2018.6.5 だるまちゃんの思い出
先月、絵本作家の『かこさとし』さんが亡くなられました。
享年92歳。
ニュースで知り、息子に『加古里子(かこさとし)さん、亡くなったんだって』
『誰、それ?』
『だるまちゃとてんぐちゃん、書いた人』
『あ~、スズメ捕まえる話か!』
『そうそう、覚えとる?』
『ま~』
『小さかったよね~可愛かったよね~』と回想に入ったところで、息子はいなくなっておりました。
『だるまちゃんとてんぐちゃん』はとても有名なお話ですが…
「だるまちゃん」は、「てんぐちゃん」と同じ格好がしたくて、うちわ、ぼうし、履き物、鼻のリクエストを「だるまどん(お父さん)」にするのですが、用意してくれたものは見当違いの物ばかり。
それでも、最後は、気がついて、「だるまちゃん」のお気に入りの物を作ってくれます。
お餅で作られた鼻をつけて、「てんぐちゃん」のようになった「だるまちゃん」。
鼻の先にスズメが止まって、捕まえて、にこにこしたところでお話しは終わるのです。
『ちがうよ ちがうよ まるでちがうよ』と、「だるまちゃん」が「だるまどん」に訴えると、『ごめん ごめん これはおおまちがいの とんちんかん』と謝る「だるまどん」。
言葉の掛け合いが、子供たちには、大受けして、良く真似していたものです。
子供が成長して、かこさとしさんの『未来のだるまちゃんへ』を読むと、それは親と子のすれ違いを描いたものでもあることを知りました。
子供が欲するものと、子供が欲しいだろうと親が思うものとに隔たりがあること。
子供たちが小さい時には、深い意味も考えず、面白く読み聞かせをしていましたが、絵本の奥行きは深い。
同じく有名な絵本に『からすのパンやさん』もあります。
これも、美味しそうなパンの数々に、本筋以上に、夢が膨らんだものでした。
さて、かこさんは、晩年、家の中でもパナマ帽をかぶっていたそうです。
自著によると、30年来緑内障で、視力低下、視野障害がひどく、家の中でもどこかにぶつかってしまうことがあったようです。
そのため、ぶつかりそうになっても、帽子のつばが先に当たれば、回避することができるということを思いついたそうです。
どんな進行状態だったのだろう?点眼薬は?手術はされたのかな?などと、眼科医ならではの関心も出てしまいます。
間違いなく、緑内障の病気は後期。
その状態で、単行本(2014年時88歳の時執筆)を書かれたのは、すごいことです。
もう、息子たちに読み聞かせる機会はありませんが、小さかった息子たちを思い出しながら、一人で読み返してみます。
仕事・家事育児に忙殺される毎日の中での、実は『ほっこりとした幸せな時間』だったのだと、今になって思います。