2021.12.14  転ばぬ先の…

先日12月12日の中日新聞社会面は『ホームドア』について。

 

ホームドアとは、転落防止のためにホームに設けた壁や柵のことです。

車両扉と連動して開閉します。

1981年に開業した神戸新交通ポートアイランド線が初めてとのこと。

そういえば、院長も神戸のポートアイランドが学会会場だった時に、初めてホームドアを見て、ひどく驚いたものでした。

『都会だわ~近未来だわ~』などと。

当時は、岐阜県在住で、路面電車が走っていた頃。

ホームドアどころか、電車が来ると道路に入り乗車していました。

 

国土交通省によると、2019年現在、全国9465駅のホーム19951か所のうち、858駅の1953か所にホームドアが設置されているそうです。

国の目標、2025年までに3000か所設置。

しかし、一駅当たり数億から十数億のコストがかかる。

そのため、東京・大阪・名古屋の3大都市圏を対象に、乗車運賃に1回あたり上乗せ10円以下を想定、可能にするとのこと。

 

確かに、新幹線でさえ、主要駅には設置されていますが、こだまクラスの駅だとほとんど設置されていません。

名鉄や近鉄も昔と変わらず。

地下鉄桜通線・東山線・名城線や、あおなみ線は全駅完備。

大都市のように乗降客が多い駅ほど、より早急なホームドアの設置を望みます。

 

ホームドアがなくても、健常者が落下することは稀ですが、視覚障害者にとっては、危険にさらされる確率が高くなります。

視覚障害者のホームからの転落事故を耳にするたびに、胸が痛みます。

今期の記事にも、転落した女性のインタビュー記事がついていました。

階段を昇りながら、駅のアナウンスで、電車が来ていると勘違い。

西日でまぶしく、電車に乗ろうとホームから足を踏み外し転落。

その後に来た電車に衝突。

この女性は『網膜色素変性症』

視野は周辺からどんどん狭くなり、最後は、ほんの中心部分だけの視野になります。

視力も徐々に低下し、ぼんやりと見えるくらいから、失明に至る人まで様々です。

まぶしさを感じやすいこと、暗いととても見にくい(見えない)ことも特徴です。

 

当院の網膜色素変性症の患者さんたちとのお付き合い(診療)も長くなってきました。

お話を聞くと、やはり、通勤が一番大変のようです。

ラッシュ時の階段の昇降、電車やバスの乗降。

人の多さや駅の明るさなどなど。

フレックスタイムの適応是非や白杖(せめて通勤時だけ)携行などを考えています。

 

テレビドラマ『恋です!』を患者さんたちが見ているわけではないけれど、以前よりも白杖のお話をしやすくなったように思います。

先日、地下鉄で隣席の白杖の青年。

さっと、リュックから、スマホを出して、画面見ず(見えない)に操作。

音楽を聴いていたのか、SNSをしていたのか、楽しそうでした。

 

日本臨床眼科学会は、今年は会場とWEBで。

『会場の福岡行きたかったな~』の思い叶わず、WEBで視聴中。

視覚障害・ロービジョンに関わるコースももちろん視聴。

 

『視覚障害』とアプリで検索すると、色々あります。

試して知ることも有意義です。

 

『一般の人にも関心を!』

地域かかりつけ医として、『小さな草の根運動!』(自称)です。

 

 

 

カテゴリー:眼に関すること

2019.9.3  運転免許の落とし穴

高齢者の自動車事故、あおり運転など、自動車事故に関するニュースを聞かない日はありません。

 

普通運転免許取得の適合視力の条件は…

『両眼0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上、又は一眼の視力が0.3に満たない方、若しくは一眼が見えない方については、他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であること』(警視庁)とされています。

 

当院でも、免許の更新案内が来ると、『視力は大丈夫か?』『メガネはあっているか?』『メガネを作って行った方が良いか?』などと相談に来られます。

単純に、メガネで矯正できる場合は、処方。

『更新の時だけでなく、運転時はいつも装用してくださいね』と念押し。

『メガネでは無理です…眼の病気の治療をしましょう』更新を断念してもらう場合もあります。

時には、『認知症疑い』(当院でも認知症テスト実施します)となり、専門医を紹介することも。

 

さて、眼科医が危惧しているのは、両眼0.7以上でも、視野障害のある患者さんです。

例えば、緑内障や網膜色素変性症などで、視野狭窄が進行する患者さんです。

眼科医としては、出来れば運転は避けた方が…と思う患者さんでも、両眼の中心視力があれば、免許更新は出来てしまいます。

極端に言えば、まるい小さな筒(直径1センチくらいの)を目に当てて、見ているような状態でも、免許更新は可能です。

 

そこで、最近、眼科で話題になっているのが、ドライビングシュミレータ。

先日の研修会では、実物を見ることが出来ました。

画面に道路や、信号・標識などが出てきて、ハンドルを握っている自分は、実際に運転している感覚になります。

途中、歩行者が飛び出してきたり、車がわき道から出てきたり、停車車両があったり、予測不可能な出来事が起こります。

運転者の目がどこを向いているか、追跡されます。

事故が起こったり、ひやりとした場面などと、視野計による視野欠損部位結果との対応により、自身の運転を省みることが出来ます。

例えば、緑内障で上方視野が広く欠損していると、標識・信号を見落とす恐れがあります。

中心下方の欠損があると、左右からの急な飛び出しへの反応が遅れる恐れがあります。

視野欠損の進んだ重度の緑内障患者さんは、正常な視野を持つ人と比べて、およそ3倍の確率で交通事故を起こすという報告もあります。

 

自動車はとても便利なものですが、自分の視野欠損がどの程度あるかを自覚して、慎重に運転してもらいたいです。

眼科医は、『眼科的には運転はお勧めしない』場合も含め、助言しかできません。

運転免許試験場で更新出来たら、あとは自己責任です。

『ヒヤリ』とすることがあれば、視覚・聴覚や認知機能・運動機能に問題があるかもしれません。

やり過ごさずに、クリニックを受診してください。

 

ちなみに、東京の西葛西井上眼科病院では『運転外来』が開設されました。

ドライビングシュミレータを使用して、自分の運転の確認、眼科医からの助言が得られます。

 

近い将来、運転免許の取得・更新もAI主導になるかもしれません。

視力以外の要素も加味し解析して、『更新可』『更新不可』と、AIから言い渡されるかも?

カテゴリー:クリニックに関すること 眼に関すること
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