2022.6.14 暗いところで

学校検診後の『受診のお勧め用紙』を持って受診される患者さんが多い毎日です。

ほとんどは、視力低下です。

眼科で視力検査をすると、1.2ずつ出て、近視も遠視もなく、問題のない子もいます。

『学校では何で悪かったのですか?』

『おそらく、緊張とか他の様々な要因でたまたまだったのでは?眼科できちんと検査して問題ないから安心してください』と伝えます。

お勧め用紙をもらって受診、何もなくて何よりです。

対して、B(1.0未満)でお勧め用紙をもらっても、けっこう近視度が強いこともあります。

子どもは、ピント合わせの力が強いので、少し頑張れば見かけの裸眼視力はアップします。

 

学童の視力低下で多いのは、近視です。

近視は、遠くのものが見えにくくなります。

もっとも低学年では、見えにくいという意識が低いため、成人よりも近視が進行していても気が付かないことが多いです。

 

光は水晶体(茶目)を通して、眼球の底(網膜)にピントを合わせます。

網膜上に焦点がきちんと合っていると、物がはっきり見えます(脳が認識)。

近視の場合は、網膜の手前に焦点が合います。

このため、遠くのものが見えにくくなります。

遠視は、網膜の後方にしか焦点が合わないので、遠くも近くも見えにくくなります。

近視・遠視とも、眼鏡によって、焦点を網膜上に合わせることで、物をはっきり見ることが出来ます。

水晶体は、遠くを見るときは薄くなり、近くを見るときは厚くなります。

この調節をするのは、水晶体を支えている毛様体筋です。

この働きが鈍ると、ピント合わせがしにくくなります。

また、一般に、近視は眼軸長(目の奥行)が長く、遠視は短い傾向にあります。

 

近視の進行抑制には、外遊びや、20/20/20ルール(20分PCなどを見たら20秒20フィート(6M)先を見よう)が推奨されています。

『暗いところで本を読んだりゲームをしないほうがいいですよね!?』

院長も子供時代に言われていました。

その頃は、なぜかはわからず、言い伝えみたいなものかと聞いていましたが。

 

暗所で物を見ると、瞳孔(黒目)が開いて光を取り込もうとします。

瞳孔が開き続けると、目に入る光の量は増えますが、ピントがぼやけやすくなります。

これが刺激となり、眼軸長が伸びる(=近視化)報告もあります。

若いと、瞳孔の開きの調節がスムーズなので、暗所でも平気で字が読めますが、注意です。

 

ちなみに、加齢により、暗所の作業はしんどくなります。

薄暗いムーディーなお店では、目を凝らしてもメニューが読みづらいこと。

暗めのカフェで読書する気にもなれません。

同様のことを訴えて来院される患者さんも多々。

院長も経験済みです。

加齢により、瞳孔は小さくなり、暗所で瞳孔を調節することも困難になります。

だから、オバサン(院長)は明所を好むようになります。

ムードは関係なしに。

 

往診で老人ホームなどの施設に行くと、暖色系の灯りで統一されています。

暖かさや落ち着きをアピールするにはいいと思います。

しかし、この照度では、入居者は美味しくご飯を食べたり、読書が出来ているのかしら?

テーブルにLEDスタンドでも置いたら、コントラストがはっきりするのにな~(ムードはこの際なし)と思います。

 

ムーディーな暗所も時と場合によっては必要です。

でも、何かをしっかり見るときは、明るくしたほうが良いです。

見なくて済むものも見えるかもしれませんが。

 

 

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2018.3.6 子供の近視

小児眼科学会が名古屋で開催されました。

向上心旺盛な当院の視能訓練士は、2日間にわたり、熱心に聴講してくれました。

 

この学会は、子供の目の病気に特化した内容で講演されます。

専門施設で行われている特殊・高度な医療から、開業医レベルの身近なことまで多岐に渡ります。

 

今回の教育講演のひとつ、『学童の近視をどうするか』

近視が進行すると、黄斑変性や緑内障などの病気を発症するリスクが高まります。

それらのリスクを下げるためには、学童期に、出来るだけ近視進行を抑制することが重要です。

 

屋外活動の増加は、近視抑制効果があることが分かりました。

1日1時間屋外で過ごすと、対象の13%に近視進行抑制効果がありました。

また、近視発症時期を遅らせるのに有効とも言われています。

院長が子供の頃は、毎日外で遊んでいましたから、現在、強度近視ではありますが、そのおかげでいくらかは軽減されているのかもしれません。

(近視は、遺伝が大きく関与します)

 

他に、累進多焦点コンタクトレンズ(コンタクトレンズに段階的に度が色々入っている)や、オルソケラトロジー(ハードコンタクトレンズを着けたまま寝て、日中の近視度を緩和する)も、近視抑制効果は報告されていますが、日本ではまだ近視抑制法として認可はされていません。

さらに、薄い濃度の調節麻痺点眼薬も有効という報告があり、治験中だそうです。

 

よく、保護者の方が、『私も近視だけど、こんなに早くメガネかけなかった』と我が子と比べられます。

屋外活動の減少、屋内遊びの多様性の増加(TVゲーム、スマホ、タブレットなど)が、近視化を早めているには違いないようです。

 

『スマホ内斜視』という言葉も出ました。

1日4時間以上4か月以上スマホを使用すると、内斜視(目が内側に向く)になりやすくなるそうです。

特に目とスマホの距離が20センチ以下では、大きく負荷がかかるので要注意です。

『スマホ育児』がなかった院長の子育ての時代は、まだ良かったのかもしれません。

 

『子供の近視』は、小さい子を持つ親なら関心が高いことと思います。

ネット情報に惑わされず、目の前の主治医にご相談ください。

 

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