2021.1.12 煮詰める・煮詰まる

当院の鏡開きは、今年も院長自作のぜんざいで。

スタッフみんなで楽しみました。

手前味噌ですが、じっくりと煮えた小豆そのものの味が生きている!が売りのぜんざいです。

お餅との相性は抜群!

開業以来、他人様に唯一お披露目できる一品になっています。

 

『いつも手間暇ありがとうございます』『美味しかったです!』『ごちそうさまでした!』などなどの声が院長へのお年玉。

 

昨年はYouTubeを見る機会が多く、ぜんざいも炊飯器や圧力鍋で作れるレシピを知りました。

『放ったらかし』がキーワード。

確かに手間は格段に少ないのです。

 

従来(院長)のやり方だと…

十勝小豆のより分け(形が不ぞろいなのは取り除く)

浸水(一晩以上)し、浮いた小豆は取り除く

1回目に、豆のしみ込みがよくなり皮も破れにくくなるように、びっくり水(冷水)を入れて温度を下げ、再び沸騰してから弱火で煮る

ざるにあげ、流水で洗い、あく抜きをする

再び、新しい水を入れ30分くらい煮る

小豆の柔らかさを確認、砂糖を入れる

甘味が小豆になじむよう、人肌まで冷ます

豆が柔らかくなるまで煮る

仕上げに塩ひとつまみ

 

書き出すと結構な手間だと思いますが、結局、今年も従来の方法で作りました。

 

普段の院長の生活は、常に、時間との勝負で過ごしてきました。

今もそう。

育児がなくなり、家事も減り…それでも、分単位で計算して行動する癖は抜けません。

自分の優先しなければいけないこと、したいことを上位にしたら、あとはいかに時短・手抜きをするか。

なのに…ぜんざいです。

どうして小豆は煮るのか…小豆缶で代用しないのか…

スタッフの期待もありますが、小豆を煮る行為が好きと言うことが大きい。

小豆を煮る一連の行為は、自分にとってのカタルシスになっているのではないかと思います。

小豆のことだけを考えて、無心に、作業をする。

柔らかな炎のぬくもりと、静けさの中の小さなぐつぐつ音。

優しい甘さのぜんざいの出来上がりとともに、自身の心も落ち着いていきます。

ぜんざいセラピーと名付けてもいいような…

 

この法則?を見つけ、先日『タルトタタン』にも挑戦してみました。

『タルトタタン』とは、フランスのタタン姉妹のアクシデントから生まれたお菓子です。

リンゴのパイを作るのに、間違えてタルト生地を敷かずにオーブンへ。

焦げるような匂いに気づき、慌ててタルト生地をかぶせて焼いたところ、美味しいタルトになっていたという逸話があります。

この話を知ったのは、高校生の頃読んだ洋菓子の由来の本から。

想像は膨らみましたが、岐阜はおろか、名古屋でも食べられるお店はありませんでした。

5年ほど前、ピカソやヘミングウエイが集ったパリのカフェ『ドゥ マゴ』の伝統を受け継ぐカフェが渋谷にあり、創業当時からの『タルトタタン』が名物であることを知りました。

思い立ったら…の院長。

プロが作る本物の味に30年以上の時を経て出会いました。

 

砂糖と無塩バターでキャラメルを作ります。

8等分にし砂糖をまぶしたリンゴを投入して、キャラメルと和えます。

あとは、ぐつぐつ煮ます。

汁気がなくなったら、冷まして、パイシートをかぶせてオーブンへ。

見た目はいまいちですが、やや焦げたキャラメルがマゴで食べた味に近いように思いました。

 

火にかけて煮詰めることで、自身の頭も煮詰まる(まとまる・終局に向かう)ことがこの年になってやっとわかってきました。

一年に何回か、自分に必要な時間です。

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2020.1.14 地域医療実習

今年度より、藤田医科大学医学生の地域医療実習の受け入れ機関となりました。

5年生への進級が決まった4年生、もしくは5年生がstudent doctor(学生医師?)として、地域医療機関(病院や開業医)に実習に来ます。

初の受け入れ第1号は、好青年のMくん4年生。

 

院長が医学生だったころとは違い、今は、カリキュラム全てが前倒しになっています。

4年生までに、基礎科目(解剖・生化学・薬理などなど)だけでなく、臨床科目(内科・外科・産婦人科などなど)も終了。

国家試験も前倒しで2月(院長の時代は4月)です。

 

藤田医科大学では4年生から臨床実習です(院長の時代・岐阜大は6年生のみ)。

国家試験のシステムも内容も激変しているようです。

30年なんて一昔どころではない期間、親子ほどの差がある学生を見てそう思います。

 

『〇内科のT教授に教わった?』

『はい、すごく勉強されていますよね』(そりゃそうです)

『大学の同級生なの』

『え~!?そうなんですか!?』

同級生の何人かは、大学教授に就任しています。

T君(教授)もその一人。

学生の立場からは『は、は~』と恐れ多い教授T君と、『は、は~(母)』みたいな実習先の院長(私)。

『月とすっぽん』ではありますが、双方、もうそんな年齢、立場なんだわ~

 

院長の傍で、診療の様子を見てもらいます。

当院は緑内障患者さんが多いので、院長自ら眼圧を測ります。

『教科書のその機械で測るの、初めて見ました!』

『こんな風に見える眼底カメラ(オプトス)、初めて見ました!』

初めてがいっぱい。

M君が持参した眼科の教科書は、今風のイラスト多しの廉価な本と、由緒ある『現代の眼科学』の第13版。

『お~!まだ、あるのね!』

院長室の本棚にある学生時代の『現代の眼科学』は第3版。

ここでも時代を感じます。

 

昼休みの往診も同行してもらいます。

眼科の往診は意外だったようですが、患者さんに会い、状態や病名を知ると納得。

 

開業医は、毎日毎日同じことの繰り返しのようですが、患者さんは一人一人違うので、全く同じということはありません。

尋ね方、診療の仕方、説明方法、薬の処方内容、世間話など、個々に対応できるコミュニケーション能力は大事です。

知識も、技術も、検査機械も、医師を続ける以上留まることなく更新していかなければいけません。

特に、個人の開業医は、自分で課さないと、進化していきません。

医療現場以外の体験も、プラスになることは多いので、好奇心もあった方がいい。

などなど、熱い?思いも、先輩医師として、語った次第です。

『患者さんとの距離が近いことに驚きました』

病院よりは、そうだと思います。

距離が近いことが、開業医の強みであり、地域医療を担う上で重要なことだと意識して、診療をしています。

 

M君との距離も縮まり、息子のように愛着がわいた1週間。

最後は、鏡開きのぜんざい(毎年の院長お手製)を食べて、『実習お疲れさまでした!』

 

どの科を選ぶにしても、モノになるまでは、辛くても諦めないで!

止めないで続けることこそ、医師の道が開け、更に続けることが出来ます。

M君、頑張って!

オバサン医師(院長)からのエールです。

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2019.1.15 小豆をコトコト

鏡開きに合わせて、今年も小豆を煮ました。

鏡開きの日の、午前診療終了後に出せるように用意。

前日に、待合室の鏡餅(中に切り餅が入っている既製品)を下げておきます。

入職し初めて食べるスタッフには、乾燥小豆から作ったことに驚かれます。

 

ふだん、時短料理専門の院長ですが、ぜんざいだけは特別です。

便利で安価な缶詰を調達せず、開院以来、自分で作っています。

分量も調理法も分かっているのに、25年前の料理雑誌の切り抜きを出してきて確認。

十勝産大豆を一晩水に浸すところから始まります。

一度沸騰させ、新しい水で再び煮ます。

小豆が柔らかくなったところで、砂糖を入れ、人肌まで冷まして、再び煮る。

『単純ですが丁寧に作業をする』に限ります。

 

鍋をコトコト火にかけている時間は、バタバタしている日常と区切られた非日常の静かな時間です。

考えること、思うことは色々…

 

必ず思い浮かべるのは、食べてくれるスタッフの一人一人の顔。

『おいし~!』って言ってくれるといいな。

『わ~い!』って喜んでくれるといいな。

希望と期待でわくわく。

 

子供たちが小さい頃は、『母さん(院長)のぜんざいは、(料理の中で一番)美味い!』と言って、おかわりもたくさんしてくれたものです。

ぜんざいだけで甘美な思い出に浸れる幸せな時。

今は、ぜんざいのみならず、母もあまり必要とされなくなったのですが…

 

先日の高尾山一人旅は、それを気づかせてくれた良い機会でした。

今年は今まで以上に、『公私とも興味・関心のアンテナが立てば、即出かける!』と決めたら、またまた夢想が広がります。

『卒母(流行りの母親卒業)』の時期?

 

鏡開き当日、『午前診療お疲れ様!』と、お餅を入れたぜんざいを振る舞いました。

スタッフの嬉しそうな顔を、今年も見ることが出来て良かったです!

息子たちが親離れをしつつある今、準家族のスタッフの存在こそが、丁寧に『ぜんざい』を作るモチベーションになっているのだと思います。

気がつけば、21年、21回。

院長が仕事を続ける限り、『小豆をコトコト』の鏡開きです。

 

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