2022.9.6 新型アデノウイルス
新型コロナウイルス感染症が確認されてから、12月で丸3年に。
次々に変異株が現れ、日本でも第7波に至っています。
一時より、新型コロナ関連のニュースは少なくなったものの、まだまだ熱い毎日。
さて、眼科領域でも、新型ウイルスの話題が熱いです。
眼科医が最も注意しなければいけない結膜炎は『はやり目』
伝染性が強いので、学校伝染病にもなっています。
充血や目やにが主です。
その他、涙目とか異物感など。
上記の症状を訴えて患者さんが来院されたら、速やかに眼科医が診察します。
目やにも、細菌とウイルス・アレルギーでは性状が違います。
結膜(白目)の赤味具合はどうか、角膜(茶目)に変化はないかなどを診ます。
いつから?
発熱は?
耳前リンパ節の腫れは?
周りで似たような人は?
はやり目は、アデノウイルスが原因の結膜炎です。
アデノウイルスの型によって『流行性角結膜炎』と『咽頭結膜熱』(こちらは学校伝染病)があります。
風邪症状が強い(熱やリンパの腫れ)場合は、先に小児科や内科を受診されることもあります。
『はやり目』を疑う場合は、アデノウイルス検出キットにて確認。
小児科や内科では喉のぬぐい液ですが、眼科ではまぶたの裏を擦ります。
陽性ならば、点眼薬を処方し、人に伝染させない注意(家族全員に感染することもある)をし、1週間後に再診します。
何十年とはやり目の患者さんを診療して、気になっていたことがあります。
『はやり目』は、一般的には潜伏期が1週間くらいで、1週間後の再診時にはほぼ症状もなく治癒している例が多いのですが…
症状が2週間以上と長引き、回復まで時間のかかる例が、多くなってきました。
コロナウイルスと同様にアデノウイルスも変異します。
院長が眼科医になった頃は、『流行性角結膜炎』を起こすアデノウイルスの型、『咽頭結膜熱』を起こすアデノウイルスの型は分かっていましたが、数個でした。
それが…ウイルスの変異とともに、新型がいくつか出現。
その中でも、潜伏期間も長く、罹患期間も長引かせるウイルスが、合併症や後遺症も起こしやすいことが分かってきました。
目やにの他に、角膜にもキズが出来たり、結膜に膜様物が出来たり…の合併症。
やっと治癒しても、当院では数週間後の再診を勧めています。
後遺症で、角膜に点状の濁りが生じ、視力低下を起こすことがあるからです。
新型コロナウイルスに感染しても、特効薬はなく、軽症では対症療法(休養・鎮痛消炎剤など)が主になります。
アデノウイルスによる『はやり目』も、実は特効薬はありません。
ただ、他の感染を防ぐために抗生物質の点眼薬や、角膜の濁り(多発性角膜上皮下浸潤)の発生を少しでも抑えるために抗炎症の点眼薬を処方します。
そして…ちょっと熱いニュースが!
ヨードの消毒薬(うがい薬で馴染みがありますね)は、ウイルスの膜たんぱくを変性させ、ウイルスを死活化させます。
アデノウイルスを殺滅する点眼用ヨード剤が発売されました。
特に、新型アデノウイルスの『はやり目』に効果が期待されます。
症状の緩和や後遺症の発生低下など。
ただし、この点眼用ヨード剤は、医師が処方する薬ではありません(処方箋は出ない)。
要指導医薬品と言って、薬剤師が対面で販売調剤するものです。
眼科医が必要に応じて購入を勧めます。
点眼タイプのヨード剤、眼科医にとってはホットな話題です。
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