2023.5.30 脳と緑内障
名古屋で視野画像学会。
岐阜県多治見市で第一回が開催。
中央線に揺られて行ったのは、もう11年も前のこと。
眼科と言っても、大きな日本眼科学会総会や臨床眼科学会のみならず、部位や病気や検査など細分化されて、規模の小さい学会が多数あります。
例えば、角膜・水晶体・神経・網膜硝子体とかの部位。
近視・アレルギー・白内障・緑内障・糖尿病などの病気別。
視野画像・眼光学・眼薬理・眼循環など検査や基礎的な仕組み別。
総論と各論みたいな。
切り口色々。
そして、それぞれが繋がっています。
物事全てそう。
さて、今回の学会。
緑内障は、視野検査はもちろん画像検査も欠かせません。
患者さんの多くが、乗り気ではない視野検査は、病気・進行判定にとても大事間検査で、定期的に施行することでデータの信頼性も増します。
世界標準の自動視野計(当院も設置)は、発売当初(30年以上前)より非常に時短になり、進行予測も計算してくれます。
それでも更に短時間で正確な視野計を目指して、各社がしのぎを削っています。
眼圧は、緑内障診療では、アプラネーショントノメーター(点眼麻酔をして眼科医が測定)が世界水準ですが、自己測定用の自動眼圧計もいつも話題に上がります。
実用化され廉価になれば、家庭血圧計のように普及するかもしれません。
OCT(光干渉断層撮影)により、緑内障早期発見率がぐっと高まりました。
神経線維の厚みも、神経を栄養する毛細血管の様子もわかるようになりました。
診断機器の能力や可能性は日々進歩しています。
使いこなして、患者さんに還元しないと、宝の持ち腐れになってしまいます。
視野と画像…深い深い、もっともっとマニアックな話題が多々。
今回の学会で一番驚いたのは、『MRIによる緑内障患者の脳構造と機能』という題目の放射線科医からの発表。
眼科医は、眼科機器の進歩には敏感ですが、MRIの進歩までは…。
MRIの進歩も相当なもの。
緑内障は、視神経の変性ですが、視神経で起こっている変化は、脳に行く途中や脳内でも変化を起こしているようなのです。
実際、緑内障早期患者の脳では、局所的な脳の一部の機能低下や体積の減少が起こっていることが報告されました。
特に、中心視野の欠損症例に起こり易いそうです。
緑内障早期の変化を、脳構造の変化としてとらえることが出来る日が来るかも。
そうなると緑内障は眼科だけの病気でなく、脳関連の病気となる日が来るかも!?
緑内障疫学調査『多治見スタディ』では緑内障有病率は約5%でした。
その後の2017~2018の『久山町スタディ』では有病率は7.6%とアップ。
緑内障もありふれた病気になってきています。
だからこそ早期発見・早期治療が重要。
院長が眼科医になった時よりは、視野検査も画像検査も格段に改良・発展。
それらを駆使しても眼科医自身のスキルアップは必須です(ずっと勉強しないといけない)。
基本から最前線の事項まで。
専門過ぎて、ついていくのに必死な講演もありましたが、いつもより脳は活性化した自覚。
そのせいか、リフレッシュコーナーで供された赤福餅がとても美味しい。
物心ついた頃からある赤福(1771年創業)。
変わらない味のようで、実は時代に合わせて変化しているのか?
その疑問に、原料製法変化なしとの回答。
改良・進歩して良くなっていくもの、変化しないのが良いもの。
世の中、一通りではありません。