2020.6.2 高齢ドライバーの運転行動
某医療雑誌に『高齢ドライバーと医療』の特集。
ふだん、眼科医として、高齢患者さんと接することが多いのですが、必ず『運転していますか?』と尋ねるようにしています。
裸眼視力が悪くても、矯正視力(メガネ視力)が出るなら、眼鏡の使用を勧めたり…
矯正視力も出なければ、原因を見つけ、手術で回復できそうな病気なら手術を勧め…
手術で回復できそうにない病気であれば、運転をしない方が良いと告げ…
視力は良くても、視野の狭い・見にくい部分がある患者さんには、気を付けるポイントをアドバイスし…
加えて、名古屋市の『もの忘れ検診』(65歳以上対象)も実施しています。
高齢者事故には特徴があるそうです。
『運転行動に必要な情報の意味を読み取り、判断決定する情報処理に時間がかかる』ので
『複雑な状況下で、迅速な行動が要求されるとき』に問題が生じます。
結果、交差点での事故・右折事故が多いことに。
また、加齢による目の能力低下は、身体的には一番影響する要因です。
『動体視力の低下』(例・急な変化を捉えられない)
『暗順応の低下』(例・トンネルに入ったときに目が慣れない)
『幻惑の増大』(例・対向車のヘッドライトにくらむ)
さらに、過去の経験に固執し、自分の技能の衰えを受け入れず、若い時のままだと信じて運転する人もいます。
しかし、こういうマイナス面をカバーするために…
『自分には運転適性上の欠陥がある』と自覚した(これが大事!)高齢ドライバーば、それを回避しようと『補償的運転行動』をとるそうです。
具体的には…
70歳以上の80%以上の運転時間帯は昼間(9時から17時)。
→昼間より低下する夜間視力、ヘッドライトの眩しさや、暗所の見落としでの事故を回避。
同90%以上の運転エリアは、居住市町村と隣接市町村のみ。
→近場の慣れた道路なら、危険個所も熟知しており、事故を回避。
1週間の走行距離は、40歳代以下の半分以下。
→走行距離が短ければ、事故に遭遇する機会を回避。
高齢の患者さんの運転状況を聞いても、確かに、多くの人が上記のような運転行動をしています。
自分の能力低下を素直に受け入れられる高齢者は、柔軟性が高く安全に自動車を運転できる可能性が高いそうです。
そして院長も気づくと、少しずつ『補償的運転行動』が始まっていました。
脳機能も身体機能も運転特性も特別衰えているわけではありません。
それでも20代の頃よりずっと慎重に、落ち着いて運転するようになりました。
良い意味で、自分の運転技能を客観的に見られているのだと思います。
若い時、どうしてあんなに高速道路を飛ばしたんだろう?
追い越し車線ばかり走っていたんだろう?
渋滞だからって、なんでイライラしたんだろう?などなど。
お陰で?ゴールドカードが続いています。
自主返納の患者さんも増えてきました。
名古屋市は、公共交通機関も整備されています。
地下鉄やバスを使ってこそ、行きやすい場所もたくさんあります(当院もバス停横です)。
運転を辞めて、新しい発見や感動が見つかるチャンスが増えるかも!?と思うのもいいですね。