2013.10.15 待合室の薔薇
先週は岡山で開催のロービジョン学会に参加してきました。この学会では、眼科医だけでなくコメディカル(眼科に関わる医療従事者)や教育関係者、視覚障がい者も多数参加されています。視覚からの情報が80%と言われる中で、残った視覚、もしくは視覚以外の感覚を生かしてよりよい生活を目指す手助けになる方法、手段を考えていきます。患者さんの何か不安なことに耳を傾けることからロービジョンは始まります。
岡山と言えば、思いだされるのが研修医の頃担当していたYさんです。遠く岡山から来院され、奥様も近くのホテルで宿泊され中睦まじいご夫婦でした。緑内障により視力・視野もずいぶん悪くなり、何回かの手術でも回復まではいかなかったのですが、当時は、ロービジョンという言葉も頭になく、ただただ眼圧を測ってお話をするだけでした。研修医の私に会うのをとても楽しみにしてくださり、それだけが少しお役に立てたことです。そして美術教師だったYさんが「見えていたときに描いたものだけど」とくださったのが、待合室に飾ってある薔薇の絵です。薔薇の絵を見るたび「初心忘れず」と戒めるとともに、今は亡きYさんのお顔が浮かびます。