2018.3.13 R-1グランプリ
一人芸(ピン芸人)で誰が一番面白いかを決める大会『R-1グランプリ』
タイトルのRは本来『落語』を意味しているそうですが、今は落語に限らず『とにかく面白い一人芸』ならOKのようです。
新喜劇は好きですが、漫談には疎い方。
しかし、『盲目のR-1王者』『ほぼ盲目のR-1勝者』『弱視の芸人R-1日本一』などというニュースの見出しに、職業柄、気になってしまった院長です。
王者の濱田祐太郎さんとは、誰?
吉本興業所属の28歳の芸人さんです。
視覚特別支援学校を卒業。
吉本総合芸能学院(NSC)35期。
同期は、ゆりやんレトリィバァ。
両眼では全く見えないわけではない(左全盲、右明暗のみ判別のよう)ので、眼科的には、盲目ではなく『弱視』になります。
しかし、生活するには、不十分な視力であり、本人も白杖を使って生活、舞台へも立たれています。
視力障害の原因は『先天性緑内障』とのこと。
高い眼圧によって眼球が拡大し、流涙や羞明、眼瞼けいれん、角膜(黒目)の濁り、牛眼(黒目が大きくなる)などの症状が現れます。
手術が第1選択です。
適切な治療をしても、視力障害を伴うことが多く、生涯にわたって検査・治療が必要です。
患者さんはほとんど赤ちゃんなので、検査・手術は、催眠剤や全身麻酔下で行います。
第1子を産んで、大学病院復帰したときには、そういう小さな患者さんに我が子を重ねて、胸が痛みました。
さて、グランプリの漫談動画を見ると…
例えば、冷たいコーヒーが欲しかったのに、自販機で押して出てきたのは、熱いおしるこだった!
この暑いのに~。
でも、意外といけた。
駅の階段の数まで教えてくれた親切なおばちゃんが、言われた段数上がったところで『間違えた。あと5段あったわ』
(視覚障碍者の)自分にとって、その誤差は大きいけれど、おばちゃんは『サプライズや』
などなど、自分の視覚障害体験を基にした自虐ネタがほとんどです。
笑いに引き込まれつつ、眼科医としては『そうよね~』と共感と学びでした。
一般のお客さんからしたら、笑いつつも『(障害を)笑っていいの?』という思いがよぎったり、視覚障害の現実を『そうなんだ』と認識したり、と少々複雑かもしれません。
しかし、漫談は間違いなく面白い!
濱田さんが、笑いのバリアフリーを実現してくれることを期待しています。