2022.11.29 赤ちゃんの涙
私生活では、赤ちゃんのいる日常からずいぶん遠ざかってしまった院長です。
ただし、眼科診療をしていると、赤ちゃんの患者さんも受診されます。
乳幼児・学童期になるともっと。
小児科ほどではないにしろ、子供と関わることが多い科と言えます。
生後まもなく片眼(もしくは両眼)から、涙と目やにが出る赤ちゃんがいます。
心配になって来院されます。
涙が目(涙点)から鼻に抜ける排水管(涙道)が詰まっている病気であることがほとんどです。
先天性鼻涙管閉塞(せんてんせいびるいかんへいそく)という病気です。
新生児の6~20%に発症と言われています。
しかし、生後12か月までの自然治癒率は96%と報告されているので、心配しすぎる必要はありません。
基本は経過観察(放っておけばいいということではない)。
目やにが出る場合は、抗菌点眼薬を処方します。
粘性や膿性など目やにの性状を見て。
漫然と使用していると、抗菌点眼薬が効かない菌(耐性菌)が出る可能性があります。
これは、鼻涙管閉塞に関わらず、すべての病気で抗菌剤を使用する際、注意すべき点。
目やには湿らせたティッシュや綿でそっと拭き取りましょう。
涙嚢(るいのう)マッサージが有効な場合もあります。
涙嚢(目頭のやや下内側)から小鼻に向かって、指で圧をかけます。
5~10回を1日2~4セット。
この時、マッサージをする人の指は爪を切って清潔にしてから。
涙の排水菅(鼻涙管)の一番下の詰まっているところに圧が加わるように。
約半年ほど経過を見ても開通しないようなら、プローピング(細い針金ようなものを挿入して詰まりを取る)をします。
最近では、涙道内視鏡での治療も可能になりました。
先天性鼻涙管閉塞診療の最新のガイドラインのまとめです。
ガイドラインは変化していきます。
専門家によって、多大な論文が検証され、信頼のある(推奨する)検査・治療が決定されます。
全て出所がはっきりしているものです。
私たち眼科専門医も、その都度熟知して診療にあたりたいと思います。
生後間もなくは、赤ちゃんは、まだわんわん泣いても涙を流しません。
生理的な(目の表面を保護する)涙だけが分泌されています。
3~4か月で神経系が発達してくると、感情による涙も出るようになります。
生理的な涙の分泌低下、または蒸発が早くなってしまうのがドライアイです。
三男出産1週間目で復帰した院長。
赤ちゃんを診療するたびに、患者である赤ちゃんは泣きます。
この泣き声に授乳中の母(院長)は反応。
乳汁分泌ホルモン・オキシトシンの働きでおっぱいが。
診察室で赤ちゃんの泣き声を聞くたびに反応した院長です。
今では笑い話ですが。
息子たちの泣く声を聞かなくなってどのくらい?
次の世代の赤ちゃんの声を聞く日が来るのかしら?
『孫が生まれました』の報告を聞きながら思います。