2023.3.30 みんなが、周りが

『ICL(アイシーエル)ってどうなんですか?』

長年当院でHCL(ハードコンタクトレンズ)を処方している30代後半の患者さん。

HCL処方だけでなく、角膜炎や何やらで時々治療もしています。

『ICL考えているのですか?』

『ん~、周りがどんどんICLやり始めたので、私もやったほうがいいかな?って』

 

ICLとは…

ICLは有水晶体眼内レンズの略です。

 

一般の白内障手術は、濁った水晶体を除いて代わりに眼内レンズを挿入します。

ICLは、水晶体はそのままに(有水晶体)、自分の水晶体の前に(虹彩と水晶体の間)に眼内レンズを埋め込みます。

白内障手術後では、どのくらい見えるようにするか・したいかにより、眼内レンズのパワーを決定します。

一般的には、高齢になると近くのもの(新聞とか、食卓のものとか)がはっきり見えたほうが便利なので、近視に設定することが多いです。

 

一方、ICLは裸眼視力アップを目的とするので、裸眼で遠くがはっきり見えるように眼内レンズの度数を決定します。

白内障手術と類似の方法です。

レーシックと違い、角膜を削らない分、見え方の質が良いと言われています。

また、強度近視にも適応があります。

万一、何か起こっても眼内レンズを取り出せますが、内眼手術(眼の中の手術)であることは、それほど手軽ではないということです。

 

かたやレーシックとは…

角膜にエキシマレーザーを照射して角膜のカーブを変えることで、近視を減らし視力を回復させる手術です。

角膜をレーザーで削るので、強度近視(たくさん削らないといけない)や角膜の薄い人には不適です。

手術時間もリカバリー時間も短く、20年くらい前には大ブームになりました。

経時的に近視の戻りが出たり(視力低下)、グレアやハロー(かすみやぼやけ)、ドライアイが生じてきた患者さんも多く見ています。

角膜が薄い分、眼圧が見かけ上低く出るのも、眼科医としては留意しないといけません。

 

どちらの方法も近年では、老眼対応もあり、どんどん進化してきています。

 

『今コンタクトで困っていますか?』

『う~ん、すごく困ってはいないんですけど、みんながどんどんICLを受けてるから…

裸眼ですっきり見えたらいいな~っと思って』

院長も強度近視なので、その気持ちよくわかります。

特に、若い時は何度そう思ったか。

 

中等度以上の近視だと、生涯近くのものは裸眼で見ることが可能です(距離は様々です)。

50代(院長)だと、日常は弱めの眼鏡(診察用)を使用しています。

運転や学会などでしっかり見たいときは、遠方重視の眼鏡やコンタクトレンズを使用します。

いつも遠くはっきり見える生活では、中年以降は眼精疲労が起こり易くなるからです。

 

以上の話をざーっとした後…

『そういえば、眼科の先生って(近視矯正手術受けず)眼鏡が多いですよね~』

確かに。

院長、近視矯正についてはニュートラルな立場です。

 

ほとんどの眼科医が近視矯正手術を受けないのは、リスクとベネフィットを天秤に掛けた結果。

物事は、どんなことでもそう。

『よく考えて、自分にとって最良の選択を自分自身で決定してくださいね』で〆。

 

みんなが○○、周りが○○…言わなくなって久しいオバサン(院長)です。

 

 

 

 

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2022.9.13  公センセイとQ&A

緑区いきいき支援センターからの依頼で、緑区医療相談支援事業の講師を務めてきました。

 

いきいき支援センターとは、地域包括センターの名古屋市版名称(名古屋市だけの呼び名)です。

高齢者の身近な相談窓口として設置されています。

生活・介護・介護認定・介護サービスなどの相談。

相談内容に応じた各種情報提供や関係機関の紹介。

認知症高齢者を介護する家族への支援事業、などなど。

 

相談は、ケアマネージャー(ケアマネ)・社会福祉士・保健師などの職員が、専門知識を生かしながら、互いに連携して「チーム」で対応します。

 

院長は、時に介護認定委員会に出席したり、主治医意見書を書いたりします。

視覚障害だけで、介護認定がおりることは少ないのが実情です。

 

 

緑区では、通常は、内科医による医療相談が、数か月ごとに行われています。

会議室と言うこともあり、講義形式ではなく、『公センセイとQ&A』で話をすることにしました。

 

事前にいくつかの質問をもらっています。

また、それ以外に、当日に何でもいいから聞いてください!のスタンス。

 

『眼内レンズの選び方について。何回もできるのか』

眼内レンズは単焦点(保険)と多焦点(自費)のタイプがあります。

患者さんの希望に加え、身体症状・性格も考慮して選ぶべきです。

今回は、介護認定を受けている高齢者と言うことで、その人の状態・生活様式・術後のケアなどを考慮して主治医としっかり話しあうべきとお話ししました。

何回も白内障手術が出来ると思っている人もあるようですが、基本1回のみです。

術後経過云々で眼内レンズの入れ替えをすることはありますが、非常に稀なケースです。

また、数年後、眼内レンズの後ろの膜が濁り視力低下を起こす『後発白内障』がありますが、これは、いわゆる白内障の手術はせず、レーザーで濁りを取り除きます。

眼科医としては、後発白内障のレーザー治療は、白内障手術2回目とは捉えていません。

 

『術後の点眼が出来ない』

手術後は、病気により違うものの、抗生物質や消炎剤の点眼薬が1日4回点眼指示されます。

認知症や体の不自由さがあり、回数を守れない場合は、主治医に相談しましょう。

絶対点眼しなければいけない回数・期間を、主治医の裁量で変えてくれると思います。

 

『眼鏡店で、眼鏡で視力が出ないと言われ、ショックを受けている』

眼鏡店は、屈折(近視・遠視・乱視・老視)以外目に病気がない人なら、良く見える眼鏡を合わせてくれます。

眼科医は、眼鏡希望の患者さんでも、他に病気がないかを診察します。

まずは、眼科を受診して、病気の有無や視力が出ない原因を診てもらいましょう。

また、眼科で眼鏡は処方します。

 

質問は尽きず、あっと言う間にタイムオーバー(紙面に書ききれず)。

 

院長は、アイフレイルアドバイスドクターと言うこともあり、アイフレイルについて大いにアピールもしました。

また、視覚障害のある利用者を考慮した、デイサービスやデイケアの計画をお願いしました。

在宅になって眼科医を受診せずに、漫然と点眼薬を使用するリスクもお話ししました(往診もします)。

 

眼科医だからこそ、全身とつながる、その人の人生ともつながることを実感する院長。

子育ても介護も、目(の病気)とつながること、ありありです。

知識・技術だけでなく、人生そのものも医師を形成するのだと実感(ならばずっと成長・成熟です!)。

だてにオバサン(院長)ではないキャリアだと思えば、オバサンもまた良し。

 

→こちらもぜひ、ご覧ください

アイフレイル自己チェック

白内障と認知症

 

来週の公センセの部屋はお休みです。

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