2019.9.3 運転免許の落とし穴
高齢者の自動車事故、あおり運転など、自動車事故に関するニュースを聞かない日はありません。
普通運転免許取得の適合視力の条件は…
『両眼0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上、又は一眼の視力が0.3に満たない方、若しくは一眼が見えない方については、他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であること』(警視庁)とされています。
当院でも、免許の更新案内が来ると、『視力は大丈夫か?』『メガネはあっているか?』『メガネを作って行った方が良いか?』などと相談に来られます。
単純に、メガネで矯正できる場合は、処方。
『更新の時だけでなく、運転時はいつも装用してくださいね』と念押し。
『メガネでは無理です…眼の病気の治療をしましょう』更新を断念してもらう場合もあります。
時には、『認知症疑い』(当院でも認知症テスト実施します)となり、専門医を紹介することも。
さて、眼科医が危惧しているのは、両眼0.7以上でも、視野障害のある患者さんです。
例えば、緑内障や網膜色素変性症などで、視野狭窄が進行する患者さんです。
眼科医としては、出来れば運転は避けた方が…と思う患者さんでも、両眼の中心視力があれば、免許更新は出来てしまいます。
極端に言えば、まるい小さな筒(直径1センチくらいの)を目に当てて、見ているような状態でも、免許更新は可能です。
そこで、最近、眼科で話題になっているのが、ドライビングシュミレータ。
先日の研修会では、実物を見ることが出来ました。
画面に道路や、信号・標識などが出てきて、ハンドルを握っている自分は、実際に運転している感覚になります。
途中、歩行者が飛び出してきたり、車がわき道から出てきたり、停車車両があったり、予測不可能な出来事が起こります。
運転者の目がどこを向いているか、追跡されます。
事故が起こったり、ひやりとした場面などと、視野計による視野欠損部位結果との対応により、自身の運転を省みることが出来ます。
例えば、緑内障で上方視野が広く欠損していると、標識・信号を見落とす恐れがあります。
中心下方の欠損があると、左右からの急な飛び出しへの反応が遅れる恐れがあります。
視野欠損の進んだ重度の緑内障患者さんは、正常な視野を持つ人と比べて、およそ3倍の確率で交通事故を起こすという報告もあります。
自動車はとても便利なものですが、自分の視野欠損がどの程度あるかを自覚して、慎重に運転してもらいたいです。
眼科医は、『眼科的には運転はお勧めしない』場合も含め、助言しかできません。
運転免許試験場で更新出来たら、あとは自己責任です。
『ヒヤリ』とすることがあれば、視覚・聴覚や認知機能・運動機能に問題があるかもしれません。
やり過ごさずに、クリニックを受診してください。
ちなみに、東京の西葛西井上眼科病院では『運転外来』が開設されました。
ドライビングシュミレータを使用して、自分の運転の確認、眼科医からの助言が得られます。
近い将来、運転免許の取得・更新もAI主導になるかもしれません。
視力以外の要素も加味し解析して、『更新可』『更新不可』と、AIから言い渡されるかも?