2024.6.18 目薬の温泉
『え~!?』
思わず声を上げたのは、目の温泉・眼病に直接効く温泉を見つけたから。
目の神様を拝むべく、全国を行脚中?の院長ですが、温泉があるとは!
鎌倉時代より700年の歴史。
目の温泉として伝わる神秘の源泉。
上杉謙信好公の隠れ湯として。
江戸時代からは『目の温泉』として遠路より数多き人々が訪れる地。
白内障・眼底出血・ドライアイ・眼精疲労などなどに効能があるそう。
上信越高原国立公園に位置する貝掛温泉です。
見つけたからには、眼科医としては(?)行くしかない!?
新潟県の越後湯沢が最寄り駅です。
といっても、ここからが遠い。
バスは1~2時間に1本しかありません(しかも国道沿いにバス停)。
タクシーでぐんぐん山道を上り、国道を外れると、車一台やっとの道に入り温泉に着きます。
いかにも秘湯というたたずまい(日本秘湯を守る会)。
建物も古めかしく、しかし清掃が行き届いています。
お風呂場に行く長い廊下を歩いて行くと…
著名人の色紙。
ゲゲゲの鬼太郎がお風呂に浸かっているフィギュア。
お薬師様の祭壇。
そして、某老舗眼科病院の3代前院長寄贈の眼球断面図も。
シュレム氏管とかチン氏体とかの表記も。
眼球の構造や機能の詳細は、この30年くらいで大きく進歩し解明されてきました。
が、既に遥か昔(院長生まれていない時代)に、専門用語があったことを知ると、先達たちへの畏敬の念に打たれます。
気分が高まったところで?入湯です。
『正しい目の洗い方
1.手で湯をすくい、目を大きく開き、湯に浸します
2.少し慣れたところで、まぶたを閉じて開いて繰り返し、約1~2分がおススメ』
湯口から温泉が出ています。
そのお湯をすくって目を洗うと効能があるらしいのですが…
眼科医の院長、目は洗わず、静かに温泉を楽しみました。
他にも、神経痛・腰痛・冷え性・五十肩・病後回復に効能があるそうなので(院長該当しないが)、精神の安寧には効果がありました。
木々に囲まれた静寂な温泉に浸かって『幸せ~』
昔(院長生まれる前)は、抗生物質の点眼がなかったため、眼科医でさえ結膜炎の場合、ホウ酸水で目を洗うしか治療がありませんでした。
無色透明で無臭の貝掛の湯はメタホウ酸を多く含み、目薬の湯そのもの。
50年以上前でさえ、目を洗うことが治療とされていたなら、江戸時代はなお、目の温泉の効能は絶大だったと思われます。
湯上りに、売店を覗くと
『目薬はないの?』と別のお客さん。
『以前は売ってたんですけどね~今は取り扱ってないです』
院長も気になっていました。
明治時代には、販売許可を得て目薬を販売していたそうです。
ホウ酸で洗う(もしくは点す)ことが、唯一眼病治療だったことが偲ばれます。
現在では、多種の抗生物質点眼を処方することが出来ます。
点眼回数だけ守れば、洗眼しなくても治ります。
また、目を水(湯)で洗うことは、涙液層のバランスが崩れるので、良くないということもわかりました。
眼科医も、『プールの後は水道水でよく目を洗いましょう』から『人口涙液を数滴さす方がよい』『洗眼をまめにすることは良くない』などと言うようになりました。
涙の成分もわかってきたので、水ではなく、涙と同成分の人口涙液を勧めています。
目の温泉に入りながら、変わらないもの(温質)と変わるもの(眼病治癒)を考えます。
眼科医になってからのわずか30年余でも、眼科学は大いに進歩変化。
でもご利益を求め入湯する気持ちは変わりません。
感謝。
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