2019.5.28 ひかり・光 スペシャルゲスト
日本ロービジョン学会学術総会に参加してきました。
この学会の特徴は、眼科医・眼科医療従事者のみならず、福祉・教育・就労関係、視覚障碍者補装具メーカー、そして当事者(視覚障碍者)参加型ということです。
ですので、会場には、白杖を持った人たちも見受けられます。
さて学会の今回のテーマは『ひかり』(毎回テーマがあります)
招待講演のテーマは『光』
まさに映画『光』の音声ガイド担当『シティ・ライツ』所属のお二人(代表&映画に出演した視覚障害者の正子さん)。
『シティ・ライツ』はバリアフリー映画推進団体として、視覚障碍者も言葉(音声ガイド)で映画を楽しめる企画をしています。
ちなみに、映画『光』は河瀨直美監督・永瀬正敏主演の第70回カンヌ国際映画祭にも選出された秀作です。
将来を嘱望されていた写真家の雅也(永瀬正敏)が徐々に視力を失っていく中での、恐れや苛立ち、周りとの関係が描かれていきます。
特に、新人音声ガイド制作者の美佐子との関わりが秀逸です。
院長も感動した映画でした。
さて、講演の始めに、音だけ(セリフと背景雑音)の一場面が流されました。
『映画の、ある場面ですよ』
院長は一度映画を見ているのですが、全く映像が浮かびません。
セリフは聞こえますが、どんな状況で、誰と???
次に、映像がないまま、音声ガイドが加えられた同じ場面が流れます。
セリフの合間に
『呆然としている雅也』
『心配そうにのぞき込む美佐子』
『体が震える』
『瞳から涙がこぼれる』…
などの音声ガイドが入ることによって、イメージが記憶として戻ってきます。
最後に、実際の映画のシーンを、映像および音声ガイド付きで劇場通りに上映されました。
『あ~あの場面だった!』と再確認。
音声ガイドは、背景の言葉を聞きながら、視覚障碍者が映像をイメージできるように、風景や状況・登場人物の表情などをセリフの合間に挿入します。
出しゃばり過ぎず、難しすぎずの言葉を探して制作するのがとても大変とのこと。
実際の映画の場面でも、音声ガイド作成にまつわる場面が出てきます。
視覚障碍者が、見えないスクリーンの中に入り込められるよう、『映画を言葉で楽しめる』よう、言葉を考える大変さを感じました。
3人の演者(もう一人は眼科医)の話が落ち着いたところで、座長から『実はスペシャルゲストをお招きしております』
『?』『?』『?』(学会の抄録にはありません)
『永瀬正敏さ~ん!どうぞ!』
永瀬正敏さん登壇。
『え~!本物?本物だわ~!』学会場なので、誰も『キャー!』なんて声を上げませんが、動揺の波は伝わってきます。
映画で見る通りの人だ~!
朴訥とした語り口で、映画『光』での役作りへの過程(監督曰く『役を積む』のだそう)をお話しされました。
役になりきる…俳優という職業も、華々しいようで大変な仕事だということが伝わってきました。
DVDでの鑑賞をお勧めします。
自分なりの『光』を見つけ、感じてください。
院長も再度。
夜、ホテルの庭園で、思いがけず蛍を見ました。
小さな光が数個、暗闇の中を幻想的にふわりふわりと動きます。
今日、もうひとつのスペシャルゲスト。
小さな体から放つ小さな光の舞に、酔いしれる贅沢なひと時でした。