2021.8.3 二桁の人
電子カルテになり、来院患者は、診察券番号・氏名・年齢ともに一覧で確認できるようになりました。
診察室のパソコンで、本日の混み具合や検査の進行具合などがわかります。
診察券番号の付け方は、病院やクリニックによって違いはありますが、来院順に付けることが多いと思います。
ある日、2桁番号の患者さんが。
ちょっと年季が入っている当院としては、非常に珍しいことです。
1桁は開院当日に来院。
1番から9番までしかありません。
数人は知人だし、一回きりの受診患者さんもいるし、緑内障で長く診ていた患者さんも数年前鬼籍に入られました。
2桁も同じく開院当日か翌日。
10番から99番が該当します。
○○A子さん…誰?
『○○A子さん、お入りください』
赤ちゃんを背負い、2歳くらいの男の子を連れた眼鏡をかけた女性が入室。
この顔、見覚えが…
『もしかして、△△(旧姓)A子ちゃん?』
『そうです。お久しぶりです。覚えてくれてましたか?』
やっぱり。
A子ちゃんは視力検査で来院した小学校低学年の女の子でした。
不同視(左右の度数の差が大きい)と乱視があることが分かり、弱視訓練を開始しした患者さんです。
眼鏡を常用することから始めました。
左右の度の差は縮まらなかったものの、最終的に両眼とも眼鏡で矯正視力が出るようになりました。
目の前の女性は成人した素敵な女性ですが、小学生のA子ちゃんも重なっています。
近況を聞くと、現在は関東在住とのこと。
『ちょうど、実家に帰ってきたので。定期検診と気になることもあったので、診てもらいに来ました』
『お母さんはお元気?』(お母さんの顔も浮かびます)
患者さんには失礼ですが、こうした再会は、患者さんからもらう、クリニックを続けるモチベーションアップとなるプレゼントです。
2桁の患者さんのひとり、Bさんからは、時々往診の依頼があります。
眼脂や、目の周りのただれなどで。
Bさんは90歳超。
残念なことに、認知症進行により、もう院長どころか、家族のことも施設の人のことも覚えていません。
診察券番号は、2桁前半。
受診された当時は60代でした。
施設入居された頃から、人の顔も物事もどんどん忘れられ…しかし、当時Bさんと交わした、いくらかの会話は、確実に院長には記憶されています。
2桁の人も、一回限りの患者さん、鬼籍に入られた患者さん、転居された患者さんなど、色々いらっしゃると思います。
ただ、開院当日と翌日の患者さんだけに、感慨深いものがあります。
記念日当日を覚えているのは、子どもの誕生日、自身の結婚式。
そして、院長にとっては開院日です。
周年が来るたびに、院長・スタッフ・患者さんとで築き上げてきたのだと実感します。
お店でも会社でも、何かをやり始めた当人は、その日は特別なんだと思います。
24年前の夏の日もセミがジージー鳴いていました。
A子ちゃんのように、5か月の次男をおぶり、2歳目前の長男の手を引く若いお母さんでした。
開業で、生活は一転。
育児より仕事優先、勉強優先。
でも、育児は待ってくれない。
今ほど筋肉はないが、日々を乗り切る体力。
今ほど知識・技術はないが、患者さんの症例から勉強させてもらう貪欲さ。
若さゆえの勢い。
来年の25周年に向かって、少しでも地域医療に貢献できるよう、初心忘れず、診療に励みたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。