2016.12.13 気づいてよ

週初めに引いた風邪が、3日『食べて寝る』療法でも全快しないまま…迎えた休診日。
幸いにも、委員会も医師会も、人と会う予定もない一日。
さすがに、この体調では、10キロのランニングも、ジムでの筋トレもご法度。
昼寝さえできない性分としては、一日ベッドでゆっくり休むのは難しそうです。

朝の家事の後は、ゆっくり新聞を読んで、読もうと思っていた本を開いて…
だらだらしていると、お昼ご飯。
チャッチャッとあるもので。
夕方の洗濯取り込みまで、まだまだ時間があります。

『掃除しよう!ルーティン以外のところを』
洗面所、浴室(トイレは家人担当場所なので保留)。
排水溝を掃除します。
浴室の床、壁面。
洗面台の扉、鏡。
お掃除ロボットが浸入できない、床の隅も拭き掃除。
かなりいい感じ。

奥のクローゼットにある、6年前の引っ越しで梱包したままの数個の箱。
開けてみると、当時は大切だった子供関係の道具、器具あれこれ。
今となっては、必要なし。
ゴミにGO。

続いて…と。
カーテンも洗っていない。
まずは、めったに入らない息子の部屋から…
ついでに、部屋の整頓もしておきます。
あれこれ触らず、床のものを片付ける程度。
最後に洗濯機の洗浄をして終了。

休養日のはずが…
『よく働いたわ~』
それにしても…誰とも話していない一日。

家人帰宅。
『風邪治った?』
『家にいたから、結構よくなった。ねー、今日何したと思う?』
『寝てなかったの?』
『すごく掃除した。お風呂でしょ、洗面所でしょ、それから、それから…
しかも、かなり細かいところまでやった』(と、得意げに事細かに話す)
『へ~』
『すごいでしょ!』
『すごい、すごい。でも、よほど暇を持て余していたんだね~』
『そうとも言える…』
ふだん、医師の仕事について家族に、仕事の大変さを気づいてもらうことはしません。
(たまに忙しかったことくらいは言いますが)
しかし、家事となると…専業でない分、ちょっと特別な家事は『したことに気づいて~』という流れになってしまう私。
自分にとって家事専業は、難しいな~と実感。

さて、息子は…
『部屋きれいになっとるやん』
『そうでしょ~他になにか変わってない?』
『ん?』
『カーテン匂い嗅いでみて』
『洗った?』
『そう、結構大変だった。気づいてくれると思ったのに~』
『そりゃ、気づかんわ』
『気づいてほしかった~』
息子にまでちゃっかりアピールする母。

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2016.12.6 子供の目やに

風邪の季節ですね。
院長は小さな風邪をもらっては、大きな風邪にならない免疫力をつけています。

さて、当院では小さな子供さんが多いのですが、主に『目やに』で来院です。
いくら女性医師と言えども、白衣を見るなり、多くは『ぎゃ~』『え~ん』と泣き出すのですが、診察は怠りなく。
目やにと一口に言っても、粘り具合、色、出方、白目だけなのか、茶目にも影響がないか、などを顕微鏡で見ていきます。
そして、時には、目やにの培養もします。

子供の場合、検出されるのは、多くは『インフルエンザ菌(ウイルスではない)』か『肺炎球菌』です。
どちらもその名の通り、風邪の原因となる菌です。
目がウルウルしていたり、鼻水が出ていたりと、風邪を引いていることが多いです。
『インフルエンザ菌』や『肺炎球菌』性の結膜炎は、就学前の子供の罹患が多いのですが、一緒に住んでいると、子供から感染することもあります。
いずれにしろ適切な抗生物質の目薬で、速やかに治ります。

しかし、他医から、『治らない』と言って来院される患者さんもいます。
話を聞くと『目薬、点せてない。点させてくれない』
それでは、治りません。
子供に点すのは大変です。
子供に協力を求めても、期待に応えてくれません。
でも、治療のためには点さないと。
よく聞くと、『点し方がわからない』
そんな時には、強引さはありますが、確実に点せるよう、図をお渡ししています。
寝ているときに点すのも手です。
黒目に入れようとせず、下瞼を引っ張って、赤目(結膜)に点眼するとうまくいきます。
小児の点眼は、院長がすることが多いのですが、その素早さに『早っ』と思われるお母さんも。

多くは軽い結膜炎ですが、稀に重症な結膜炎もあります。
たかが『目やに』と放っておかず、眼科受診をし、最短で治しましょう。

あの時、目やにで来た赤ちゃんが、もうすぐ社会人。
目薬の点し方もうまくなるもんです。

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2016.11.29 11月の終わりには

11月末は三男の誕生日。
どの母親でもそうなんだと思いますが、生まれた日、その前後のことは非常に強い記憶として定着しています。
前日何をしたとか、当日何を食べたとか…

三男妊娠出産については、当院の歴史(というほど大層ではないのですが)に関係しているので、よりインパクトが強いのです。

開院して間もない2年目、つわりをスタッフにさえ悟られないように、気を付けたこと。
もしや休診に?という不安を持たれないよう、妊娠していることを患者さんや周囲に悟られないよう、太りすぎず、妊婦の恰好をせず…としたこと。
安定期に入り、スタッフに妊娠を告げ、平常通り出産まで、診療を行う旨を伝えたこと。
臨月に入り、白衣の上から気づく患者さん(たいてい年配の女性)に、出産したらすぐ戻って診療再開しますよ、と伝えたこと。

お腹の子供には、どうか予定日に生まれるように声掛け。
そして予定日の2日前、朝食用に魚を焼いていたら陣痛が。
荷物をまとめて産婦人科へ。
幸い早い時間だったので家族全員集合。
陣痛が強まり、分娩室に入って10分で出産。
『猿が滑り台から逆さまに滑ってきたみたいだったね~』とびっくりした長男。

さて、出産後、浮かんだことは『今日は急きょ、休診にするしかない』
スタッフに連絡。
予定日より1週間の予定で依頼していた代診の先生には、少しずらしてもらうよう再依頼。
その手続きが済むと、一気に一人の時間(授乳はありますが)。
夜は病室でレセプトのチェック。
駆け抜けた一日。

クリニックのことが気が気でなく、3日で退院。
1週間後から通常復帰。

夜中の3~4時間ごとの授乳をした後、診療。
診療の合間にも、授乳タイム。
赤ちゃんの患者さんの泣き声にも反応して、おっぱいが出る始末。
乳汁分泌を促すオキシトシン(最近は幸せホルモンとも言われています)分泌全開!
幸い産後の肥立ちもよく、無事に診療継続。

誕生日のケーキにろうそくを灯す度、息子の成長に感謝、あの時の自分を自分で労う院長です。
もっとも今では、ろうそくは自己満足ですが。

若かった~
しかし、2度目はない(出来ない)と確信。

仮に今同じ状況だったら…
とても体がついていきません…
産休、育休の捻出考えます。
って、考えること自体、無謀です。

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2016.11.22 イケメンに赤面

いつもはつけないカーラジオをつけた途端、流れてきた曲に衝撃!
『ん?何の曲?』
曲の後半だったらしく、すぐ終わって『つけめんでした~』と番組終了。
以来、そのメロディーが頭から離れず。

ラジオを聴く機会もないまま、『つけめん』てどんなグループ?と調べることに。
『つけめん』は、『つけ麺』ではなく、『TSUKEMEN』でバイオリン2、ピアノ1の編成からなる男性3人組。
3人ともクラシックを専攻し、音楽大学を卒業。
ネットでどんどん検索していけば、いつのまにか『TSUKEMEN』について、にわか情報通に。
そして、なんと一宮市でコンサート開催予定が。
これは、聴きにいかねば!と、その日に何も予定が入っていないことを確認し、我が家の興行担当の家人に予約を依頼。

迎えた当日。
何と前から4列目!
周囲を見渡すと、意外におばさん、おばあさん。
あれっ!?
ファン層の年齢は高い?

始まったコンサート。
バイオリンとピアノ、正統なクラシック曲だけではなく…オリジナル曲、編曲ともジャズ調あり、和調ありと想像を超える音楽です。
激しい迫力のあるピアノとバイオリンの生音。
優しい伸びやかな音。
甘く切ない音も。
ラジオを通して衝撃を受けた『あの曲』も。
『こういう題名だったのね~』
歌詞のない曲だけに、曲を背景に色々な感情の自分がいる感じ。
あっという間の第一部終了。

『ホールでCDを販売しています。握手会の特典があります』とアナウンス。
あの曲が入っているアルバムをゲットせねば。

『買ってきたの?』
『うん、初めて聞いた曲が入っていたアルバムがあったから。握手会は、どうでもいいけどね』

第2部も素晴らしく、アンコールも3曲。

終了後『握手会にご参加の方は、ホールでお並びください』

『せっかくだから、ちょっと見て来ようかな~』となぜかダッシュ。
何と3番目。
1番2番の人と、待っている間、世間話。
『後ろだったから、顔見たいな~と思って』
『握手会初めてなんで、並んでみました』
TSUKEMEN知識を披露し、名古屋から来たことを言うと『すご~い』(二人とも地元の人たちでした)

待っている間、なんて言葉かけをしようかドキドキ。
迎えた握手会。
イケメンのTSUKEMEN。
TAIRIKUさん(さだまさしさんの息子)、SUGURUさん、KENTAさんと順番に握手。
あっという間。
でも、コンパクトに会話も出来…

『顔あかいよ』と家人。
『そ、そう?』
年甲斐もなく、火照ってしまった自分。

最後に誰かに手を握られたのはいつ?
『若返り』コンサートでした。

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2016.11.15 二人で1個

『今年はどこへ行きたいですか?気になる所ありますか?』
恒例の誕生日ドライブのお誘い。
『う~ん、国産のシードル(りんごの発泡酒)が、信州で買えるらしいんだけど…』(と、さりげなくリクエスト)
数日後…
『長野に行きます。温泉タオルを忘れずに。厚着してくださいね』

片道2時間余。中央道を進んで飯田の次が松川町。
道中、スタッフお手製のミルクティーやお茶の温かいサービスに、癒されます。
女子ならではの気配り。

昼食の前に、まずは温泉。
外気の寒さと、露天風呂の熱さがいいバランス。
水風呂を除き、8種類の湯に順番に浸かれば、話をしながらだと、あっという間に1時間。
またもや、湯あたり寸前。

体が温まった後は、お楽しみのワイナリー。
林檎ジュースやワインの飲み比べ。
『飲んでくださいよ~帰りは私が運転しますから』
一口に林檎といえども、単一種で飲み比べると、味の違いは歴然です。
『BBQ用に1本買っていきましょう』と、シードルお買い上げ。

さて、待ちに待った『BBQ&りんご狩り』へ。
林檎畑の真ん中にテーブル。
ここで、ウエルカムドリンクのシードルまたは林檎ジュースで乾杯!
一人当たり250グラムの『りんごで育った黒豚』と、大盛り野菜!そして焼きそば。
『野菜が高いのに、すごい量ですね』と主婦感覚。
北風にさらされ、服を着こんで、ジュウジュウ焼けた肉と野菜をほおばり…
『秋冬のBBQもなかなかいいですね』
あっという間に、先ほどのキンキンに冷えたシードルも空に。
『どんどん食べようね~』
『残さず食べましょう~』
『結構な量ですね~』
と、完食。

『では、りんご狩りをしますか』
『苦しい~』
『お腹パンパンです』
ここまで来て、りんごを食わずして…
『お尻が赤いりんごが甘いって』
ほろ酔い加減で、りんごの品定めをします。
穫れたて食べ放題を満喫!のはずが、みんな、一人りんご半個でギブアップ。
あとは、お持ち帰りになりました。

素敵な誕生日プレゼントをありがとう!
スタッフに感謝です。

お知らせ
11月16日(水)CBCラジオ「丹野みどりのよりどりっ」夕方16時~18時
「オトナのいろどり~オトナのクリニック」に出演いたします。
また、無料アプリ「radiko」で1週間再生するそうです。

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2016.11.8 いつまでやる?

医師会の班会がありました。
診診(診療所と診療所)連携を図る意味で、毎年企画されます。

今回、会場までは4キロ。
日課の夜のウオーキング代わりに、歩くことに。
さすがに着替えは持っていけず、ワンピースにスニーカー。
リュックにハンドバッグとパンプス。
てくてく、てくてく。
歩く速度が速すぎたのか、一番乗り。
あの格好を、見られなくてよかった。

定刻通り開会。
医師会長の挨拶と乾杯があり、その後は、一気に和やかなモードへ。
参加者の年齢は、46~77歳まで。
こういう場合、率先して話す人がいて、聞き役の人がいて…
参加女性は3人。
私を含め誰もが、仕事では、むしろ男性よりも話すのでしょうが、こういう状況では、専ら聞き役、相槌役になります。
女医会の時は、会話の内容も話し手も、あっちこっちに飛ぶのですが(全員がおしゃべりする)。

個々の自己紹介は、クリニックの近況報告から趣味まで多彩。
自分は、最近況として、歩いてきたことも報告。

さて、定年がない開業医たち。
『いつまで続けるか?』の話題に。
70オーバーの面々が参加されているということは、70歳なんて目じゃない!てこと。
『いつまでやるかな~?』
『どうしましょうね~?』
最高齢の先生の基準とは…
1.天変地異が起こったら辞める
2.病気をしたら辞める
3.患者さんに必要とされなくなったら辞める
『診療時間を減らしたりしても、患者さんが来院される限り、やりますよ』

医師になって4分の1世紀。
しかし、医師会の先生から見たら、まだまだ若造。
『患者さんから求められる』ことこそ、豊かな老後なのかも。

『顔の見える関係』を構築して、地域医療ますます頑張ります!

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2016.11.1  就学時健診にて

就学時健診シリーズも終了。

毎年個々に健診終了後、視力検査結果と、病気の有無をコメントします。
『視力検査の結果、BとCだったので、もう一度眼科で検査してもらってくださいね』
『ものもらいだと思うので、眼科にかかってくださいね』などなど。

お母さんたちの反応は、
『えっ!マジ?〇(子供の名前)やばいじゃん!』と反応する人もいれば、
『ほんとですか?〇ちゃん、ほんとに見えなかったの?』と子供に問い詰める人も。

毎年このようなリアクションが多いのですが、今年は意外にも『あ、はい。わかりました~』と、多数、淡白なリアクション。
(もっと反応して~。突っ込んでくれていいんだから~)と思いつつ、
『近いうちに、ちゃんと受診してくださいね~』と念押し。

さて、健診では、どこの小学校も、児童がお手伝いをしてくれます。
眼科だと、『やってきた就学児童と保護者を教室内へ連れてきて、用紙を記入してもらい、また廊下まで帰す』という一連の仕事です。
女子ペアは、さすがに要領を得るのが早く、仕事がない時も、静かにおしゃべりをしているくらい。
もう、小学生というより、中学生のお姉さんに近い感じ。
一方、男子ペアは、仕事はしっかりしてくれますが、暇な時は、床を滑ってみたり、じゃんけんをしたり、じゃれあったりと落ち着きません。
よくも、そんなに動くことが出来るものだな~と感心しつつ眺めていると、つい笑みが。

息子たちの小さい頃にそっくり。
じっとしていられず、道をダーッと走って行ったと思えば、また戻ってくる(それなら、始めからゆっくり歩けばいいのに)
かと思うと、下を見て歩くので、ちっとも進まず、虫やゴミみたいなものを見つけると、得意そうに見せる。
暇があれば、静かにしておらず、誰かにちょっかいをかけたり…
家では、まるで動物園のお猿さん。

女の子がいる家は、落ち着いているんだろうな~、楽だろうな~と、思ったことも度々。
そんな息子たちも、大きくなるにつれ、さすがに余計な行動はしないようになってきました。
女性(母)から見たら、まだまだ効率悪いのですが。

男の子って、みんなそうなのよね~
要領悪いし、手間暇かかるけど、そこが可愛くもあるのよね…
子育てもそろそろ卒業…の今、懐かしく思い出しながら、係の男子を眺めていました。

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2016.10.25 素敵なおひとり様

知人のNさん来訪。
今年79歳。
北海道から、金沢、岐阜の私の実家、名古屋の我が家への日程。
母が仕事で知り合って40年来の付き合いのNさんは、私とも40年来の知り合い。

当時は、東京の洗練されたキャリアウーマン。
仕事もバリバリして、趣味のために外国まで行って…
東京から送られてくるクリスマスのチョコレートは、都会への憧れを強くさせました。

独身の頃には、遊びに行って泊めてもらい、親には出来ない話をし…
とうとう我が息子たちまで、単独で、遊びに行くようになり…と親子3代にわたる付き合い。
退職してからは、故郷の北海道で、自然生活。
時々2時間かけて札幌の街へ。

名古屋観光に、どこへ行こうか?名古屋城?熱田神宮?と考えていたら、『動物園』のリクエスト。
『オラウータンが見たい。あと、いればコンドルも』
名古屋が誇る東山動物園へ。
オラウータンもコンドルもバッチリ。
話題のゴリラのシャバーニやコアラにも感激。
日曜日なので家族連れとカップルばかりの中、杖を片手に、すたすた次へ次へ。

夕食は、ビールを片手に大盛り上がり。
PCや携帯を持たないにも関わらず、息子たちの若い世代の話題にもついていけるNさん。
『規則正しい生活リズム。社会との関わり。色んな決定も自分だけど、責任も自分』
が、おひとり様のコツのよう。

ちゃきちゃきして、好奇心旺盛で、素敵なNさんとの、有意義な再会でした。

結婚していても、いずれは誰も『おひとり様』になります。
『過大な依存は、やめよう…』と言ったら
『だったら、スマホくらい、自分で使いこなせよ。俺ら息子に頼らずに』
スマホが新しくなって、操作に苦慮している最中。
『そんなこと言わずにやってよ~』
あれあれ!?

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2016.10.18 苦手な音はいろいろあるけれど…

苦手な音はいろいろありますが、そのひとつが
『ウィーン、ウィーン、キーン、チャキーン』の音。

人が通る時には、一旦中止されますが、通り過ぎるとすぐさま再開。
サングラスをして走っているときはまだしも、眼鏡をはめていない時には目をつむりたくなります。

夏の間に、伸び放題に生えた草を刈る、草刈りの音。
時折、コンクリートに当たる金属音。

苦手になった音。

研修医の頃、担当になった紹介患者さん。
細隙灯顕微鏡で観察すると、水晶体にきれいな金属片が刺さっており、水晶体は濁ってきています。
『外傷性(けが由来の)白内障』
すぐ手術の準備となり、40代後半のOさんは、水晶体を取り除き人工レンズ挿入術が施行されました。

担当医(一番下の)としては、患者さんに状況を詳しく聞きます。
『草刈り機で作業中、痛っ!て感じたけど、そのまま作業を続けたんだわ。
でも、念のため、眼科に行ったら、すぐ大学病院に行くように言われてびっくり』
回転している刃先が、コンクリートや石に接触したはずみで欠け、その破片がすごいスピードで目に飛入したと思われます。
角膜(目の表面)だと、もう少し、ゴロゴロの自覚症状が強いのでしょうが、かえってスピードはあったために、自覚症状に乏しかったのでしょう。

一方、角膜の鉄片は、サンダーなど研磨作業中に入りやすいです。
仕事柄、男性が多いのですが、こちらも意外に、入ってすぐ来院される患者さんは少ないように思います。
そのため、鉄片の周囲が錆びていることもよくあります。
水晶体に入ると、外来では手術はできませんが、角膜の場合は外来で手術します。
特別な針やドリルで、鉄片および錆びを取り除きます。
いかにきれいに取り除くか、取り除かないといけないかを研修医の時に学びます。
角膜異物の患者さんは、保護メガネをしていなかった場合が多く、はめていたら防げたのに~と、毎回思いながら除去しています。

『目に針を入れる』と聞くと、怖そうですが、角膜は薄いようで厚みはあり、顕微鏡下では、鉄片の入っている層まで針を進めます。
今でこそ、治療上、角膜に針を刺すことは何でもない私です。
しかし、子供の頃読んだ、谷崎潤一郎の『春琴抄』で佐助が目を突いて失明する場面が強烈すぎて、目自体が怖かったのは事実。
それなのに眼科医を選んでしまいました。

『保護眼鏡かけとらんかったのが悪いけど、草刈り機、もう使うのやめるわ~』
と言って、0さん無事退院。

続けて入院したS君も同様の怪我。
Oさん、S君と貴重な症例で、勉強させていただいた研修医。

学んだことは、病気だけでなく…
『草刈り機は恐い』ということ。

草刈り機の音を聞くだけで、Oさん・S君の目をいまだに思い出します。

そして…苦手な音からは、逃げるが勝ち。

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2016.10.11 目を引いた目

ウィンドウディスプレイが素敵で、ふらっと立ち寄った雑貨屋さん。
かわいいハンカチや洒落たアクセサリー、シックな器など、女子なら憧れてしまう品々をあれこれ品定め。
どんどん奥へ進むと、ガラスのショーケースが。
ブローチやネックレスなどアクセサリーの並ぶ中、
『なんで、こんなところに!』と、目を引いたのは、目、目、目。
正確に言えば『義眼』です。

『義眼』とは、ケガや病気などで、眼球摘出(眼球をそのままの形で取る)や内容除去(眼球の中身だけ取る)を行った眼に対して使用される『人工の眼』のことです。

患者さんの片眼の形状・整容に合うように、カスタムメイドで作成されます。
そのため、パッと見ただけでは、義眼なのかわからないことがほとんどです。
通常は自分で、はめ外しをし、洗浄などのケアをしながら使います。
高齢などで、自分で管理できなくなった場合は、眼科医など医療者が洗浄したり装脱着を手伝います。

もう一つの『義眼』は、アイバンク登録者が角膜提供をした後に使用されます。
エンゼルケア(死後処理)の一環として用いられます。

駆け出しの頃、眼球摘出は、研修医の担当でした。
アイバンク登録者様が亡くなった連絡を受けると、研修医は一人で故人宅に伺います。
自分の番が来ると、ドキドキしながら直行したものです。
人気のない部屋で眼球摘出を行い、もう片眼を見て、整容的に合う義眼を義眼セットから選び装用します。
眼球は保存瓶に入れ、大学病院に持ち帰る頃には、角膜移植を受ける患者さんが入院の準備をしています。

『すみません、あの~これって義眼ですよね~』
『そうですよ。
長野の骨董屋さんから入ってきたものです。
ガラス製でドイツのものです。
珍しいですよ。
もちろん未使用のものです』

義眼の歴史は古いようですが、特に19世紀ドイツで研究がすすめられたようです。
その後、アメリカや日本でも研究が進められたそうですが、ガラス製が中心でした。

現在は、日本の医療用義眼はアクリル樹脂で、生体に馴染みがよく、体に害を及ぼすことはありません。

『買われる方、あるんですか?』
『結構お好きな方いらっしゃいますよ。並べて飾ってみたり。』
『!?!』
『こうやって並んでいると綺麗ですよね~』
『!?!』
『ちなみに1つおいくらなんですか?』
『25000円です』
『!!!』

何にでも価値は付くのに驚き。

それにしても…
6個が3列。
目を引く18個の目が、こちらを見ています。

見ているのは私
見られているのも私…

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