2021.7.13 うその病気
日本眼科学会認定、眼科専門医の更新手続きの案内が届きました。
専門医を取得後、5年間で、学会や講習会への出席・眼科雑誌などの課題提出・書籍の執筆投稿などなど決められた単位を100単位以上取得。
眼科医として従事していること。
これらの条件を満たしていれば、更新手続きに進みます。
通常は5年ごとの更新です。
満期は9月30日なので、5年満期までにあと2か月ありますが、院長はすでに4年で100単位以上を取得しているので、早速更新手続きをする予定です。
眼科(大体は大学病院とその関連病院)に5年以上従事し、決められた数以上の症例の報告、手術件数、学会発表、論文発表などを達成し、専門医受験資格が得られます。
5年間眼科医として従事していると、そこそこ診療も手術もできるようになってきます。
しかし、専門医試験には、5年間日常診療だけやっていれば太刀打ちできるかと言うと、そういうものでもなく…
5年目までの臨床医は、日々の診療に追われています。
また、大学病院などの専門施設にいると、必然的に専門分野の患者さんが多くなり、患者さんの病気に偏りが生じます。
眼科専門医試験には、眼科学すべての分野の基礎から応用までが出題されます。
単純に知識として覚えればよい基礎問題から、写真(目の色々な部分や検査結果)を見せられ順に解答していく応用問題まで。
専門医受験が決まると、仕事の合間を縫って、机上の勉強。
医師国家試験以来の机上で集中の勉強です。
2日間にわたり、東京で実施されます。
1日目は筆記試験。
2日目は諮問です。
筆記以上の緊張、試験官は大学の教授陣です。
1日目はまず大丈夫、と臨んだ2日目。
1問目はもう覚えていませんが、恐らく楽勝。
2問目は、手術の器具を見せられました。
これは、何に使用しますか?
○○の手術の時です。
どのように?
(持って)○○のように。etc 次々と質問、解答が繰り返され、クリア。
3問めは、〇歳男性見えない主訴で来院患者(架空)の情報を渡されます。
視力は右眼○○左眼○○、眼圧右○○左○○
『まず何の検査をしますか?』
『○○です』
答えると、その結果を示されます。
眼底写真を見せられます。
『視野はどうですか?』
視野結果を見せられます。
『○○はどうですか?』
『○○です』
思い浮かぶ病名がどんどん否定されていきます。
主訴と検査結果が合いません。
『患者さんは、見えないから診断書を書いてほしいと言ってるんですがね…』
『すみません、書けません…』(泣きそうになっている…)
『先生(当時若輩の私)、これは詐病の症例です。こういう症例に遭遇することも頭において頑張ってください』
詐病とは、経済的または社会的な利益の享受を目的として病気であるかのように偽る詐欺行為です。
見えているのに視覚障害者を装ったり、聞こえているのに聴覚障害者を装ったりして、障害年金の受給などを企む人がいるのです。
幸い、現在まで、詐病を疑う患者さんに出会ったことはありませんが、今でも印象に残る最終諮問でした。
最終諮問が不出来だったので、落ちた~と、落胆して乗った帰りの新幹線。
考えるうちに泣けてきました。
今までで一番悲しい新幹線です。
詐病の診断は出来なかった(見抜けなかった)けれど、無事、眼科専門医試験合格のお知らせ。
そこからが本当の眼科医スタートでした(改めて実感)。
眼科医の道は長~い。
ずっと眼科医一筋といえども、発展途上。
専門医の更新のたびに、思い出す最終諮問。
今年も新しい眼科専門医たちが誕生します。