2024.4.9 目を見て頭が分かる?
患者Aさんが夕方来院。
めまいのお話から始まりました。
めまいから眼科?
よくよく聞くと、数か月前からめまいがあり耳鼻科に受診。
めまいのお薬をもらっているとのこと。
めまいは相変わらずだけれど、本日PC使用中一瞬見えなくなった。
これは眼科も関係しているかも?と受診。
よくよく話を聞き、まとめると…
耳鼻科受診の前に頭痛が発症。
内科受診。
鎮痛剤を処方してもらい、少し良くなったり、再発したり。
そのうち、めまいや吐き気も起こるようになり耳鼻科に。
お薬を処方してもらい、少し良くなったり再発したり…
様子を見ていたところ、本日目の症状が出現。
視力は両眼ともよく出ています。
眼圧も異常なし。
診察に入ります。
瞳孔異常や眼球運動異常はありません。
顕微鏡検査をします。
眼球の前方は全然問題ありません。
眼球の奥を見ます。
『あれ!?』(ここで診断はほぼ確定です)
視野検査と眼底写真撮影をします。
診断は
『うっ血乳頭(にゅうとう)』です。
脳から眼球に入る視神経の一番太いところ(乳頭)に、頭蓋内圧(脳の圧)がかかって、浮腫(腫れ)を起こしている状態です。
視神経は通常境界がはっきりしていて、ややオレンジ色をしています。
緑内障などで視神経が悪くなると、色も黄色~白っぽくなります。
逆に、うっ血乳頭の場合は、境界がなく赤っぽくなります。
うっ血乳頭の症状は、頭痛・吐き気・めまい・一過性の視力低下など。
脳圧が上がることで、症状を起こします。
検査結果が揃ったところで、Aさんに説明します。
原因は脳にあること。
脳の圧が高くなっている原因としては、脳腫瘍が最も多く、ほかに脳出血や水頭症が考えられること。
だから、脳外科に紹介状を書くので今すぐ行ってください。
夕方でしたが、緊急で脳外科受診をしてもらいました。
翌日返信が来ました。
悪性脳腫瘍を疑い、手術前提で緊急入院となったとのこと。
やはり…
たぶん…とは思っていたものの…
Aさん頑張って!
あとは脳外科の先生にお任せするしかありません!
眼球は脳から繋がっているにも関わらず、普段は命に関係ない目の病気がほとんどです。
見える・見えないは眼科医にとっても患者さんにとっても大きなことです。
しかし、それ以上に生きる・死ぬは、医師・患者さんともに大きなことです。
眼科医だから目しか見ない(通常は目だけで完結しますが)のではなく、眼科以外の勉強が今も役に立つときがあります。
科によっては古い知識しかありませんが、機会を見つけて上書き保存です。
うっ血乳頭から脳腫瘍がわかったAさんの例も、開業してからは初です。
滅多にない病気も、自分の引き出しに知識や記憶があってこそ患者さんに還元できます。
開業して、脳外科につなげた患者さんは、『脳動脈瘤』『脳梗塞』そして今回の『脳腫瘍』
いずれも、脳の病気と思わずに眼科受診され、診察検査結果から脳外科に紹介、緊急入院となった例。
眼科医も命を救うことがあるのです。
数か月後、ひょっこりAさん来院。
『帽子被ったままですみません』と前置き。
結果はやはり悪性だったとのこと。
取り切れるだけの腫瘍切除をし、放射線・化学治療をし、入院生活は数か月に及んだとのこと。
『ありがとうございます。助かって良かったです』
『頑張られましたね』
こうして色々な症例を経験し、患者さんから勉強させてもらっている院長です。
まだまだ精進中。
目の神様も背中を押してくださいます。
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