2022.5.31 眼科で隔離
眼科の場合、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのように、患者さんを別エリアに誘導・隔離することは滅多にありません。
しかし、眼科で唯一、別場所に移動・(準)隔離する病気があります。
流行性角結膜炎、通称『はやり目』です。
受付時点で、充血・めやにの患者さんで『はやり目』を疑う場合は、念のため、他場所で待ってもらいます。
院長がさっと患者さんを診察しに行きます。
問診(いつから、どんな症状か、熱はないか、周りに似たような症状の人がいないかなどなど)と、眼の状態を診て、疑わしい場合は迅速診断キットで確定診断をします。
まぶたの裏側を綿棒でこすり、アデノウイルの抗原を確認します。
キットの診断時間も短くなり、5~7分くらいで検出されます。
出たら100%陽性(特異度100%)ですが、出なかったから100%陰性ではなく(感度100%ではない)、診察上怪しい場合は、はやり目に準じた説明・治療を行います。
流行性角結膜炎は、『はやり目』という通り、非常に伝染性が強い結膜炎です。
家族内や、保育園・学校などで集団感染することもあります。
学校保健安全法では、出席停止になる病気です。
潜伏期間は8~14日です。
子どもから兄弟姉妹へ、そこから親に…と、時期をずらして全員感染の一家も珍しいことではありません。
研修医の頃、はやり目の患者さんから『‘○○眼科では持ち物全部燃やしなさい‘と言われました』と言うエピソードを聞いたことがあります。
当時の感染症に対する恐れもわかりますが、今は、そこまで過激に言う眼科医はいないと思います。
アデノウイルスのいくつかの型が流行性角結膜炎を起こすと言われています。
典型的な型以外にも、新しい型が見つかっています。
主な症状は、目やに(どちらかと言うと水っぽい)・充血です。
ショボショボしたり、時に発熱や耳介リンパ節を伴います。
片眼から始まることが多いですが、1~数日で両眼に発症します。
初めに発症した眼のほうが、症状が重いことが多いです。
アデノウイルスによる特効薬はありません。
しかし、炎症を落ち着かせるためのステロイド点眼と2次感染予防の抗菌剤を処方します。
順調に行けば、治癒するまでに7~14日です。
しかし、充血がなかなか引かない、角膜に傷が出来た、偽膜(ぎまく)が出来た…などの場合は、もう少し長引きます。
また、治癒した後も、1~2週間後してから、黒目(角膜)に濁りが出ることがあります。
小さな濁りだと自分では気が付きませんが、多くの点状の濁りが出ると視力低下を生じます。
治癒しても、念のため2週間くらいしてから、再度受診をお勧めしています。
実際、15年以上前のはやり目の後遺症(角膜の濁り)で、今も治療中の患者さんもいます。
消えたり、出たり…長いお付き合いです。
新型コロナウイルスもあって、手洗いが励行されていますが、アデノウイルスもとにかく手洗いです。
眼科医にコンタクトレンズではなく眼鏡が多い理由の一つに、出来るだけ自分の眼を触らない状況を作ることがあります。
院長も、新型コロナウイルス流行と自身の老化(老眼)に併せて、眼鏡にシフトしました。
眼を触る癖のある人は、特に気を付けてください。
夏の風物詩?と言われた『はやり目』ですが、今はどの季節でも起こっています。