2020.7.14 薬飲んでいいの?
時々、患者さんや薬局から尋ねられます。
『緑内障でも、このお薬飲んで大丈夫ですか?』
『緑内障』は、眼圧により目の神経が圧迫され、視神経の束が薄くなったり細くなったりして、視野の狭窄や欠損が起こる病気です。
多治見市で実施された調査では、40歳以上の17人に1人が『緑内障』に罹患している結果となりました(2012)。
年数が経ち、ますます高齢化しているので、罹患者数はさらに増加しています。
『緑内障』は早期発見が大切で、しかも、強度近視や家族歴ありなどではリスクが高まるため、40歳以上では、眼科の検診をお勧めしています。
さて、他科の薬には、かなり多岐にわたり『緑内障禁忌(使用してはいけない)』の注意書きを見ます。
精神科系の薬
抗てんかん薬
抗パーキンソン薬
循環器系の薬
排尿障害治療の薬
風邪薬、咳止め、かゆみ止め、酔い止めなど市販の薬にも表記されています。
『緑内障』と診断もしくは疑いと聞くと、心配になって当然です。
緑内障禁忌とされている薬は、散瞳(黒目が大きくなる)を引き起こします。
散瞳により『隅角・ぐうかく』がより狭まり、眼圧の急上昇が起こるタイプは『緑内障発作』を起こします。
眼圧が高い状態が続くと、視神経が一気に弱り、急激な緑内障の進行となります。
内服薬だけでなく、注意が必要な点眼薬もあります。
どのタイプの『緑内障』で禁忌なのか?
鍵は、『隅角』が広いか狭いか。
目の中の水(房水・ぼうすい)は、毛様体という目の中間部で作られ、虹彩(茶目)の前面の端っこから排出されます。
前面の端っこのところは、角度がついており(『隅角』)、この角度が広いか狭いかでタイプ分けされます。
広ければ『開放隅角』
狭ければ『閉塞隅角』もしくは『狭隅角』
無治療の『閉塞隅角』『狭隅角』だと、緑内障禁忌の薬は使用出来ません。
眼科では、通常の診療でも、必ず『前房・ぜんぼう』(房水がたまっているお部屋)の深さを見ます。
狭そうであれば、隅角のチェックもします。
閉塞隅角や狭隅角の場合は、緑内障発作予防にレーザーをしたり、中高年以降では白内障手術をします。
そうすれば、緑内障禁忌の薬からも解放されます。
ひとくくりに『緑内障』といっても、大きく『開放隅角緑内障』と『閉塞隅角緑内障』に分かれます。
さらに、『開放隅角緑内障』には、日本人に一番多い『正常眼圧緑内障』が含まれます。
『緑内障』診断において『隅角検査』は非常に大切で、診断・治療開始において、必ず実施しています。
眼科にかかって、緑内障禁忌の薬についての説明を受けてなければ、恐らく大丈夫だと思います(個々に対応してください)。
元々視力の良い、遠視の高齢女性は、狭隅角・閉塞隅角のことがよくあります(眼科に縁がないので見つかりにくい)。
『前立腺肥大で、この薬飲んでもいいかね~?』
『いいですよ』
『うつ病で出されたこの薬、大丈夫ですか?』
『大丈夫ですよ』
一人、一人患者さんを診て答えます。
心配なことは、何でもお尋ねください。
半年前に緑内障(正常眼圧緑内障)診断し、点眼治療中の40代男性Aさん。
すごく体が大きくて、がっちりした体格です。
診療終了後『一つ、質問していいですか?』
『はい、どうぞ』
『緑内障ですが、これ飲んでもいいですか?』
見せられたのは、市販の酔い止め薬。
『全然問題ないですよ』と、開放隅角であることを再度説明。
『よかった~。これで、安心して長距離バス乗れます。小さい時から、これないとダメなんで…』
Aさんがくまのプーさんのように可愛らしく見えました。