2022.4.12 白内障と認知症
新聞の旅行広告に加え、週刊誌などの広告も欠かさずチェックしている院長です。
週刊誌を購読する習慣もなく、喫茶店に入って読むという習慣もないので、見出しだけで勝手に想像しています。
”眼の老化「白内障」の手術で「認知症発症リスク」は30%低減”
ある日の週刊誌の広告見出しです。
いつもならサ~っと流し読みですが、職業柄、ん?
今月の眼科学会誌でこのような内容を読んだばかり。
眼科学会では、高齢化に伴う眼科医療について常々検討・論議されています。
週刊誌の詳しい内容はわかりませんが、出版業界としては、目を引くような見出しやワードが読者の関心を引き売り上げにつながります。
健康関連の一般向け書籍でも、タイトルはびっくりするほど気を引きますが、内容は大したことがなかったり、医学的根拠に乏しいことも多々あります。
体験談が多いのも特徴です。
院長なりの学会誌に基づく解釈をしたいと思います(→院長コメント)。
まず、健康寿命を脅かす3大要因は、認知症・メタボリック症候群・フレイルです。
#高齢者の健康状態の特徴とQOL(生活の質)を調査する疫学研究(藤原京スタデイ・奈良県65歳以上約2900人参加)において…
視力不良を0.7(運転免許必要視力)未満とした時
視力良好(0.8以上)群では認知症5.1%
視力不良(0.7未満)群では認知症13.3%
視力が悪いほど認知症が増加していた。
#視力不良(0.7未満)群では、認知症のリスクが2.9倍高かった。
→白内障は加齢に伴い必発の病気です。
矯正視力0.7が視力不良のひとつの目安です。
#白内障手術既往群(668名)と非手術群(2096名)の2群で分析を行ったところ、視力の要因と関わらずMCI(軽度認知機能障害=認知症の前段階)を2割程度防げることが分かった(藤原京スタディ)。
→まずはMCI の早期発見が大事だと思われます。
名古屋市では65歳以上対象に物忘れ健診を実施しています。
当院でも実施していますのでお問い合わせください。
#80歳以上では、白内障手術を受けていない眼は、手術を受けている眼よりも優位に視力(0.7)が悪い。
→80歳以上だと、白内障手術をした眼のほうが、白内障手術をしていない眼よりも有意に矯正視力がよくなっています。
白内障手術をした眼は、眼鏡で矯正すれば視力が出る。
白内障手術をしていないと、眼鏡で矯正しても思うように視力がでない。
80歳未満だと、両者に有意差は出ていません。
→80歳未満だと、白内障手術をしなくても、眼鏡で良好な矯正視力が出れば、白内障手術を慌ててする必要もありません。
80歳以上だと、眼鏡よりも白内障手術をしたほうが、良好な視力が出やすいということです。
今すぐにでも認知症予防に、白内障手術を受けたほうがいいの?と心配されるかもしれません。
白内障は、多くは加齢による水晶体の濁りなので、しわのように多少に関わらず出現してきます。
矯正視力や裸眼視力で運転など支障がなければ、急いで手術する必要はありません。
多くは、眼科医のほうから手術適応のタイミングで声を掛けます。
もちろん視力がよくても、見え方の質にこだわられる方は、早めに受けることも可能です。
テレビや週刊誌の見出しで慌てず、眼科医にご相談ください。