2022.2.22 めんぼ・ものもらい・何?
目が腫れた、痛い…で来院される患者さんが多いのも、地域かかりつけ医の特徴。
まぶたの縁にある脂腺や汗腺に細菌感染が起こり、炎症を起こす病気を『麦粒腫(ばくりゅうしゅ)』と言います。
一般には『めんぼ』または『ものもらい』と言われます。
まだ顕微鏡で診察しても、発赤もはっきりしない程度から、まぶた全体が赤く腫れて触るだけで痛いという患者さんまで程度は様々です。
抗生物質の点眼薬をしっかり点せば多くは治ります。
ただし、化膿している場合は、切開して排膿します。
目(正確にはまぶたやまぶたの裏側)を切る!となると、子供の患者さんは大騒ぎとなりますので、何するんだろう?くらいの一連の流れでベッドの上に(もちろん保護者には説明)。
『ちょっとチクッとするからね~少し我慢してね~』と言いながら切開排膿、軟膏を入れて眼帯を。
『頑張ったね~』と褒めながら、保護者の元へ戻ってもらいます。
眼帯は頑張った証でもあり、付き添いの兄弟姉妹は、少し羨ましそうに(痛いのは嫌だけど)見ています。
まぶたの腫れは同じですが、しこりを伴うものは霰粒腫(さんりゅうしゅ)と言います。
まぶたの縁にあるマイボーム腺という脂腺に脂分がつまり、しこり(肉芽腫・にくげしゅ)が出来たものです。
しかし、細菌感染を起こすと、急性霰粒腫になり、麦粒腫と同様、腫れや赤み・痛みを生じるようになります。
しこりだけで来院される患者さんはほとんどありません。
痛みや赤みなどの自覚症状が出て来院されることが多いので、点眼治療をします。
小さいしこりは、時間の経過とともに吸収され目立たなくなってきます。
しこりだけが大きく残って、長期間引かない場合は、しこりを摘出する手術をすることもあります。
ところで『めんぼ』は、どうやら東海地方で多く使われているようです。
『めんぼ』表現使用率(全年齢層)は
1位 岐阜県51%
2位 愛知県48%
3位 三重県31%
院長は岐阜県出身で愛知県在住なので、普通に使っていましたが、全国区の言葉ではないようです。
『ものもらい』の語源は、物をもらうと治るという江戸時代の民間療法から。
目が腫れたとき、祖母(明治生まれ)と隣家に行って10円をもらった幼少時の記憶が。
今思えば、麦粒腫だったのでしょう。
民間療法とはいえ、点眼もせず治った記憶があるので、民間療法恐るべし。
もちろん、お勧めはしません。
以前、関西出身の患者さんから『めばちこ』と言われ、初耳。
方言色々です。
研修医の頃、めんぼ・ものもらいの外国人患者さんに、覚えた英単語『hordeolum(麦粒腫)』と説明したら『??』
『chalazion(霰粒腫)』ならわかるかと説明したらもっと『??』
どちらも医学用語。
一般的な styeと言えばよかったようです。
英語と言えども、医学用語まで知っているはずはないことに気づかなかった院長。
日本語だって、専門用語と一般表現とは違いますから。
そして、言葉も進化?しますし。
若い患者さんが、自分の眼の画像を見て
『まじ、キモイっすね』
『うあ~えぐいわ~』
自分では使わない若者言葉に苦笑しながら説明するオバサン院長です。