2022.12.7  押したり引いたり

担当の職場(スーパー)に近づくと、頭の中でテーマソングが流れるようになった産業医(院長)です。

 

1年に一度は健康診断結果の判定をします。

該当職場で労働は可能か、否か。

制限付き(時間・配置転換など)で労働は可能か、否か。

あとは、健診結果から、『要受診』対象者をピックアップします。

昨年、『要受診』と指摘した人が、今は『治療中』になっていると、ほっとします。

高血圧・糖尿病は特に自覚ないまま見過ごされやすいので、早期発見早期治療が大事です。

眼科健診項目は、視力・眼圧までがほとんどで、眼底検査まで健診で受けている人は少ないです。

眼科医としては、40歳過ぎたら、自覚症状がなくても眼科受診を!と言いたいところ(実際啓発しています)。

 

 

労災事故は、発生防止に努めていますが、担当する店舗でも一件発生しました。

50代女性スタッフが、飲料を積んだ台車を引いている際、誤って台車の車輪に足の小指を巻き込み骨折。

普段、台車(スーパーやホームセンターのカートではない)を使用したことのない院長は、早速、職場巡視で確認。

バックヤードに台車は多数。

荷物が載っているのも、空のも。

『これで小指骨折するんですか?』

カートを前後に動かしながら店長さんに尋ねます。

別のカートの場所に連れて行ってくれます。

2リットルペットボトル6本1箱が12箱。

上下2段に乗っています。

合計144キロ。

該当女性に近い院長(体系は不明)。

かなり重いながらも、車輪がついているので、押す方向にも引く方向にも動きます。

 

『引いていた時の事故でしたよね?』

普段、台車やカートは押すイメージの院長。

スーパーでは、品物の量(かさ)も重量も多くなります。

押して動かすと、前方不注意や、重量で走行の制御が効かず、お客様に被害を及ぼす恐れもあるそうです。

だから、自分のほうへ引きながら商品を運ぶのだそう。

しかし、重量のある台車だと、引いた時の重さで、すぐに静止しない場合があり、今回もこれに該当(かつ、バックヤード通路がやや暗かった)したとのこと。

自分も144キロ荷重の台車をやや勢いをつけて引いてみます。

結構なパワーの台車を受け止めないといけません。

小指が下敷きになったら折れるかも!?

その後、念のため、安全シューズの支給もすることになりました。

 

台車を引きながら浮かんだのは、視覚障害者を誘導する体勢。

クリニックでは、眼の悪い患者さんが多く来院されます(眼科なので当たり前)。

中でも、視力や視野がひどく悪く、院内を歩くにも、介助が必要な方がいます。

もちろん付き添いの方がおられますが、誘導の仕方は色々。

目が見えないから…と、患者さんの手を引っ張って進行方向に後ずさりしていく介助者が多々。

これは、介助者も進行方向が見えないので危険ですが、患者さんにとっても引っ張られる行為は不安です。

見えていないのに、どんどん前に行く不安。

視覚障害の方を介助するには、原則、横に立つことです。

肩もしくは腰に手を添えて、声をかけてゆっくり進む。

白杖で介助者付きの場合は、介助者の肩に手をかけて後ろを歩くことが多いです。

その際も、介助者は、歩行のペースや障害物などを知らせる必要があります。

 

明日から、スーパーで台車を見かけたら、運搬方法と荷重を見てみようと思います。

今回も、新しいことを知った産業医業務でした。

 

 

 

 

 

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2021.11.30  オバサンのおかげで…

先日、地下鉄で街へ。

途中まで文庫本を読み、スマホに切り替え…

知らぬ間にウトウトしていたようです。

停車駅の駅名表示にハッとして、『あれっ!?もう丸の内?』と、隣に話しかけます。

院長の顔をまじまじと見たのは、眼鏡をかけた60代と思われる年上オバサン。

誰?

当然向こうも、このオバサン(院長)どうしたの?と驚いた顔。

日曜日の夫との外出モードになっていたよう。

『失礼しました!家族と一緒に出掛けていたと勘違いしまして…(そんなことある?)』冷や汗。

『そうでしたか。それより、乗り過ごされなかったですか?』

『名古屋なので大丈夫です』

2駅の間、なぜか話が盛り上がってしまったオバサン同士でした。

年上オバサンは、桑名集合のウオーキングに行くそうで、お勧めのコースを教えてくれました。

楽しいエピソードになったのは、隣がお姉さんオバサンだったおかげ。

もし、隣が○○だったら違う展開が…また妄想で遊べそうですが、失態には注意です。

 

寝過ごした一件で、忘れられないのは、三男のハプニング。

当時小学1年生の三男。

スイミングクラブの送迎バスは、大人で徒歩15分の学区外停留所まで。

しかも、時間は、当院の診療時間開始後です。

1年生になったばかりの子供一人でお迎え場所まで行かせることは、当時、心配で出来ませんでした。

仕事をしているために、送迎バスの停留所まで連れて行って乗せるだけの時間が取れない歯がゆさ。

わずかな隙間時間を助けてほしいと思っているワーキングママは今も多いはずと思います。

 

対応策として、自院の傍の停留所から市バスに乗せることにしました。

送迎バスより早く出ることになりますが、診療前にバス停に一緒に行き、乗車を確認することが出来ます。

乗車時、運転手さんに行き先を告げる

運転手さんのすぐ後ろの席(最前列)に座る

2つの決め事です。

走り去るバスに手を振って、午後の診療に臨む院長でした。

 

ある日の診療中、受付から電話の取次ぎがありました。

出てみると、オバサン(恐らく60代~70代)。

『○○(息子)君のお母さんですか?』

『はい、何か?』

『今○○君に代わりますね』

『○○ちゃん!?どうしたの!?』

『うんとね~新瑞橋まで来ちゃった~』

 

オバサンの話によると…

その日は遠足の日だったので、疲れてバスの中で眠ってしまったそう。

降りるべき停留所はとっくに過ぎて、終点で降りるオバサンに気づかれたという始末。

息子は、思わぬ展開に泣きべそ。

家の電話番号は覚えていなかったけれど、クリニックの名前は言えた息子。

オバサンが公衆電話から当院に電話をかけてくれました。

かくかくしかじか…

『では、折り返しのバスに乗せますね。○○(乗車場所)のバス停で降ろしてもらうよう、さっきの運転手さんに言っておきますね』

『お手数おかけしました。よろしくお願いいたします』

 

ドキドキ…

無事に息子は戻ってきました。

オバサンのおかげ。

母は安堵と自責の念。

 

あの時の出来事は、息子にとっては大事件。

今もしっかり覚えています。

もちろん母もしっかり覚えていてますが、思い出すたびに胸が痛むエピソードです。

『あの時は~』と笑い話にしてくれる息子に、働き続けてきた母は救われます。

今日30日は三男の誕生日。

大人になっても、母にとっては小さいままの息子が心の中にいます。

 

オバサンのおかげで…

そんな日常の一コマに登場する、名もなきオバサンになれたら…と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2021.11.16 目が黄色い!?

日常診療で結構多い訴えのひとつは、『眼が黄色い』

医学生の時は、眼が黄色い=黄疸=肝機能障害と覚えたものですが、医療も発達し早期発見早期治療の現在、少なくとも日常診療で黄疸を見つけることはありません。

しかし、患者さんの中には、『黄疸では?』と問診に付け加えている場合も。

 

気にして来院される患者さんの多くは女性です。

茶目(角膜)の3時、9時方向の白目(結膜)が黄色っぽくなっています。

やや隆起している場合もあります。

『瞼裂斑(けんれつはん)』と言います。

結膜に限局し、角膜には及ばないのが特徴です。

病気ではないので、治療の必要はありません。

例えて言うなら『眼のしみ』

紫外線の曝露が要因とされています。

加齢により、紫外線の曝露量が蓄積され多くなるので、30代くらいから見られることも。

 

ただし、瞼裂斑に炎症が起こり、充血や痛みが出れば、瞼裂斑炎(けんれつはんえん)となり、炎症を抑える治療をします。

また、瞼裂斑は時として、ドライアイの症状を悪化させます。

瞼裂斑が大きめのドライアイの人は、涙が瞼裂斑方向(3時、9時)に流れていきやすい(盗涙とも言われます)ので、ドライアイ症状が悪化しやすくなります。

治療の必要がない旨を伝えると、安心される一方、長年(多くは加齢)の紫外線曝露と知りショックを受ける患者さんも。

院長自身は、意外にも、瞼裂斑を認めません。

眼科医30年、専ら暗室での仕事が奏功しているのかも?

 

実際、中学生を対象に、石川県の内灘町と沖縄県の西表島で瞼裂斑の出現を比べたスタディがあるのですが、より紫外線の強い西表島では中学生でも瞼裂斑が認められた報告があります。

さらに、アフリカでは、出現率が高くなっています。

 

さて、茶目(角膜)に白っぽい出来物が…と来院されるのが『翼状片(よくじょうへん)』です。

瞼裂斑と同じ位置(多くは鼻側)に出来ますが、白目(結膜)の一部が、角膜に侵入してきます。

自覚がないことがほとんどですが、大きく侵入してくると、充血や異物感を伴います。

さらに、角膜中央に向かって進行すると、乱視が強くなってきます。

翼状片は何年、何十年もかかって進行します。

しかし、乱視が強くなってきたり、黒目(瞳孔)と茶目(角膜)外側との真ん中くらいまで侵入したら、手術を勧めます。

翼状片の原因も、紫外線の曝露と考えられています。

 

 

病院時代には、瞼裂斑が主訴の患者さんを診ることはありませんでした。

重症疾患や、希少疾患が多くを占めます。

開業して、地域のお医者さんになると、ちょっとしたことでも相談に来院されます。

治療の必要がないものについては、心配ないとお伝えしますが、共感と安心を提供することも大事だと思っています。

 

オバサン(院長)になって、眼科医経験・人生経験を積んだ分、共感できることは多くなりました。

年を重ねるのも悪くないと思うこの頃。

オバサンだけどオバサンじゃない!のモットーで。

(このニュアンスわかってもらえますか?)

 

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サングラスどう?

 

 

 

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2021.11.9  もはやお母さんではない

就学時健診の時期です。

近隣の小学校3校を受け持っているので、自転車で出かけます。

 

毎度のことながら、校門には、習い事のチラシ配りの人が。

数年前までは『お母さんですか?』と聞かれたものの、今は声もかけられません(当たり前ですが)。

 

この秋から読み始めた源氏物語(現代語訳)で、主人公・光源氏は40歳で孫を抱くシーンがあります。

65歳くらいの尼君(明石の御方の母)に至っては、十分品よくふるまっているようだが、もうろくして耳もよく聞こえない様子(と書かれています)。

はるかかなた、平安時代は、寿命も短い分、人生の営みも早かったのでしょう。

現代は、結婚出産も遅くなったとはいえ、院長の年齢なら『おばあさんですか?』と聞かれて『そうです』と答える人もいます。

健診の介助に付く若い先生は、息子たちと同世代。

早い家系なら、おばあさんです。

 

担当する小学校は全て視力検査をしてから、眼科の健診になります。

教室に自分で入ってこられる子、母親と手をつながないと医師の前に立てない子、入り口で泣いて入ってこられない子、診察の前で急に泣き叫ぶ子などなど色々です。

しかし、入学後の学校検診では、ほとんどの子は問題なく健診を受けられます。

ほんの半年ほどですが、1年生になり心にも成長が見られます。

ルールに従うことも、多くの子供ができるようになります。

1年生と2年生、2年生と3年生など、学年による心身の成長差はいつも感じることです。

 

今回視力が出なかった子(B/C/D)には、近日中に眼科での再検査を勧めます。

また、気になる眼の症状(斜視や眼の病気)がある子も、眼科の受診を勧めます。

『はい、わかりました』という保護者。

『ホントに見えなかったの!?』と子供に詰問する保護者。

『ふ~ん』と全然気にしていない様子の保護者。

保護者も色々です。

 

視力は、本人の見え方なので、再検査したときに異常はないかもしれません。

しかし、遠視や近視・乱視や何かの眼の病気がある場合もあります。

異常がなければ『良かったね』

異常があれば『早めにわかって良かったね』

 

就学時健診で視力D/Dだった患者さんが来られました。

少し遠い地域からの来院です。

強めの近視がありましたが、どんな度数を入れても矯正視力が出ません。

本当に近視なのか(子供は、見かけ上の近視ということがあります)、眼の奥に異常はないのか、精密検査をしました。

すると、見かけ上の近視で、実際には近視ではありませんでした。

また、眼の病気は何もありませんでした。

視力は出るはずなのに…

トリックを使って視力検査をすると、ちゃんと1.0まで出ました。

急を要する眼の病気はないこと、心因的な要因があること、視力は出ることをお母さんにお話しして経過を見ています。

『大丈夫!』

『安心して!』

お母さんによくかける言葉です。

 

先日81歳で校医をしておられる先生とお話しする機会がありました。

いまだに、自院の診療も。

81歳から見たら、まだまだ自分(院長)は若造ですが『お母さんですか?』と聞かれる年でもなし。

定年が来るまで、学校医頑張ります。

 

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2021.11.2 身代わりどじょう

信心の浅い院長ながら、寺社仏閣も訪ねるのは好きなミーハーです。

しかし、眼科医ゆえ『目』に関するご利益処には、一番関心があります。

学会先でたまたま見つけたお寺。

スタッフが見つけてくれたお寺。

患者さんが教えてくれたお寺。

その度に、当院の患者さんの眼病平癒を願い、お守りをいただき、院内に。

もちろん、眼科医(院長)が診断治療の道筋を示し、患者さんが点眼・通院順守の前提あってのプラスαですが。

現代医学が発展しても、治らない病気も多々。

しかし、現代医学だからこそ、少しでも進行を遅くしたり、不自由さを最低限に出来る治療を、医学的根拠を持って提示できます。

 

久しぶりに、見つけた『目』のご利益処。

しかも、縁日が開催される日が、たまたまの休診日。

この日を逃したらいつ行けるか…

決行すべし!

 

目的地は、富田林(大阪府)の瀧谷不動明王寺。

 

新幹線・近鉄経由で。

駅からは徒歩15分とのこと。

グーグルマップを用意するも、人の大きな流れが。

付いていけば間違いなさそうです。

お参りに向かう人は、平均年齢70歳超。

ウォーキングではないので、緩い服装、足取り。

縁日なので、出店も多く、のぞきながら歩いて行けます。

関西弁の話し声が良いBGMです。

豆・寿司・炊き込みご飯・野菜果物・こんにゃくなど食べ物。

洋服・帽子・靴下・タオル・靴・食器などなど。

全部合わせると、よろづや(雑貨屋)が開けそう。

 

目的の『瀧谷不動明王寺』に到着しました。

「日本三不動の一つ」といわれ、目の病気にご利益があるとされています。

いつものように、患者さんの病気平癒を願い、「晴眼守」のお守りを。

 

ここには、本堂に参る他に、色々な建物があります。

 

今回の目玉?は、『身代わりどじょう』

お不動様に目を助けてもらおうとお願いする際には、どじょうを持って参り、それを瀧谷の川に放してお願いすれば、このどじょうの眼が自分の眼の身代わりとなり、眼病から助けてもらえると伝えられています。

言い伝えでは、この川に放たれたどじょうは、すべて片眼は失明して白くなっているそうです。

お不動様がどじょうの姿となって、自らの片目を捨てて身代わりになってくれるからだそうです。

昭和の初めに、お坊さんが調べたところ、川には片眼の白いどじょうばかりだったそうな。

 

眼科医としては、どじょうが、遺伝性の角膜混濁をきたす病気に罹っていたのではないか…とも思うのですが(罰当たり)。

ヒトだったら、○○、○○などなど…と、角膜混濁をきたす病気とその原因を考えてしまうのも、職業柄。

 

信心が足りないながらも、どじょう流しをしてみます。

缶に入ったどじょうの稚魚が並べられています。

一つ選んで購入します。

お願いを込めて、樋からどじょうを優しく放流します。

そこから、下の川に下っていきます。

小さな浅瀬ですが。

 

お願いを背負って大きくなってね。

 

神聖な場で、浅草のどぜう鍋、安来のどじょうのから揚げ…浮かぶ院長は、本当、信心より煩悩(反省)。

 

眼病以外に『芽の出るお不動様』と言われ、勉学、スポーツ、芸事、商売などにも御利益が。

また、縁日の日、経木は当日の護摩行で唱えてもらえます。

そのため、多くの人で賑わうお不動さんのようです。

 

『晴眼守』で患者さんの顔が少しでもほころんでもらえたら幸いです。

院内におまつりしてあります。                           

 

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2021.10.26 恋です!変です?

「恋です!」

10月から始まったラブコメディードラマ。

新聞番組欄の案内に惹かれ、見ることに。

 

弱視で盲学校に通う主人公ユキコと純粋(かつ短思考)なヤンキー少年・森生が出合い、それぞれを理解しあい、惹かれあっていくというストーリー。

 

白杖を持ち、点字ブロックを歩いているユキコ。

ある日、ユキコの進行先の点字ブロック上に座って、他のヤンキー達とたむろしていた森生。

ユキコの白杖が森生に当たったことが出会い。

恋の始まりです。

 

あり得ない設定ではありますが、若い二人のラブコメディは、『視覚障害』というハンディも、重くならず。

 

弱視と言っても、盲学校に通うレベルになると、視覚障害者認定を受けているはずです。

私たち眼科医(障害者認定資格要)は、認定のための申請用の診断書を書きます。

数年後に変化する病気(回復もしくは悪化)なら、〇年後に再申請が必要になります。

全盲の場合は、等級が変わることはありません。

 

名古屋市では、小学校により弱視学級が設けられており、院長の受け持ちの小学校の一つでは、数年前まで開級されていました。

盲学校まで行くほどでもないけれど、教科によっては、特別な配慮が必要な場合です。

年一回、生徒の現状について、教育委員会・盲学校・弱視学級併設学校関係者(教師・眼科医)で会議が開かれます。

弱視学級は、該当者がいなければ閉級になります。

 

さて、ユキコは、白杖を使い颯爽と点字ブロックを歩いていきます。

白杖は、自分の先に障害物がないかを確認するので、障害物や物の位置を把握するのに有用です。

 

携帯電話や時計は音声で。

映画も音声ガイド付きのを利用します。

目が見にくい人にとって音は大変重要です。

そのため、雑音が多いところは、聞きたい情報を取り出すのに苦労します。

 

おかずとのコントラストがはっきりする食器の色、指を切らないようガードを付けたり材料とのコントラストがはっきりしたまな板。

その他、いろいろ日常の工夫が出てきます。

 

そのような視覚障がい者あるある話は、案内人として、当事者でもあるお笑い芸人の濱田祐太郎さんが解説(ドラマにしては珍しい)してくれるのも興味深いです。

 

森生に『ユキコさんは普通ですよね。俺に比べて…』と言われ『私が普通?』と聞き返します。

森生にとっては、弱視であろうが、社会(学校)生活をきちんと送っているユキコは、まさしく普通。

二人の身長差が大きく、声が届きにくい解決策として、自分(森生)の身長を縮める方法が見つからず、ハイヒールをプレゼントしてしまう森生。

考えなしではありますが、その一途さが見ていて微笑ましいです。

 

白杖を持つことは普通じゃなくなる。

中途失明の方はそう思う人が多いです。

自分は普通じゃなくなるんだ。

でも、良くも悪くも普通って何?

 

かなり視覚障害が進んでいても、白杖を希望されない方もいます。

白杖は、進行先の障害物を予測するものでもあり、周囲に配慮を促し、自身の安全を守るものでもあります。

ドラマで使用されているものや、折りたたみもあり、状況に応じて使用することも可能です。

白杖を持つことは、視覚障がい者として自分を認めること。

白杖を持つ=障害を受容。

 

重くなりがちなテーマを、明るくコミカルな恋愛ストーリーで描いたところがすごい!

まずは、楽しみながら、興味を持ってもらえれば。

オバサン(院長)、このドラマは見逃せません。

変です?

 

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2021.10.19 阿房列車

比叡山の大阿闍梨様の法話は大変ありがたいものでしたが、院長にとって印象的だったのは、千日回峰行でお堂に籠っておられた時、はるか遠くの特急『サンダーバード』の音で時刻を推定した話。

全然、仏教には関係ない…

信心が足りないことを改めて自覚します。

 

それにしてもそれ以降『サンダーバード』が気になりだし…

乗りたい!乗りたい!

用がなくても乗ればいいじゃないか…(内田百閒・第一阿房列車)

といっても、『サンダーバード』は大阪から金沢・和倉温泉の区間です。

元は『スーパー雷鳥』(ちなみに雷=サンダー・鳥=バード、雷鳥はGrouse)

東海人には縁のない列車、停車駅です。

 

通常、名古屋からは新幹線で大阪に行きます。

最短50分、あっと言う間です。

ですが、『サンダーバード』に乗りたい一心で鉄道路線図を見ていると…

名古屋から特急『しらさぎ』で敦賀まで。

敦賀から『サンダーバード』に乗り換え大阪へ。

『サンダーバード』に乗れます!

敦賀の乗り換えが出来るだけスムーズな『しらさぎ』と『サンダーバード』を探します。

そうすると、出発が早くなるので、朝の30分節約として新幹線を加えることにしました。

名古屋から米原を新幹線『ひかり』

米原から敦賀まで『しらさぎ』

敦賀から大阪まで『サンダーバード』

名古屋から大阪まで約3時間の旅です。

 

こんなにわくわくする大阪行きは初めてです。

『ひかり』はあっと言う間に米原へ。

米原で停車中の『しらさぎ』に乗り換えます。

『しらさぎ』は、金沢の学会などで幾度も使っていますが、米原で進行方向が反転するため、自分たちで座席の向きを変えないといけません。

 

敦賀まで約20分。

ホームを変えて『サンダーバード』を待ちます。

向かいのホーム椅子には、恐竜のオブジェが座っているのでぎょっとしてしまいました。

若干の遅れもありましたが、『サンダーバード』がホームに入ってきます。

白い車体に青の線が入り、速そうな白い鳥のエンブレムが描かれています。

列車の内外とも、『しらさぎ』よりきれいで新しい気が。

ちなみに『しらさぎ』は白い車体に青とオレンジの線が入っています。

田舎の風景は大きく変わりませんが、滋賀県に入ると琵琶湖の西側を走ります。

湖を眼前(左斜め前)に見ながらの走行に興奮。

『高僧の修業となれば、こんなはるか遠方の電車の音も聞こえるくらい聴覚も研ぎ澄まされるのだ』

比叡山近くの駅や線路を走りながら、そんなことを思います。

 

京都に停車し終点大阪へ。

米原、敦賀と地方の駅と一転して、大都会大阪に到着。

いつもの大阪着とは違う感慨深さ。

 

お昼ご飯を大阪で。

 

帰りは、最後のお楽しみが。

サンダーバードと並ぶ、乗ってみたいけど機会がなかった列車。

近鉄特急『ひのとり』です。

 

近鉄の始発・難波駅も初めてです。

『ひのとり』の車体を見て、『サンダーバード』の格好良さも一気に飛んでしまった程スタイリッシュ。

全体が紅炎色の車体に金色火の鳥!

幸運にも1号車2列目のプレミアムシートが取れたので乗り込みます。

座席の広さといい、リクライニングシートと言い、想像を超える快適さ。

どうぞ、くつろいでくださいな…と言わんばかり。

入って来る乗客の感嘆の声が次々に聞こえます(ほとんど初乗車のよう)。

 

さて、出発。

走行もとても滑らかで静かです。

中2階なので、運転手さんはやや下側で運転。

前方の景色が大きな窓から現れ、どんどん行き過ぎていきます。

背もたれがあるのに、前のめりで前景を見つめてしまう院長です。

奈良県に入ったあたりから、あちこちで寝息が。

乗客大爆睡、いびきもあちこちから聞こえる事態。

2時間8分かかりますが、休養(睡眠)を取りたい人にはぴったりかも。

終点近くになると、天井が深海のようにライトアップされ、名古屋到着です。

 

4つの新幹線・特急を制覇した贅沢かつ阿呆な旅。

限られた休みの日に達成した我流阿房列車でした。

 

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2021.8.17  法話有り難き

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2021.10.12 目の愛護デー

10月10日は体育の日と、今も連想する昭和世代の院長ですが、目の愛護デーでもあります。

10/10を縦に並べると眉毛と目に見えるからです。

 

愛護デーにちなみ、眼の健康について。

 

子どもの視力は悪化傾向にあります。

学校での視力検査で、裸眼視力1.0未満の学生は年々増加。

2020年度では小学生約30%、中学生約60%、高校生では約70%弱の割合です。

もっとも、1.0以上だからと言って、遠視や乱視が隠れているかもしれませんし、近視なのに頑張って裸眼視力を出している場合もあるので、ひとつの目安です。

片眼だけが視力不良の場合も、気づかないことが多いので、『受診のお勧め』をもらったら必ず眼科受診してください。

 

近視は、近くにピントが合いやすく、遠くがすっきり見えない状態です。

近視進行につれ、眼球の奥行(眼軸長)も長くなり、強度近視の眼球はラグビーボールのような形状です(ふつうは球状)。

 

遠視は、遠くが見やすいのではなく、遠くも近くもピント合わせをしないと見えない目です。

近くを見るときのほうが、ピント合わせの力を大きく使うので、近用作業(読書や勉強)に疲れたり飽きやすいこともあります。

遠視の程度によっては、裸眼視力がよくても、眼鏡装用を勧めます。

 

乱視は、茶目(角膜)の縦と横のカーブが違っていて、ピントの距離が合う距離が違っている目です。

ほとんどの人は、多少なりとも乱視があります。

患者さんが自己申告で、『私、乱視があるんです』と言われる場合も、問題になる程度とそうでない微小な乱視と様々です。

眼科的に問題になるのは、乱視を入れないと矯正視力が出ない場合。

一般に角膜はほぼ円形をしていますが、乱視が強いと楕円のイメージです。

 

 

弱視は、視力が育っていない眼の状態を言います。

生直後の赤ちゃんは、まだ視力がほとんどなく、その後周囲の刺激を受けて、視力が発達します。

3歳児健診、就学時健診は節目の検査です。

健診で受診を勧められたら、必ず来院してください。

早く発見することで、視力の成長は可能です。

タイムリミットは8~9歳なので、弱視治療の有効期間は限られています。

 

学童期には、近視と診断されることが多いのですが、原因は『遺伝』と『環境』です。

強度の近視は、眼軸長が伸びている(ラグビーボール状)ので、身長と同様、遺伝によるものは大きいです。

眼軸長は成長により伸びますが、伸び率に差があります。

また、近年は、端末による近用作業(PC、タブレット、スマホ、ゲーム)が増え、屋外活動が減る傾向にあるため、環境要因も大きくなっています。

実際、昨年のコロナ渦での一斉休校期間に、子供の近視は、ずいぶん進行しました。

 

20/20/20ルール。

20分端末を見たら20秒以上20フィート(約6メートル)遠くを見ましょう。

明るい部屋で作業をしましょう。

目が乾燥しないよう、意識して瞬きをしましょう。

寝る前には、見ないように。

睡眠リズムの乱れになります。

太陽光での屋外活動も有効です。

学校の休み時間や体育だけで十分時間は確保できます。

強い日射しでなくても有効です。

 

近視の研究は、近年どんどん新しい知見が報告されてきています。

近視が強くなるに従い、網膜剥離、緑内障になりやすくなります。

強度近視だと、近視のない人に比べて、網膜剥離は22倍、緑内障は14倍の発症率です。

 

学校医として、地域のかかりつけ医として、診ていた子供さんたちも、もう立派な成人。

そのお子さんたちがやってきます。

デジタル端末で何でも調べられる昨今。

眼も心も不安になりやすいから、目の前の眼科医に聞いてくださいね。

カテゴリー:眼に関すること

2021.10.5 しどろもどろ

新型ワクチン接種当番は秋になっても続きます。

秋のゴルフラウンド用に買ったウエアも、近々のラウンドは未定。

こんな秋晴れの日に、ワクチン当番。

人の多いワクチン接種会場に、新しいゴルフウエアで出務です。

誰か見てくれるかな~?

座って医師用ビブスを着て予診。

誰も見ないわ、気に留めないわ(当然)。

ゴルフウエアで、ペンを握る院長です。

 

初回は、地元小学校で、高齢者優先接種。

基礎疾患がある人が多いことや、地元ゆえに当院の患者さんもいて、予診で長くなることも。

その後、年齢が徐々に下げられ、若年でも持病のある人の優先接種が始まりました。

月ごとに、接種者の層が変化していきます。

 

今回は、12歳以上の若年者が大多数に。

ほとんどの人は、基礎疾患はないので、病気に関してはほぼスルーです。

しかし、今までになく、ベッドで寝ての接種希望が。

ワクチンごときで?と思うオバサン院長ではありますが、繊細なお年頃?(若者)は、安心のためにもベッドで。

若い人ほど、不安・心配の心情が見受けられます。

 

『医師と話がしたい』と付箋を付けてきた女子高校生。

付き添いの母親はすでに接種済みです。

ネットで、ワクチン接種否定の記事をたくさん見て、接種すべきか迷っていると。

ワクチンの開発の話、接種のメリット・副反応。

打たない選択をした場合起こりうること、などなど。

『○○は絶対ですか?』

『医学に絶対はないから、最後は自分で決めてね』

『もう少し考えます』

予診ブースを後退して悩むこと30分。

『来春、受験なので、その時コロナに罹って後悔したくないので、打ちます』

本日接種可能にサインして、接種ブースに進んでもらいました。

『受験頑張って!』

 

接種後のブースでは、何人かの若者が気分悪くなり(いわゆる脳貧血)、内科医師が駆け付ける場面も何回か。

人生経験が浅い分、不安も大きいし、迷走神経も過剰に働いてしまいます。

 

今回は、外国人も多い印象を受けました。

ベトナム・インドネシア・タイ・フィリピンなど東南アジア系。

バングラディッシュ・インド・パキスタンの南アジア。

中国・韓国。

ほぼ英単語を交えた日本語の日系アメリカ人もいました。

何人かに接していると、顔形・姿・名前の表記から、どこの国の人か見当がつくようになってきました。

最初は出身国を聞いていたのですが、そのうち『○○国出身ですか?』と尋ねると『そうです。よくわかりましたね』と言われる始末。

ほとんどの人が、日常会話には困らないよう。

子どもだけが日本語に堪能で、こちらの内容を両親に母語で伝える場面も。

インドネシアでは、苗字がないことを知ってびっくり(教えてもらった)、豆知識も。

 

『先生、英語大丈夫ですか?』

いきなり、係の人が尋ねてきました。

『少しくらいなら…』

『では、今から英語しか話せない外国の人お連れしますね』

え~!?

30代の浅黒い髭の生えた男性。

問診票は、もれなく問題なしです。

なのに日本語話せないの?(厚労省HPに各語の問診票あり)

まずは、お決まりの『どちらのご出身ですか?』(拙い英語で)

『パキスタン』

接種は問題ないけれど、接種に当たっての注意事項や確認をしないといけません。

相手の話の聞き取りは出来るのですが、話そうとすると焦ってしまいます。

しどろもどろながら、相手は理解してくれてやれやれ。

半年ほど前に、英会話の勉強を少々再開したもののこのお粗末さ。

トホホ。

 

若者と外国人。

院長、人生経験は半世紀あっても、まだまだドキドキは健在?です。

 

過去の記事もご覧ください「2021.6.8 こんな所で…」

カテゴリー:健康 公センセの日常の出来事

2021.9.28 契約更新

学校医は、学校保健委員会や就学時保健委員会など、年に何回かある委員会に出席します。

必ず校医として発言の場が設けられるので、意見や見解を述べます。

 

さて、産業医は安全衛生委員会の出席があります。

安全衛生委員会とは、その事業場における衛生に関する問題について関係者が話し合いをする場のこと。

労働安全衛生法に基づき、常時100名以上の労働者を使用する規模の事業場で、月1回以上開催することになっています。

 

担当するスーパーでは、委員長は店長さんです。

安全管理者・衛生管理者・メンタルヘルス推進担当者・産業医が会社側のメンバー。

労働者側からも何人か参加します。

水産部門・畜産部門・農産部門・総菜部門…など、各部門ごとに。

 

嘱託産業医の院長は、毎回出席は難しいので、その時は前回の議事録を見て、店長さんに質問します。

スーパーという職場柄、スタッフの皆さんは、エプロンや長靴・コックシューズのままで委員会に駆け付けます。

全店舗の労働災害の報告が人事部から毎月入って来るので、その報告から始まります。

 

毎月、スーパーで多いのは転倒事故です。

高齢の従業員の転倒が多くなると、ケガも重症化しやすくなり、休業も長期化しやすくなります。

転倒の主な原因は、滑り・つまづき・踏み外し。

 

水産部門の水・氷や総菜部門の油など、スーパーは滑る場所が多いので注意が必要です。

アイスクリーム搬入時に床が濡れてしまい、高齢のお客さんが転倒してしまったという事例も。

濡れ・汚れを見たらすぐ清掃を。

あわせて、お客さん(主に子供)が、店内でする嘔吐することも結構あるそうなので、迅速な処理を。

冬場はノロウイルスにも注意ですが、『汚物処理ツールボックス』と言う専用キット(初めて知った!)があるので、手順通りに使用すれば良さそうです。

買った商品(大物)を忘れるお客さんにも驚きましたが、店内嘔吐事故?多数発生にも驚き。

 

以前の巡視で指摘した切れの鈍くなったかぼちゃカッターは新しくなりましたが、他店での巻きずしカッターでの切創事例を聞くと、鋭利すぎも怖い。

気を付けて取り扱ってほしいものです。

労災事故は極力起こりませんように。

 

食品を扱うので、作業場の温度管理も重要です。

冷蔵庫や冷凍庫から商品や材料を取り出す際には、事前に作業場を冷却しておくことは、毎回、店長さんが繰り返し言うことです。

一般家庭なら、冷蔵庫からエアコンの効いていない室内に出して調理、と言うことはよくあります(院長も)。

しかし、職場では、たとえ少しの時間でも、まず作業場を冷やしておくことが徹底されます。

食中毒の発生は致命的なので。

 

店内はいつもひんやりしています。

売り場は24度。

しかし、揚げ物作業場では27度にもなります。

火傷しないように、長袖長ズボンキャップなので、まめな水分補給を勧めます。

一方、水産作業場は18度。

制服だけでは、体の芯まで冷えてしまうので、支給のインナーを着用しての作業です。

同じスーパー内でも、かなりの環境差があり、個々の健康を維持しながら、作業を効率に進めるために勘考しています。

 

院長も産業医として、意見を求められます。

初出務の時は、ドキドキしていましたが、だんだん概要が分かってきたこともあり、この職場が好きになっています。

 

『次回は〇月〇日でいいですか?』

『はい、大丈夫です。伺います』

 

あれ?1年契約だったのでは?

どうやら本部から契約更新してもらえたようです。

産業医の成長物語?は続きます…

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