2021.8.31  パラを見る

東京2020パラリンピックが開催されています。

オリンピックはニュースで結果を知ったくらいでしたが、パラリンピックのいくつかは、中継で見ました。

『障がい者スポーツ医』としてはぜひ見なければ!

『障がい者スポーツ医』とは、障害がある人たちがスポーツを生活に取り入れ実践していくためのスポーツ指導者です。

日々の健康増進のためのスポーツから、競技としてのスポーツまで指導内容は多岐にわたります。

専門科目は多岐にわたるので、恐らく、各々自身の専門科を活かしたスポーツに関与することが多いと思います。

院長は眼科医なので、視覚障がい者スポーツに特に興味があります。

 

視覚障がい者の種目としては

ゴールボール

5人制サッカー

陸上

水泳

柔道

自転車(二人乗りで前に晴眼者、後ろに視覚障害者)

 

視覚障がい者と言っても、その程度は様々です。

視力の程度(全盲~0.1)や視野の程度によってクラス分けがなされます。

クラス分けをするのは、障がい者スポーツ医の中でもパラリンピック級の選手のレベルを判定できる上級の医師たちです。

障がいの部位(視覚や身体、知的)などにより、各種目ともクラス分けがなされています。

個々の障害が競技に及ぼす影響を出来るだけ小さくし、平等に競い合うために必要な制度です。

 

さて、一番気になっていたのは、ゴールボール。

ゴールボールは、視覚障がい者だけが対象で、交互に投球して相手のゴールを狙い、得点を競うスポーツです。

 

院長は、2回、ゴールボール実践体験があり、少し身近に。

まず、視覚障害の程度による不公平をなくすために、アイシェード(真っ黒なゴーグル)をします。

これで、まったく見えなくなります。

選手3人が横並びに位置するのですが、相手がどこにいるか見当がつきません。

鉛の鈴が入っている重さ1.25キロのボールを相手のゴールにシュートします。

ボールがガードされれば得点にならず。

ガードをくぐり、狙い通りにゴールに入ると得点が取られます。

暗闇の中で歩く、ボールを投げる(というより重いので転がす)…

音のするボールが向かってくるのはわかっても、正しい方向は?ガードするためにどの位置に向かっていけばよい?足取りも及び腰…

わずかな体験なのに、ぐったりの院長でした。

 

さて、実際の試合をテレビで見てみると…

投球の時点で、まったく違います。

体験の時は、選手はもう少しゆっくり投球していたと記憶していますが、勝負をかけた本番は全然違います。

ぐるっと回転させソフトボール投げ+砲丸投げも混じっているような投げ方(院長表現下手)で、すごい速さでバウンドして相手のゴールに飛んでいきます。

スピンの効いた時速60キロ程度ともいわれる重いボールをガードできるのは、圧巻です。

聴覚と触覚を研ぎ澄ますことで、ボールの軌跡や他選手の動きが分かるのでしょうか。

 

他の競技も見ましたが、障がいを克服して何かを成し遂げるのは大変なことです。

日常生活でさえハンディがあるのに、ましてやパラリンピックに出場など想像を絶するものがあります。

障がいを克服(残存機能・他機能を生かす・代替する、補装具を使う)して、健常人でさえ成し遂げられないスポーツの頂点に立ったパラアスリート。

 

パラリンピックを詳しく知り、大きな興味と知識を持って観戦できたことは、障害者スポーツ医として最初のステップ。

今後は、地域の障がい者スポーツの普及・指導に関わっていきたいです。

 

※関連記事もお読みください

→2020.3.3 障がい者スポーツ医

カテゴリー:健康 公センセの想い 眼に関すること

2020.3.3 障がい者スポーツ医

今年はオリンピックの年です。

そして…パラリンピックの年!

障害を持っても、尚、各種スポーツで頂点を目指すスポーツマンの祭典です。

 

『健康スポーツ医』

『視覚障がい者用補装具適合判定医』を持つ院長。

この流れから、次なるものは…と、『障がい者スポーツ医』の資格取得の講習会を受けてきました。

 

『障がい者スポーツ医』は、障がい者のスポーツ・レクリエーション活動に必要な医学的管理・指導・支援する立場にあります。

パラリンピック競技チームの帯同に必要な資格でもあります。

また、全国障がい者スポーツ大会の帯同も。

 

『障がい者スポーツ』と言っても、障がいの部位によって特性も大きく違います。

 

全国障がい者スポーツ大会では…

身体障がい・知的障がい・精神障がいに大きく区分されています。

さらに、身体障がいは、肢体不自由・視覚障がい・聴覚障がい・内部障がい(呼吸器・心臓・消化器・腎臓など内科系)に区分されています。

各障がいごとに、その原因や病態・スポーツをするにあたっての医学的特性や留意すべき点などを、学びました。

自分の専門科目については、かなり熟知していますが、それでもスポーツ指導となると大変難しい…

専門外の科目については、はるか昔の学生時代の上書き保存。

連日ハードなカリキュラムでしたが、非常に新鮮でした。

 

『ゴールボール』と『車椅子バスケ』の体験実習もありました。

 

『ゴールボール』は視覚障がい者のスポーツです。

アイシェード(目隠しのゴーグル)をして、音の出るボールを転がし、ゴールを狙います。

1チーム3名制です。

指導してくれる選手たちの自己紹介では、『生まれつき見えなくて…』『〇歳くらいで見えなくなって…今は、視野がこんな感じです』など多様な症状。

話を聞いて、きっとこの病気なのだ…と推測できるのは眼科医ならでは。

ゴールボールは、昨年の眼科学会での体験があるので、要領はわかるものの、真っ暗の世界は不安でいっぱい。

相手への声掛け、自分がどう行動するかなど、声での意思疎通のみになります。

 

『車椅子バスケ』は、その名の通り、車椅子でプレイするバスケです。

通常の車椅子ではなく、バスケ用の特注です。

ハの字に車輪が傾き、非常に軽量、スピードも出ます。

ぶつかってもガードがあるので安全です。

まず車椅子で自由自在に動く練習をします。

いかに腕で上手く漕ぐかが、速さの秘訣です。

 

にわかチーム(受講医師たち)に2名の選手が加わり、いきなり対戦。

選手たちのスピードの速いこと、速いこと。

もたついているその他大勢は置いて行かれ、早々とボールをドリブルしてゴール下へ。

受講生たちにボールをパス、シュートするチャンスをくれるのですが、車椅子からゴールにシュートするのは、困難極まります。

チャンスは与えられても、ちっとも届かない…

車椅子バスケは、脊髄損傷の人が多いので、下肢に力が入らす、上肢・腕の力が必要になります。

女子だと、ゴールシュートできるまでに1年くらいかかるそうです。

肢体不自由になって、初めてバスケを始めた人がほとんどだと聞き、驚きでした。

 

パラリンピック開催の目的は

『できない』ことに着目するのではなく『どうすればできるか』の視点に立って創意工夫すれば可能性が広がることを気づかせ、社会を変えること。

 

車椅子陸上競技選手のハインツ・フライ選手の言葉

『健常者はスポーツをした方がよい。障害者はスポーツをしなくてはならない』

 

リオ2016 パラリンピック 『Yes,I can』

YouTubeで検索してください。

きっと世界が広がります。

 

こうした小さなことから『障がい者スポーツ医』として働きかけていきます。

 

こちらもぜひ、ご覧ください

始めなければ始まらない

キャッシュレス、キーレス

日本眼科学会総会のあとの暗闇

カテゴリー:公センセの想い 眼に関すること

2019.4.23 日本眼科学会総会のあとの暗闇

日本眼科学会総会に参加してきました。

今回も、頭をフルに回転させ、新しい知見を得てきました。

患者さんに還元できるよう、折々にアウトプットしていきます。

 

さて、今回、初!学会スポーツ企画に参加してきました。

『アイするスポーツプロジェクト』と題した『ゴールボール』の体験会。

 

学会終了後、ワンピースから、スポーツウエア・運動靴に着替えて…結構本格的です(その分、荷物がふえました)。

 

さて『ゴールボール』とは…

視覚障碍者のために考案されたスポーツです。

選手は視力の程度に関わらず、アイシェード(完全遮光のスキーゴーグルみたいなもの)をつけて、3人1チームでプレイします。

コートの大きさは、バレーボールと同じ。

両端にサッカーゴールのような、ゴールがあります。

鈴の入ったボール(バスケットボールの大きさ、重さ1.25㎏)を転がし、ゴールに入れて点を競います。

守備は、ボールをゴールに入れられないよう阻止します。

 

さて、当日集まったのは男女約60人。

眼科医24人、その他医療従事者、視覚に関わる法人の人たち。

 

まずは、ルールを聞きます。

携帯など、音の出るものは電源を切っておかねばなりません。

おしゃべりも禁止です。

 

続いて、実際のプレイを見ます。

お手本を見せてくれる選手の人たちは、もちろん視覚障碍者です。

見えないとは思えないほど、俊敏な動きと、正確な攻撃と守備。

『本当に見えてないの?』と疑うくらいです。

それでも、コートのラインテープ(テープの下にタコ糸くらいの紐が敷いてある)の凹凸を足で確認している様子、ゴールの上の部分を手すりのように触って自分の位置へ戻る様子を見ると、『やはり見えてないんだ』と思いました。

静かな空間で、聞こえるのはボールの鈴の音だけ。

ゲームの間は沈黙の世界です。

 

さて、体験会始まりです。

まずは、肘にサポーターを付けます。

それから、腰を低くし、音が聞こえてきたら、瞬時に肘をついて横になる練習です。

これを何回か。

イメージ(院長勝手な)としては、テレビを寝転がって見る姿勢ですが、支えの肘を伸ばして、頭は下向きに、もう片方の手は頭の上に。

来たボールを、身体全体で受け止めないといけません。

首から下は、前向き。

顔は、ボールが当たると危ないので下を向いて、腕は頭の上下で伸ばします。

足で防御、体幹で防御、手で防御、といった感じです。

次にボールを投げる練習です。

意外に重い。

ただ、転がせばいいのだから…とはいうものの、選手のデモのように真っすぐスピード感ある投球は出来ません。

 

寄せ集め即席チームAからJで対戦が始まります。

院長は、Iチーム。

なぜか、ギャラリー席が設けられており、学会帰りの医師たちが観客に。

『恥ずかし~』

 

いよいよ、コートに。

アイシェードをつけると、暗闇の世界です。

合図と鈴音でボールが投げられたのがわかります。

ボールがこちらに向かっているのはわかるものの、それがどのような方向かは全く想像できません。

とりあえず、ポーズを作るものの、ボールが来たら壁になっていた(結果)くらいお粗末。

身体が自由に動きません、というか、見えないからどの程度動かしていいのか躊躇してしまいます。

隣の選手からボールを受け取るのも、ボールが眼前どのくらいなのか見当がつかず、ボールをポンポン(鈴が鳴る)されても取りに行けないもどかしさ。

沢山の人に囲まれていながら、遮断されている自分。

ハーフまでの5分がすごく長かったです(実際の試合はハーフ12分)。

 

障碍者スポーツは、他にもいろいろあります。

日本医師会認定スポーツ医の院長にとっても、貴重な体験になりました。

 

東京五輪ももうすぐ。

ゴールボールをはじめ、パラリンピックにもぜひ、興味を持ってください!

日本ゴールボール協会のサイトはこちら

 

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