2019.12.3 まぶたがぴくぴく

『まぶたがぴくぴくする』と、心配になって来院される患者さん。

話を聞くと…

『突然起こるんです』

『1日に何回も起こります』

『数秒くらいの繰り返し』

『いつのまにか収まっているんです』

『収まっていたと思ったら、また急にぴくぴくするんです』

などなど。

 

自分の意思に関係なく、筋肉が勝手に動くことを『不随意(ふずいい)運動』と言います。

 

日頃の診療で多いのは、上記のような症状を訴えられる患者さんです。

片眼のまぶたに、限局的であることも特徴です。

目の周りにある眼輪筋(がんりんきん)の不随意運動で、正式には『眼瞼ミオキミア』と言います。

原因は、眼精疲労やストレス・寝不足…など。

ゆっくりと休息を取ると、知らないうちに症状が消えていることがほとんどです。

 

ただし、自己判断せず、眼科的な病気が隠れていないか、診察を受けてください。

 

片側のまぶたや口の動きがおかしいのは、『顔面けいれん』です。

まぶたがぴくぴくするだけでなく、顔半分の筋肉が過度に動く場合は、顔面神経の支障が起きている可能性があります。

原因の精査・治療のため脳外科へ紹介することが多いです。

 

本当の意味での『眼瞼けいれん』は、両まぶたに発症です。

『目が開けにくい』

『目を開けているとつらい』

『目を閉じていた方が楽』

挙句に、『運転が危ない』『歩いていてもぶつかってしまう』などなど。

 

中枢神経系の伝達異常と言われていますが、原因の詳細は不明です。

40歳未満では、向精神薬や睡眠導入剤内服が要因の一つとも言われています。

『眼瞼けいれん』の患者さんは、目が開けにくいだけでなく、まぶしさや不安症状も伴います。

ボツリヌス毒素のまぶたへの注射が第一治療法です。

ただし、数か月で効果が切れてしまうので、再度行う必要があります。

当院ではボツリヌス毒素の注射はしていませんが、『他院で注射したが再発した』患者さんは、効果持続期間が終了したためと考えられます。

また、ボツリヌス毒素が効かない場合もあります。

眼瞼けいれんの専門医は少ないため、かなり深刻な患者さんには、遠方へご紹介することもあります。

 

さて、先日(2019.11.19)『メーテレ』テレビの朝番組『ドデスカ!』で『まつ毛ダニ』のお話をしました。

『まつ毛のきわまで清潔に』とお話ししましたが、まつ毛内側にあるマイボーム腺(脂が出る)を詰まらせるのも良くありません。

目を温めるホットアイマスク(おしぼりでも可ですが冷めやすい)はお勧めです。

涙成分を安定させるので、ドライアイにも有効です。

さらに、リラックス効果が大きいです。

安眠できるので、院長は就寝時にも愛用中。

ストレスによる、『まぶたのぴくぴく(眼瞼ミオキミア)』にもお勧めです。

 

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2019.7.30 見えるのに見えない

小3のAちゃんが、学校からの受診のお勧め用紙を持って来院しました。

視力検査の結果、両眼D、D。

Dは0.4指標が見えないということです。

半年前に当院受診時は、右1.2左1.2でした。

もう一度、視力検査をしてみても、右0.1左0.1です。

矯正眼鏡を入れても、視力は上がりません。

念のため、点眼薬を使って、隠れている遠視がないかの確認もしましたが、遠視・近視・乱視とも問題ありませんでした。

眼球自体の問題はありません。

 

こういう場合『心因性視力障害』を疑います。

目の心身症の一つです。

ストレスが原因で、目に何らかの症状が出ることがあるのです。

視力障害として現れることが多いですが、色覚異常(色の見え方が違う)や眼瞼痙攣、チックとして現れることもあります。

 

眼科医ですが、念入りにヒアリングをします。

家族構成、学校での様子・友人関係、習い事などなど。

保護者と院長がお話をし、患者さんの話はスタッフが聞くことが多いです。

大人にとっては些細なことでも、本人にとっては重大なことであることが多々あります。

家庭内の問題では、『お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから』と、我慢することが多い、上の子の患者さんが多いように思います。

学校では、クラス替えなどで、友人と離れた、新しい友人が出来ない、授業についていけないからつまらない…など。

習い事でびっしり放課後のスケジュールが埋まっていますが、本人は乗り気ではないものの、親の期待に応えようと頑張っている場合。

なぜかピアノの時だけ楽譜が読めなくなる…など。

 

 

また『メガネ願望』から、視力障害を起こすこともあります。

クラスの子がメガネをかけ始めた…兄姉がメガネをかけ始めた…など。

メガネ願望の視力障害に、トリック(眼科医のさじ加減)を使ったメガネを処方すると…

次回、出来たメガネでの視力はバッチリ!です。

自分好みの素敵なメガネを、褒めてあげると、とても嬉しそうです。

『どこも悪くないのに~何で~』と決して本人に言ってはいけません。

 

心因性視力障害では、日常生活は見えるから生活に危険は及ばないのですが、いざという時(例えば視力検査)には、見えないのです。

 

保護者と面談をして、ストレスの原因の解決に向けての対応策や、時には点眼を使いスキンシップを図ることを提案します。

低学年のうちなら、『ぎゅ~』と抱きしめるのも効果的です。

 

たくさんの見えない(視力の出ない)小さな患者さんに向き合ってきました。

ワーキングマザーとして、決して出来た母ではありません(院長)が、自戒も込めてお話ししています。

子供が可愛くない親なんていませんが、良かれと思ってしていることや、無意識な行動や発言が、子供を傷つけていることも少なくありません。

親も精いっぱい、子供も精いっぱい。

時に、繊細な子は、心身症になってしまうこともあるのです。

親が反省することも多々ありますが、自分を認めてあげることも大事です。

特に仕事を持っていると、何か子の問題が起こったとき、『愛情不足?手間かけ不足?』と自分(親)が不安になりがちです。

後から振り返ると、子からずいぶん試練を与えられたけど、乗り切った!と思える日が来ます。(←院長自身のことです)

かかわる時間が少なくても、『大好き!』というメッセージと、子供の話を傾聴・共感することが大事です。

 

『だから、大丈夫です。必ず見えるようになりますよ』とお伝えします。

 

Aちゃんは、骨折でしばらく体育や課外活動ができず、疎外感を持ってしまったようです。

メガネをかけて、みんなが褒めてくれたことで視力も改善。

骨折も治り、元気に活動できるようになったら、メガネをかけることを忘れることも。

 

眼科医ですが、時々、精神科的アプローチをすることもあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

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