2021.6.22 食べながら偲ぶ
所用で豊橋へ。
豊橋市は東三河の中心都市ですが、名古屋市民にはあまり縁のないところ。
名古屋・豊橋間は、新幹線・JR在来線・名鉄が走っています。
今回はあの名物メロディー?の特急に乗りたくなり名鉄一択。
特急は、ビュンビュン速いし、座席もまずまず。
新幹線にはずっと負けますが、ここのところ急行以下の在来線乗車が多いので、特急でもとても新鮮です。
さて、豊橋行きが決まった時に、真っ先に浮かんだのはYさん。
Yさんは、当院開院間もない時期からの患者さんでした。
ホテルマンで、オフはバイクで旅するのが趣味の、院長と同年代の男性。
各地へ転勤後も、毎年花粉症の時期になると、名古屋に寄ったついで…(実際にはついでではなく、診療のために)と、顔を見せてくださいました。
ある日、新しい名刺を。
○○ホテル…
知らないな…
『豊橋に出来る新しいホテルの立ち上げに関わっているんです。完成したら、ぜひ!』
名刺は引き出しにしまいました。
翌年、花粉症の時期にYさんは来院されず。
忙しいのかな?今年は花粉症、他で治療してもらっているのかな?
まぁ、ここまでわざわざ来ることもないしね…
ある冬の日。
カルテの患者さんの名前を見てびっくり。
Yさんです。
『お久しぶりです』
『お元気でしたか?ごめんなさい、まだ豊橋に行く機会がなくて…』
一回り小さくなったYさん。
あれ?
『僕、仕事辞めたんです。実は、癌で…実家に帰って療養しています。
今、ちょっと元気になっているんで…でも、もうあまり持たないらしいんです。
今日は、知り合いとかに会うついでに、先生にも…って』
カルテの住所は関東に。
余命少しでも長く…と無言で願うばかりでした。
その時が最後のYさんの受診となりました。
そういう理由で、この機会を逃すべきではありません。
豊橋駅前のウエディングも出来る洒落たホテルです。
最上階のレストランでは、窓際の席を案内してもらいました。
遠くに海や山が見えます。
豊橋の街並みも。
眼下の路面電車が、豊橋を象徴しています。
高層の名古屋駅ビルからの光景とは違う、アーバン(urban)とルーラル(rural)が混じっているような温かさ、緩さ。
美味しい料理と景色を楽しみながら、Yさんを偲びました。
ホテルは2008年オープンとのこと。
そんなに歳月が経っていたのです。
過去に亡くなられた患者さんたちが、ふとしたことで浮かぶことがあります。
亡くなられたことを家族や施設からの連絡で知るので、まだ(そこそこ)お元気な姿しか思い浮かびません。
故人患者さんのご家族も、当院の患者さんであることが多いので、その背後(背後霊ではなく)に故人患者さんが浮かぶことはよくあります。
息子さん、○○さん(故人)にそっくりになってこられましたよ!
ご主人、奥さんの○○さん(故人)なしでも、元気になられてますよ!
生前、院長との診察室での小さなエピソードも思い出します。
院長の心の中だけで、ひっそりと偲んでいます。
駅で、名産のちくわ(CMでお馴染み…と思うのは院長世代)をお土産に。
ちょうど急行が来ました。
ホームはまばら。
先頭車両に乗ると…誰もいません。
シートの一番前を陣取り、前方の広い窓から眺めます。
運転士に近い視界で、特等席でした。
名古屋までずっと視線が外せないくらいのワクワク。
Yさんを偲ぶ特別な豊橋行きになりました。