2021.10.19 阿房列車

比叡山の大阿闍梨様の法話は大変ありがたいものでしたが、院長にとって印象的だったのは、千日回峰行でお堂に籠っておられた時、はるか遠くの特急『サンダーバード』の音で時刻を推定した話。

全然、仏教には関係ない…

信心が足りないことを改めて自覚します。

 

それにしてもそれ以降『サンダーバード』が気になりだし…

乗りたい!乗りたい!

用がなくても乗ればいいじゃないか…(内田百閒・第一阿房列車)

といっても、『サンダーバード』は大阪から金沢・和倉温泉の区間です。

元は『スーパー雷鳥』(ちなみに雷=サンダー・鳥=バード、雷鳥はGrouse)

東海人には縁のない列車、停車駅です。

 

通常、名古屋からは新幹線で大阪に行きます。

最短50分、あっと言う間です。

ですが、『サンダーバード』に乗りたい一心で鉄道路線図を見ていると…

名古屋から特急『しらさぎ』で敦賀まで。

敦賀から『サンダーバード』に乗り換え大阪へ。

『サンダーバード』に乗れます!

敦賀の乗り換えが出来るだけスムーズな『しらさぎ』と『サンダーバード』を探します。

そうすると、出発が早くなるので、朝の30分節約として新幹線を加えることにしました。

名古屋から米原を新幹線『ひかり』

米原から敦賀まで『しらさぎ』

敦賀から大阪まで『サンダーバード』

名古屋から大阪まで約3時間の旅です。

 

こんなにわくわくする大阪行きは初めてです。

『ひかり』はあっと言う間に米原へ。

米原で停車中の『しらさぎ』に乗り換えます。

『しらさぎ』は、金沢の学会などで幾度も使っていますが、米原で進行方向が反転するため、自分たちで座席の向きを変えないといけません。

 

敦賀まで約20分。

ホームを変えて『サンダーバード』を待ちます。

向かいのホーム椅子には、恐竜のオブジェが座っているのでぎょっとしてしまいました。

若干の遅れもありましたが、『サンダーバード』がホームに入ってきます。

白い車体に青の線が入り、速そうな白い鳥のエンブレムが描かれています。

列車の内外とも、『しらさぎ』よりきれいで新しい気が。

ちなみに『しらさぎ』は白い車体に青とオレンジの線が入っています。

田舎の風景は大きく変わりませんが、滋賀県に入ると琵琶湖の西側を走ります。

湖を眼前(左斜め前)に見ながらの走行に興奮。

『高僧の修業となれば、こんなはるか遠方の電車の音も聞こえるくらい聴覚も研ぎ澄まされるのだ』

比叡山近くの駅や線路を走りながら、そんなことを思います。

 

京都に停車し終点大阪へ。

米原、敦賀と地方の駅と一転して、大都会大阪に到着。

いつもの大阪着とは違う感慨深さ。

 

お昼ご飯を大阪で。

 

帰りは、最後のお楽しみが。

サンダーバードと並ぶ、乗ってみたいけど機会がなかった列車。

近鉄特急『ひのとり』です。

 

近鉄の始発・難波駅も初めてです。

『ひのとり』の車体を見て、『サンダーバード』の格好良さも一気に飛んでしまった程スタイリッシュ。

全体が紅炎色の車体に金色火の鳥!

幸運にも1号車2列目のプレミアムシートが取れたので乗り込みます。

座席の広さといい、リクライニングシートと言い、想像を超える快適さ。

どうぞ、くつろいでくださいな…と言わんばかり。

入って来る乗客の感嘆の声が次々に聞こえます(ほとんど初乗車のよう)。

 

さて、出発。

走行もとても滑らかで静かです。

中2階なので、運転手さんはやや下側で運転。

前方の景色が大きな窓から現れ、どんどん行き過ぎていきます。

背もたれがあるのに、前のめりで前景を見つめてしまう院長です。

奈良県に入ったあたりから、あちこちで寝息が。

乗客大爆睡、いびきもあちこちから聞こえる事態。

2時間8分かかりますが、休養(睡眠)を取りたい人にはぴったりかも。

終点近くになると、天井が深海のようにライトアップされ、名古屋到着です。

 

4つの新幹線・特急を制覇した贅沢かつ阿呆な旅。

限られた休みの日に達成した我流阿房列車でした。

 

こちらもご覧ください

2021.8.17  法話有り難き

カテゴリー:公センセの日常の出来事

2021.10.12 目の愛護デー

10月10日は体育の日と、今も連想する昭和世代の院長ですが、目の愛護デーでもあります。

10/10を縦に並べると眉毛と目に見えるからです。

 

愛護デーにちなみ、眼の健康について。

 

子どもの視力は悪化傾向にあります。

学校での視力検査で、裸眼視力1.0未満の学生は年々増加。

2020年度では小学生約30%、中学生約60%、高校生では約70%弱の割合です。

もっとも、1.0以上だからと言って、遠視や乱視が隠れているかもしれませんし、近視なのに頑張って裸眼視力を出している場合もあるので、ひとつの目安です。

片眼だけが視力不良の場合も、気づかないことが多いので、『受診のお勧め』をもらったら必ず眼科受診してください。

 

近視は、近くにピントが合いやすく、遠くがすっきり見えない状態です。

近視進行につれ、眼球の奥行(眼軸長)も長くなり、強度近視の眼球はラグビーボールのような形状です(ふつうは球状)。

 

遠視は、遠くが見やすいのではなく、遠くも近くもピント合わせをしないと見えない目です。

近くを見るときのほうが、ピント合わせの力を大きく使うので、近用作業(読書や勉強)に疲れたり飽きやすいこともあります。

遠視の程度によっては、裸眼視力がよくても、眼鏡装用を勧めます。

 

乱視は、茶目(角膜)の縦と横のカーブが違っていて、ピントの距離が合う距離が違っている目です。

ほとんどの人は、多少なりとも乱視があります。

患者さんが自己申告で、『私、乱視があるんです』と言われる場合も、問題になる程度とそうでない微小な乱視と様々です。

眼科的に問題になるのは、乱視を入れないと矯正視力が出ない場合。

一般に角膜はほぼ円形をしていますが、乱視が強いと楕円のイメージです。

 

 

弱視は、視力が育っていない眼の状態を言います。

生直後の赤ちゃんは、まだ視力がほとんどなく、その後周囲の刺激を受けて、視力が発達します。

3歳児健診、就学時健診は節目の検査です。

健診で受診を勧められたら、必ず来院してください。

早く発見することで、視力の成長は可能です。

タイムリミットは8~9歳なので、弱視治療の有効期間は限られています。

 

学童期には、近視と診断されることが多いのですが、原因は『遺伝』と『環境』です。

強度の近視は、眼軸長が伸びている(ラグビーボール状)ので、身長と同様、遺伝によるものは大きいです。

眼軸長は成長により伸びますが、伸び率に差があります。

また、近年は、端末による近用作業(PC、タブレット、スマホ、ゲーム)が増え、屋外活動が減る傾向にあるため、環境要因も大きくなっています。

実際、昨年のコロナ渦での一斉休校期間に、子供の近視は、ずいぶん進行しました。

 

20/20/20ルール。

20分端末を見たら20秒以上20フィート(約6メートル)遠くを見ましょう。

明るい部屋で作業をしましょう。

目が乾燥しないよう、意識して瞬きをしましょう。

寝る前には、見ないように。

睡眠リズムの乱れになります。

太陽光での屋外活動も有効です。

学校の休み時間や体育だけで十分時間は確保できます。

強い日射しでなくても有効です。

 

近視の研究は、近年どんどん新しい知見が報告されてきています。

近視が強くなるに従い、網膜剥離、緑内障になりやすくなります。

強度近視だと、近視のない人に比べて、網膜剥離は22倍、緑内障は14倍の発症率です。

 

学校医として、地域のかかりつけ医として、診ていた子供さんたちも、もう立派な成人。

そのお子さんたちがやってきます。

デジタル端末で何でも調べられる昨今。

眼も心も不安になりやすいから、目の前の眼科医に聞いてくださいね。

カテゴリー:眼に関すること

2021.10.5 しどろもどろ

新型ワクチン接種当番は秋になっても続きます。

秋のゴルフラウンド用に買ったウエアも、近々のラウンドは未定。

こんな秋晴れの日に、ワクチン当番。

人の多いワクチン接種会場に、新しいゴルフウエアで出務です。

誰か見てくれるかな~?

座って医師用ビブスを着て予診。

誰も見ないわ、気に留めないわ(当然)。

ゴルフウエアで、ペンを握る院長です。

 

初回は、地元小学校で、高齢者優先接種。

基礎疾患がある人が多いことや、地元ゆえに当院の患者さんもいて、予診で長くなることも。

その後、年齢が徐々に下げられ、若年でも持病のある人の優先接種が始まりました。

月ごとに、接種者の層が変化していきます。

 

今回は、12歳以上の若年者が大多数に。

ほとんどの人は、基礎疾患はないので、病気に関してはほぼスルーです。

しかし、今までになく、ベッドで寝ての接種希望が。

ワクチンごときで?と思うオバサン院長ではありますが、繊細なお年頃?(若者)は、安心のためにもベッドで。

若い人ほど、不安・心配の心情が見受けられます。

 

『医師と話がしたい』と付箋を付けてきた女子高校生。

付き添いの母親はすでに接種済みです。

ネットで、ワクチン接種否定の記事をたくさん見て、接種すべきか迷っていると。

ワクチンの開発の話、接種のメリット・副反応。

打たない選択をした場合起こりうること、などなど。

『○○は絶対ですか?』

『医学に絶対はないから、最後は自分で決めてね』

『もう少し考えます』

予診ブースを後退して悩むこと30分。

『来春、受験なので、その時コロナに罹って後悔したくないので、打ちます』

本日接種可能にサインして、接種ブースに進んでもらいました。

『受験頑張って!』

 

接種後のブースでは、何人かの若者が気分悪くなり(いわゆる脳貧血)、内科医師が駆け付ける場面も何回か。

人生経験が浅い分、不安も大きいし、迷走神経も過剰に働いてしまいます。

 

今回は、外国人も多い印象を受けました。

ベトナム・インドネシア・タイ・フィリピンなど東南アジア系。

バングラディッシュ・インド・パキスタンの南アジア。

中国・韓国。

ほぼ英単語を交えた日本語の日系アメリカ人もいました。

何人かに接していると、顔形・姿・名前の表記から、どこの国の人か見当がつくようになってきました。

最初は出身国を聞いていたのですが、そのうち『○○国出身ですか?』と尋ねると『そうです。よくわかりましたね』と言われる始末。

ほとんどの人が、日常会話には困らないよう。

子どもだけが日本語に堪能で、こちらの内容を両親に母語で伝える場面も。

インドネシアでは、苗字がないことを知ってびっくり(教えてもらった)、豆知識も。

 

『先生、英語大丈夫ですか?』

いきなり、係の人が尋ねてきました。

『少しくらいなら…』

『では、今から英語しか話せない外国の人お連れしますね』

え~!?

30代の浅黒い髭の生えた男性。

問診票は、もれなく問題なしです。

なのに日本語話せないの?(厚労省HPに各語の問診票あり)

まずは、お決まりの『どちらのご出身ですか?』(拙い英語で)

『パキスタン』

接種は問題ないけれど、接種に当たっての注意事項や確認をしないといけません。

相手の話の聞き取りは出来るのですが、話そうとすると焦ってしまいます。

しどろもどろながら、相手は理解してくれてやれやれ。

半年ほど前に、英会話の勉強を少々再開したもののこのお粗末さ。

トホホ。

 

若者と外国人。

院長、人生経験は半世紀あっても、まだまだドキドキは健在?です。

 

過去の記事もご覧ください「2021.6.8 こんな所で…」

カテゴリー:健康 公センセの日常の出来事

2021.9.28 契約更新

学校医は、学校保健委員会や就学時保健委員会など、年に何回かある委員会に出席します。

必ず校医として発言の場が設けられるので、意見や見解を述べます。

 

さて、産業医は安全衛生委員会の出席があります。

安全衛生委員会とは、その事業場における衛生に関する問題について関係者が話し合いをする場のこと。

労働安全衛生法に基づき、常時100名以上の労働者を使用する規模の事業場で、月1回以上開催することになっています。

 

担当するスーパーでは、委員長は店長さんです。

安全管理者・衛生管理者・メンタルヘルス推進担当者・産業医が会社側のメンバー。

労働者側からも何人か参加します。

水産部門・畜産部門・農産部門・総菜部門…など、各部門ごとに。

 

嘱託産業医の院長は、毎回出席は難しいので、その時は前回の議事録を見て、店長さんに質問します。

スーパーという職場柄、スタッフの皆さんは、エプロンや長靴・コックシューズのままで委員会に駆け付けます。

全店舗の労働災害の報告が人事部から毎月入って来るので、その報告から始まります。

 

毎月、スーパーで多いのは転倒事故です。

高齢の従業員の転倒が多くなると、ケガも重症化しやすくなり、休業も長期化しやすくなります。

転倒の主な原因は、滑り・つまづき・踏み外し。

 

水産部門の水・氷や総菜部門の油など、スーパーは滑る場所が多いので注意が必要です。

アイスクリーム搬入時に床が濡れてしまい、高齢のお客さんが転倒してしまったという事例も。

濡れ・汚れを見たらすぐ清掃を。

あわせて、お客さん(主に子供)が、店内でする嘔吐することも結構あるそうなので、迅速な処理を。

冬場はノロウイルスにも注意ですが、『汚物処理ツールボックス』と言う専用キット(初めて知った!)があるので、手順通りに使用すれば良さそうです。

買った商品(大物)を忘れるお客さんにも驚きましたが、店内嘔吐事故?多数発生にも驚き。

 

以前の巡視で指摘した切れの鈍くなったかぼちゃカッターは新しくなりましたが、他店での巻きずしカッターでの切創事例を聞くと、鋭利すぎも怖い。

気を付けて取り扱ってほしいものです。

労災事故は極力起こりませんように。

 

食品を扱うので、作業場の温度管理も重要です。

冷蔵庫や冷凍庫から商品や材料を取り出す際には、事前に作業場を冷却しておくことは、毎回、店長さんが繰り返し言うことです。

一般家庭なら、冷蔵庫からエアコンの効いていない室内に出して調理、と言うことはよくあります(院長も)。

しかし、職場では、たとえ少しの時間でも、まず作業場を冷やしておくことが徹底されます。

食中毒の発生は致命的なので。

 

店内はいつもひんやりしています。

売り場は24度。

しかし、揚げ物作業場では27度にもなります。

火傷しないように、長袖長ズボンキャップなので、まめな水分補給を勧めます。

一方、水産作業場は18度。

制服だけでは、体の芯まで冷えてしまうので、支給のインナーを着用しての作業です。

同じスーパー内でも、かなりの環境差があり、個々の健康を維持しながら、作業を効率に進めるために勘考しています。

 

院長も産業医として、意見を求められます。

初出務の時は、ドキドキしていましたが、だんだん概要が分かってきたこともあり、この職場が好きになっています。

 

『次回は〇月〇日でいいですか?』

『はい、大丈夫です。伺います』

 

あれ?1年契約だったのでは?

どうやら本部から契約更新してもらえたようです。

産業医の成長物語?は続きます…

カテゴリー:健康 公センセの日常の出来事 産業医

2021.9.14 見つめられても…

高校生のA君が、お母さんと一緒に来院されました。

『1年位前から、息子と話していると、片眼が外に向いているんです』と、心配そうなお母さん。

 

『自分では、気づいていますか?

お母さん以外の周りの人から言われたことは?』と本人に質問。

 

自分で気にしたことはない。

母親だけが気にするだけで、周りは誰も気づいたり、指摘しないそう。

父親からも(まあ、この年頃だと、父親と顔を合わることも少ないでしょうが)。

 

『まじ、きもいんですよ~この人(母を指して)。

話してると、俺の顔じっと見てきて…まじ、うざいんっすよね~

それで、なんか変…とか言ってくるし…』

院長の脳裏に『うっせわ~♪』が流れます。

母親の前で…

 

『まあまあ…診察始めましょう』

 

診察を始めます。

ペンライトを持ち、正面視させると、両眼ともまっすぐ前を向きます。

しかし、斜視検査をすると、片眼が外側に向きます。

輻輳(寄り目)は十分できています。

軽い近視あり。

その他、眼の病気はありません。

片眼の外れ方も軽度なので、立体視は正常でした(斜視だと立体的に見る力が育たないことがあります)。

 

『お母さんのご指摘のように、やはり、片眼が外向きますね。

いつもは正面視で問題ないので、間欠性外斜視です』

『え~何々?まじっすか~』

 

間欠性外斜視は、正面視だと、まっすく前を向いているのですが、何かの拍子で片眼だけが外側を向く斜視です。

外向きの力が多々強いので、片眼が外側を向いてしまいます。

いつも(恒常性)ではなく、時々(間欠性)。

緊張が取れたときとか、気が抜けたときに、片眼が外れやすくなります。

なので、人前(学校などでの緊張状態)では気づかれないことが多いです。

家で家族が気が付くか、自分で気が付くか…

子どもが小さいときは、母親(たまに父親)が気付くことがほとんどです。

学校検診で見つかることもあります。

 

治療は、外向きの程度により、経過観察・眼鏡・手術があります。

Aくんには近視もあったので、眼鏡を処方することにしました。

 

『どう?』

『いい感じっす』

『お母さんが気付いてくれて、眼科受診することになって良かったですね~

お母さんほど、Aくんのこと見つめてくれる人はいませんよ。

だから、変化に気づけたんだから。

うざいなんて言わないで。

ね~お母さん』

お母さんをしっかりフォロー。

 

『わかるけど、時々マジうざくなるんですよ~』

息子の言い分もあるけれども…

 

息子も、思春期の頃、母の気持ちも知らず人前でボロクソに言ったよな~

母の愛は無限の慈愛です。

パートナーの愛は、恋愛から始まる有限の愛。

長い年月をかけて、慈愛になるのだけれど(院長も慈愛の域に…)。

 

親子連れが来院される度に、自分の子育てを顧みて、診療後、安心して帰っていただきたいと思っています。

 

*来週は『公センセの部屋』お休みします

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2021.9.7 赤毛のアンと緑内障

ステイホームが続くようになって、院長の読書熱も復活。

新刊も読みますが、児童文学や古典も気になるように。

 

さて、先日書店で見つけた『赤毛のアン』

何十年かぶりに、同じ訳者(改定あり)の文庫シリーズが目に留まりました。

 

もう一度読みたい!

いつか読もうと思っても、老眼・ドライアイに加え、集中力の欠如が起こりうる現実。

読むなら、今!

 

赤毛のアンシリーズは、『赤毛のアン』から始まって『アンの思い出の日々(上・下)』まで全12巻。

今では大人買いです。

 

『赤毛のアン』

孤児院のアンは、グリン・ゲイブルス(物語の場所)の独身のマシューとマリラ(兄妹)に引き取られます。

アンは11歳、マシュー60歳、マリラは50代。

美しい自然の中で、多くの人と関わりながら成長していくアンの物語です。

アンの年齢に近かった少女(院長)は、アンを中心に物語に夢中になっていましたが、いまやマシュー・マリラと同世代。

冷静になって様々な立場で読む自分がいます。

 

 

さて、このお話の中で、マリラは、度々頭痛を起こします(以下原文抜粋)。

 

『~頭痛のせいなんだよ。

近ごろ、しょっちゅう痛むのさ、眼の奥のあたりがね。

スペンサー先生は眼鏡のことばかりやかましく言いなさるけど、いくら眼鏡を変えてもちっともよくならないんだよ。

6月の末に島へ有名な眼科医が来るから、ぜひ見てもらいなさいと先生が言いなさるんだが、私もそうしなくてはなるまいと思うのさ。

読むのも縫うのも不自由でね。~』

 

『~あの眼科医が、明日、町にみえなさるから診てもらって来いと言いなすったんだよ。~

私の目に合ったメガネをつくってもらえばありがたいことだよ。~』

 

マリラは眼科医に診てもらいます。

『~もう読書も裁縫も、眼に負担がかかることは一切やめなさいって。

泣くのもよくないんだとさ。

それで先生のおっしゃる通りの眼鏡をかければ、これ以上悪くなるのは食い止められるし、頭痛も治まるだろうって。

そうしなければ、半年のうちに目が全く見えなくなるっていうんだよ。~』

 

少女(当時の院長)は気にも留めず読み進めたのに、眼科医(院長)の今、その部分で停止、考察。

マリラは、緑内障を患っていたのではないか…

 

緑内障には隅角が広い開放隅角緑内障と狭い閉塞隅角緑内障があります。

閉塞隅角の患者さんは、何かのはずみに、隅角がより狭くなると、眼圧が上がります。

遠視の人が多いです。

うつむいて作業をすることで(特に暗いところで)、隅角がより狭くなり、眼圧が上がります。

そこそこ上がると、眼が押されるような疲れ・痛みや眼精疲労、頭痛が起こります。

ただし、姿勢によって、改善されるので、眼から由来するとはなかなか気が付きません。

また、加齢により白内障になることで、隅角が狭くなりがちです。

何かの拍子で、隅角が閉塞してしまうと、急激な眼圧上昇と激しい眼痛・頭痛を起こします。

頭の病気かも?と思っていたら、眼の病気だったという『緑内障発作』です。

 

マリラは、中等度以上の遠視で、慢性閉塞隅角緑内障だったのではないか…というのが、院長の見立てです。

頭痛・眼精疲労など、小さな眼圧上昇を繰り返した結果だったのでは。

すでに、視野欠損(自覚の有無は別として)もあったのではないでしょうか。

 

現代だったら、マリラに手術を勧めます。

 

100年以上前、作者のモンゴメリは、どんな病気を想定して描写したのでしょうか?

赤毛のアンで、眼の病気に出会うとは…

 

1巻目にして、足踏みをしてしまった院長。

全巻制覇まで、ゆっくり読み進めていこうと思います。

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2021.8.31  パラを見る

東京2020パラリンピックが開催されています。

オリンピックはニュースで結果を知ったくらいでしたが、パラリンピックのいくつかは、中継で見ました。

『障がい者スポーツ医』としてはぜひ見なければ!

『障がい者スポーツ医』とは、障害がある人たちがスポーツを生活に取り入れ実践していくためのスポーツ指導者です。

日々の健康増進のためのスポーツから、競技としてのスポーツまで指導内容は多岐にわたります。

専門科目は多岐にわたるので、恐らく、各々自身の専門科を活かしたスポーツに関与することが多いと思います。

院長は眼科医なので、視覚障がい者スポーツに特に興味があります。

 

視覚障がい者の種目としては

ゴールボール

5人制サッカー

陸上

水泳

柔道

自転車(二人乗りで前に晴眼者、後ろに視覚障害者)

 

視覚障がい者と言っても、その程度は様々です。

視力の程度(全盲~0.1)や視野の程度によってクラス分けがなされます。

クラス分けをするのは、障がい者スポーツ医の中でもパラリンピック級の選手のレベルを判定できる上級の医師たちです。

障がいの部位(視覚や身体、知的)などにより、各種目ともクラス分けがなされています。

個々の障害が競技に及ぼす影響を出来るだけ小さくし、平等に競い合うために必要な制度です。

 

さて、一番気になっていたのは、ゴールボール。

ゴールボールは、視覚障がい者だけが対象で、交互に投球して相手のゴールを狙い、得点を競うスポーツです。

 

院長は、2回、ゴールボール実践体験があり、少し身近に。

まず、視覚障害の程度による不公平をなくすために、アイシェード(真っ黒なゴーグル)をします。

これで、まったく見えなくなります。

選手3人が横並びに位置するのですが、相手がどこにいるか見当がつきません。

鉛の鈴が入っている重さ1.25キロのボールを相手のゴールにシュートします。

ボールがガードされれば得点にならず。

ガードをくぐり、狙い通りにゴールに入ると得点が取られます。

暗闇の中で歩く、ボールを投げる(というより重いので転がす)…

音のするボールが向かってくるのはわかっても、正しい方向は?ガードするためにどの位置に向かっていけばよい?足取りも及び腰…

わずかな体験なのに、ぐったりの院長でした。

 

さて、実際の試合をテレビで見てみると…

投球の時点で、まったく違います。

体験の時は、選手はもう少しゆっくり投球していたと記憶していますが、勝負をかけた本番は全然違います。

ぐるっと回転させソフトボール投げ+砲丸投げも混じっているような投げ方(院長表現下手)で、すごい速さでバウンドして相手のゴールに飛んでいきます。

スピンの効いた時速60キロ程度ともいわれる重いボールをガードできるのは、圧巻です。

聴覚と触覚を研ぎ澄ますことで、ボールの軌跡や他選手の動きが分かるのでしょうか。

 

他の競技も見ましたが、障がいを克服して何かを成し遂げるのは大変なことです。

日常生活でさえハンディがあるのに、ましてやパラリンピックに出場など想像を絶するものがあります。

障がいを克服(残存機能・他機能を生かす・代替する、補装具を使う)して、健常人でさえ成し遂げられないスポーツの頂点に立ったパラアスリート。

 

パラリンピックを詳しく知り、大きな興味と知識を持って観戦できたことは、障害者スポーツ医として最初のステップ。

今後は、地域の障がい者スポーツの普及・指導に関わっていきたいです。

 

※関連記事もお読みください

→2020.3.3 障がい者スポーツ医

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2021.8.24  寝押しのイメージ

眼鏡処方希望で患者Dさんが初診で来院。

ふだんはハードコンタクトレンズ(HCL)装用で左右とも視力1.2。

しかし、50代になり、近くを見るのはコンタクトなし(裸眼)のほうが見やすくなり、コンタクト装用も疲れるようになり…眼鏡はどうかな…と言うのが受診のきっかけ。

 

軽い近視があり、この年齢だと、裸眼で一番焦点が合いやすい程度です。

眼科的には異常はありませんでした。

近くは裸眼で見ることにし、遠用眼鏡の処方を始めました。

しばらくすると…検査スタッフが『眼鏡で矯正視力がしっかり出ません。HCLだと出ていたのですが』

 

HCLの使用状況を聞きました。

連続装用可のHCLだったので、連続装用(ずっと付けっ放し)していたと。

一般にHCLは連続装用と終日(起きている間)装用対応のものがあります。

連続装用可であっても、眼科医の指示のもと、夜勤など限られた仕事の場合に限定すべきで、自己判断で自由に付けっ放しで良いわけではありません。

 

やはり…

『HCLをずっと付けっ放しだったので、角膜(茶目)が押され続けて、角膜カーブがより平坦になってしまっているんです。眼科的に、角膜カーブがフラット(平坦)になると、近視が減る計算(詳細は割愛)になります。

なので、本日測定した近視の程度は、本当の値より低く出ている可能性があります』

Dさん、少し難しそうな顔。

眼球模型を見せながら…

『寝押しのイメージで…HCLで角膜を押すと、角膜は少しのっぺりするんですね。そうすると、角膜がのっぺりすることで、近視が減る仕組みなんです』

『なるほど!寝押しね。わかりました』

その後、『寝押し』っていうワード、懐かし~で盛り上がりました。

 

寝押しとは、布団の敷布団の下に衣服を敷いて、一晩寝て体重をかけることで、再度スカートやズボンのひだや折り目を付けることです。

アイロンより手軽な方法です。

院長が中高生の頃は、学生の毎晩のルーティンだったと思います。

 

我が家では息子の制服のズボンにアイロンを当てるほど、気の利いた母(院長)でもなく、ベッド生活なので脱いだ制服をそのまま着ていたような…

 

『寝押しって知ってる?』息子たちに聞くと

『何それ?知らない』という答え。

現代では死語になっている!?

 

さて、Dさんには、1週間ほど、HCLを中止してもらうことにしました。

再診時、角膜のカーブは前回に比べてややスチープ(急峻)になっていました。

近視も、前回測定時よりやや強めに。

これが本来のDさんの近視度数と角膜カーブ。

スムーズに視力も出て、眼鏡処方に至りました。

 

最近は、ソフトコンタクトレンズ(SCL)が大多数を占めるので、角膜カーブは以前より大きく問題になりませんが、大事な指標ではあります。

 

良く見えるようにする治療の一つに、オルソケラトロジーがあります。

角膜矯正療法と言う意味です。

個々の角膜形状に合わせてデザインされた専用コンタクトレンズを夜間装用することで、角膜カーブをよりフラットにします。

簡単に言えば、角膜の寝押しです。

夜寝るときに、個々にデザインされたHCLをして、朝起きたら外す。

日中は裸眼で過ごせる。

手術のような侵襲はないため、学童児でも受けられる方はあります。

ただし、継続が必須(止めたら戻る)ですし、その都度、角膜カーブに合ったHCLを作成しないといけません。

 

院長も強度近視なので、裸眼ですっきり見えることに憧れた時期もありました。

50代になった今、裸眼で近くが見えることの有り難さを感じる日々です。

近視…眼鏡で見えるんだったら、全然悪い目じゃないですよ!

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2021.8.17  法話有り難き

田舎育ちの院長は、小学校の時は、子供会活動として、週末地元のお寺にお経を習いに行っていました。

6年間毎週お寺に通い、家でも祖母や父母がお経をあげているのを聞いていれば、自然に暗記してしまうもの。

今でも、実家の宗派のお経はすらすら読めます。

院長の住んでいた地域は、恐らく集落全てが同一宗派のため、慣習的にお経を習いに行ったのだと思います。

お稽古が終わると、お供えのお菓子が分けられ、持ち帰ると、家の仏壇に再度お供えしてからいただきます。

6年生になると、お供えのお菓子を自分たちで決めて買ってこられるのも楽しかった思い出です。

お寺さんのお話は、子ども心に信心の気持ちを芽生えさせました。

花まつりから始まり、除夜の鐘つきなど、お寺はとても身近なものでした。

 

医学を学び医師になり、結婚して都会(名古屋です)に住んでいる今、宗教心はほぼ欠落してしまった院長。

それでも、お寺で法話を聞くのは好きです。

 

一度は行ってみたかった(ミーハーです)比叡山で、法話を聴く機会を得ました。

 

比叡山は最澄が延暦寺を創建。

以来、多くの名僧が、比叡山で修行して宗祖となられています。

今回、法話をいただくのは、大阿闍梨(おおあじゃり)様。

千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)を達成された僧です。

これは、比叡山で行われる、千日間にわたる最も過酷な修行です。

比叡山の峰をめぐって、約270か所以上ある場所に礼拝を続けます。

千日で歩く距離は、地球約1周分とほぼ同じ。

700日を終えると、9日間の断食・断水・不眠・不臥の命がけの修業に臨みます。

千日回峰行を達成した僧は大行満(だいぎょうまん)と呼ばれます。

 

その大行満を終えられた大阿闍梨様の法話。

 

お坊さんと言うと、高齢(自分より年上)を想像していましたが、登壇されたのは、46歳の大阿闍梨様。

15歳で仏門に入り2009年に千日回峰行を満行、大阿闍梨になられたそう。

まず、仏門への始まりから、千日回峰行を達成するまでを話してくださいました。

空腹には、割とすぐに慣れるそうです。

断水・不眠・不臥が続き、無心になっていく、感性が鋭くなっていく、体力だけでなく精神力の行…

余計なことを考える必要はなく、念じるのみ。

 

9日間の断食では、体重が12キロ減少したそう。

断食期間の3倍をかけて元に戻すそうです。

体重は戻っても、筋力までは戻らないという言葉は印象的(仏教に関係ないですが)。

 

やり遂げたという自信も必要だが、謙虚さを忘れないようにと心がけている。

行をさせてもらったことで、いろいろ経験させてもらい、そこから課題をいただき克服していく。

行を満行したといっても、その意味では、行は一生かけて続いていくのです。

 

俗世の私たちにとっては、想像もつかない偉業です。

でも法話のお話は、日々の自身の仕事(院長なら行=医師・医学)に置き換えることもできます。

 

有難い法話を聴いて、心が浄化されました。

 

お堂では、ふすまに入る陽の加減や遠く山裾のびわ湖岸を走る特急サンダーバードの音で時刻を推定した(非常に聴覚が鋭くなるそうです)という大阿闍梨様。

サンダーバードに乗りたいな~

大好きな阿闍梨餅を食べながら、時刻表をめくる、どっぷり俗世の院長です。

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2021.8.3 二桁の人

電子カルテになり、来院患者は、診察券番号・氏名・年齢ともに一覧で確認できるようになりました。

診察室のパソコンで、本日の混み具合や検査の進行具合などがわかります。

診察券番号の付け方は、病院やクリニックによって違いはありますが、来院順に付けることが多いと思います。

 

ある日、2桁番号の患者さんが。

ちょっと年季が入っている当院としては、非常に珍しいことです。

1桁は開院当日に来院。

1番から9番までしかありません。

数人は知人だし、一回きりの受診患者さんもいるし、緑内障で長く診ていた患者さんも数年前鬼籍に入られました。

2桁も同じく開院当日か翌日。

10番から99番が該当します。

○○A子さん…誰?

 

『○○A子さん、お入りください』

赤ちゃんを背負い、2歳くらいの男の子を連れた眼鏡をかけた女性が入室。

この顔、見覚えが…

『もしかして、△△(旧姓)A子ちゃん?』

『そうです。お久しぶりです。覚えてくれてましたか?』

やっぱり。

A子ちゃんは視力検査で来院した小学校低学年の女の子でした。

不同視(左右の度数の差が大きい)と乱視があることが分かり、弱視訓練を開始しした患者さんです。

眼鏡を常用することから始めました。

左右の度の差は縮まらなかったものの、最終的に両眼とも眼鏡で矯正視力が出るようになりました。

目の前の女性は成人した素敵な女性ですが、小学生のA子ちゃんも重なっています。

 

近況を聞くと、現在は関東在住とのこと。

『ちょうど、実家に帰ってきたので。定期検診と気になることもあったので、診てもらいに来ました』

『お母さんはお元気?』(お母さんの顔も浮かびます)

 

患者さんには失礼ですが、こうした再会は、患者さんからもらう、クリニックを続けるモチベーションアップとなるプレゼントです。

 

 

2桁の患者さんのひとり、Bさんからは、時々往診の依頼があります。

眼脂や、目の周りのただれなどで。

Bさんは90歳超。

残念なことに、認知症進行により、もう院長どころか、家族のことも施設の人のことも覚えていません。

診察券番号は、2桁前半。

受診された当時は60代でした。

施設入居された頃から、人の顔も物事もどんどん忘れられ…しかし、当時Bさんと交わした、いくらかの会話は、確実に院長には記憶されています。

 

 

2桁の人も、一回限りの患者さん、鬼籍に入られた患者さん、転居された患者さんなど、色々いらっしゃると思います。

ただ、開院当日と翌日の患者さんだけに、感慨深いものがあります。

 

 

記念日当日を覚えているのは、子どもの誕生日、自身の結婚式。

そして、院長にとっては開院日です。

周年が来るたびに、院長・スタッフ・患者さんとで築き上げてきたのだと実感します。

お店でも会社でも、何かをやり始めた当人は、その日は特別なんだと思います。

24年前の夏の日もセミがジージー鳴いていました。

A子ちゃんのように、5か月の次男をおぶり、2歳目前の長男の手を引く若いお母さんでした。

開業で、生活は一転。

育児より仕事優先、勉強優先。

でも、育児は待ってくれない。

今ほど筋肉はないが、日々を乗り切る体力。

今ほど知識・技術はないが、患者さんの症例から勉強させてもらう貪欲さ。

若さゆえの勢い。

 

来年の25周年に向かって、少しでも地域医療に貢献できるよう、初心忘れず、診療に励みたいと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

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