は大変重要です。

そのため、雑音が多いところは、聞きたい情報を取り出すのに苦労します。

 

おかずとのコントラストがはっきりする食器の色、指を切らないようガードを付けたり材料とのコントラストがはっきりしたまな板。

その他、いろいろ日常の工夫が出てきます。

 

そのような視覚障がい者あるある話は、案内人として、当事者でもあるお笑い芸人の濱田祐太郎さんが解説(ドラマにしては珍しい)してくれるのも興味深いです。

 

森生に『ユキコさんは普通ですよね。俺に比べて…』と言われ『私が普通?』と聞き返します。

森生にとっては、弱視であろうが、社会(学校)生活をきちんと送っているユキコは、まさしく普通。

二人の身長差が大きく、声が届きにくい解決策として、自分(森生)の身長を縮める方法が見つからず、ハイヒールをプレゼントしてしまう森生。

考えなしではありますが、その一途さが見ていて微笑ましいです。

 

白杖を持つことは普通じゃなくなる。

中途失明の方はそう思う人が多いです。

自分は普通じゃなくなるんだ。

でも、良くも悪くも普通って何?

 

かなり視覚障害が進んでいても、白杖を希望されない方もいます。

白杖は、進行先の障害物を予測するものでもあり、周囲に配慮を促し、自身の安全を守るものでもあります。

ドラマで使用されているものや、折りたたみもあり、状況に応じて使用することも可能です。

白杖を持つことは、視覚障がい者として自分を認めること。

白杖を持つ=障害を受容。

 

重くなりがちなテーマを、明るくコミカルな恋愛ストーリーで描いたところがすごい!

まずは、楽しみながら、興味を持ってもらえれば。

オバサン(院長)、このドラマは見逃せません。

変です?

 

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カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2018.3.13  R-1グランプリ

一人芸(ピン芸人)で誰が一番面白いかを決める大会『R-1グランプリ』

タイトルのRは本来『落語』を意味しているそうですが、今は落語に限らず『とにかく面白い一人芸』ならOKのようです。

 

新喜劇は好きですが、漫談には疎い方。

しかし、『盲目のR-1王者』『ほぼ盲目のR-1勝者』『弱視の芸人R-1日本一』などというニュースの見出しに、職業柄、気になってしまった院長です。

 

王者の濱田祐太郎さんとは、誰?

 

吉本興業所属の28歳の芸人さんです。

視覚特別支援学校を卒業。

吉本総合芸能学院(NSC)35期。

同期は、ゆりやんレトリィバァ。

 

両眼では全く見えないわけではない(左全盲、右明暗のみ判別のよう)ので、眼科的には、盲目ではなく『弱視』になります。

しかし、生活するには、不十分な視力であり、本人も白杖を使って生活、舞台へも立たれています。

 

視力障害の原因は『先天性緑内障』とのこと。

高い眼圧によって眼球が拡大し、流涙や羞明、眼瞼けいれん、角膜(黒目)の濁り、牛眼(黒目が大きくなる)などの症状が現れます。

手術が第1選択です。

適切な治療をしても、視力障害を伴うことが多く、生涯にわたって検査・治療が必要です。

 

患者さんはほとんど赤ちゃんなので、検査・手術は、催眠剤や全身麻酔下で行います。

第1子を産んで、大学病院復帰したときには、そういう小さな患者さんに我が子を重ねて、胸が痛みました。

 

さて、グランプリの漫談動画を見ると…

例えば、冷たいコーヒーが欲しかったのに、自販機で押して出てきたのは、熱いおしるこだった!

この暑いのに~。

でも、意外といけた。

 

駅の階段の数まで教えてくれた親切なおばちゃんが、言われた段数上がったところで『間違えた。あと5段あったわ』

(視覚障碍者の)自分にとって、その誤差は大きいけれど、おばちゃんは『サプライズや』

 

などなど、自分の視覚障害体験を基にした自虐ネタがほとんどです。

 

笑いに引き込まれつつ、眼科医としては『そうよね~』と共感と学びでした。

一般のお客さんからしたら、笑いつつも『(障害を)笑っていいの?』という思いがよぎったり、視覚障害の現実を『そうなんだ』と認識したり、と少々複雑かもしれません。

 

しかし、漫談は間違いなく面白い!

濱田さんが、笑いのバリアフリーを実現してくれることを期待しています。

 

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