2023.7.25 白目が真っ赤
日常診療で、充血が気になって来院される患者さんはとても多いです。
ある日、A君が何年かぶりに受診。
『朝起きたら、左眼がすごく充血していてびっくりして来た』とのこと。
診察すると…左眼の白眼は真っ赤!
充血ではなく出血です。
充血は、結膜(白目の上にある透明な膜)下の毛細血管の拡張です。
出血は、結膜下の血管が破れ、結膜の下に出血し、白眼(結膜)が鮮紅色になった状態を言います。
『充血じゃなくて出血ですね~』
内科的な病気(高血圧や糖尿病・抗凝固剤内服など)の有無は尋ねます。
外傷(物が当たったとか打撲とか)の有無も。
いきむようなことをしたか?も。
毛細血管へ圧が加わり、血管が破れて出血します。
原因を特定できない場合も多いのですが、50~60代に多いと言われています。
毛細血管の強さと、眼瞼の開閉の摩擦力のアンバランスが、この年代に最も起こり易いということです。
若い時は、瞬きが力強くても、毛細血管も強い。
高齢になると、毛細血管も脆くなるけれどまぶたの開閉の圧も弱い、というわけ。
最近では、ドライアイとの関連も明らかになってきました。
涙が少なく角膜表面の涙のノリが悪いと、まぶたの開閉に摩擦が起きやすくなります。
そのため血管が破れやすくなります。
若年で結膜下出血を繰り返す人は、ドライアイが隠れているかもしれません。
ヒトは通常1分間に約20回瞬きをします。
1時間で1200回、1日16時間起きていたら2万回近く瞬きをしています。
ドライアイの強い人は、ウオッシャー液無しでワイパーを動かしているようなものです。
多くの結膜下出血は経過観察でも消退していきます。
場合によっては、点眼薬を処方します。
原因不明として治ればよい結膜下出血なのか、その裏に隠れている要因を治療したほうがよいのかは、眼科医でなければわかりません。
例え受診して心配ないと言われても、それは眼科医からの責任ある言葉なので、自己判断・放置はしないほうが良いと思います。
さて、さきほどのA君。
『原因不明だけど、大丈夫。1週間くらいでひくから』
『あの~先生。昨日、飲み会があって、すごく飲んじゃって、最後に何回も吐いちゃったんですけど…関係ありますかね?』
あああ~
年齢見ると20歳!
Aくんは、ずっと中学生のまま(最後の受診)だと思い込んでいたけれど。
もう成人で飲酒する年齢。
吐くほど飲む…なんてこと、有り得る年齢でした。
嘔吐で腹圧は上昇します。
『そっか~。もう成人だもんね。飲むのはいいけど、ほどほどにしてね』
初診の80歳の患者Bさんは、『以前母が受診して』が来院理由。
お母さんの近況を聞くと、もうあちらの世界へ。
Bさんは、加齢により白眼(結膜)がたるんで(弛緩)いました。
その周辺に結膜下出血が。
『ひどい便秘で、今朝すごくいきんだからかしら?』
恐らくそうです。
排便時のいきみも要注意です。
『結膜下出血は50~60代に多い』の説明を他人事のように説明していた頃もありましたが、今はしっかりその年代。
眼科医として、自身の眼の変化も実感するこの頃です。
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