2021.9.14 見つめられても…
高校生のA君が、お母さんと一緒に来院されました。
『1年位前から、息子と話していると、片眼が外に向いているんです』と、心配そうなお母さん。
『自分では、気づいていますか?
お母さん以外の周りの人から言われたことは?』と本人に質問。
自分で気にしたことはない。
母親だけが気にするだけで、周りは誰も気づいたり、指摘しないそう。
父親からも(まあ、この年頃だと、父親と顔を合わることも少ないでしょうが)。
『まじ、きもいんですよ~この人(母を指して)。
話してると、俺の顔じっと見てきて…まじ、うざいんっすよね~
それで、なんか変…とか言ってくるし…』
院長の脳裏に『うっせわ~♪』が流れます。
母親の前で…
『まあまあ…診察始めましょう』
診察を始めます。
ペンライトを持ち、正面視させると、両眼ともまっすぐ前を向きます。
しかし、斜視検査をすると、片眼が外側に向きます。
輻輳(寄り目)は十分できています。
軽い近視あり。
その他、眼の病気はありません。
片眼の外れ方も軽度なので、立体視は正常でした(斜視だと立体的に見る力が育たないことがあります)。
『お母さんのご指摘のように、やはり、片眼が外向きますね。
いつもは正面視で問題ないので、間欠性外斜視です』
『え~何々?まじっすか~』
間欠性外斜視は、正面視だと、まっすく前を向いているのですが、何かの拍子で片眼だけが外側を向く斜視です。
外向きの力が多々強いので、片眼が外側を向いてしまいます。
いつも(恒常性)ではなく、時々(間欠性)。
緊張が取れたときとか、気が抜けたときに、片眼が外れやすくなります。
なので、人前(学校などでの緊張状態)では気づかれないことが多いです。
家で家族が気が付くか、自分で気が付くか…
子どもが小さいときは、母親(たまに父親)が気付くことがほとんどです。
学校検診で見つかることもあります。
治療は、外向きの程度により、経過観察・眼鏡・手術があります。
Aくんには近視もあったので、眼鏡を処方することにしました。
『どう?』
『いい感じっす』
『お母さんが気付いてくれて、眼科受診することになって良かったですね~
お母さんほど、Aくんのこと見つめてくれる人はいませんよ。
だから、変化に気づけたんだから。
うざいなんて言わないで。
ね~お母さん』
お母さんをしっかりフォロー。
『わかるけど、時々マジうざくなるんですよ~』
息子の言い分もあるけれども…
息子も、思春期の頃、母の気持ちも知らず人前でボロクソに言ったよな~
母の愛は無限の慈愛です。
パートナーの愛は、恋愛から始まる有限の愛。
長い年月をかけて、慈愛になるのだけれど(院長も慈愛の域に…)。
親子連れが来院される度に、自分の子育てを顧みて、診療後、安心して帰っていただきたいと思っています。
*来週は『公センセの部屋』お休みします