2019.1.22 たまにはチクチク
『欲しいものがあるんだけど、探しても見つからないから、一緒に探して』
『何?』
『エルボーパッチジャケットって知ってる?』
『肘当て付きジャケット(そのまま)?』
『その通り!』
デパートならあるはず。
道すがら『なんで、また?』
ドラマで俳優の織田裕二が、鳥狩猟シーンで着ていたそう。
ワンシーンだけで、以降そのジャケットでの登場はないものの、『ひどく気になってしまった』と言う訳です。
エルボーパッチジャケットはカジュアルに分類されるので、紳士服売り場の一つ上の階へ。
今度は、カジュアル過ぎて、夫の欲しいものと違い断念。
大きなデパートでも置いていないくらいなら、そのドラマのたったワンシーンでのジャケット(恐らくスタイリストが用意した)は注目を浴びなかったのね!?
しばらくして、新しいジャケットを買ってきた夫。
『これに、パッチを付ければ完成だと思って』
確かに名案。
院長(私)の肘当てのイメージは、セーターにフェルトのパッチ(アイロン熱で付けた)。
『本革のこげ茶がいいな』
『パッチが三分の一ほどめくれていた人を見たことあるから、縫い付けが良いな』
名古屋随一の手芸用品店へ。
実は、初入店です。
ボタン付け、ゴム替え、雑巾縫い、少々のほつれまでが、普段の私の守備範囲なので、今まで縁のないお店でした。
入ってみると、結構な人。
洋裁などの手作り趣味の人は、思いの他、多いようです。
パッチを聞くと、売り場に案内してくれました。
フェルト、合皮、本革…種々揃っています。
『本革のってどうやって付けるのですか?』
『小さな穴が開いているので、そこを縫えばいいですよ』
『どんな縫い方で?』
『どんな風でも。穴に通すだけでもいいし、かがり縫いでも。誰でも、簡単に出来ますよ』
『あの~私、素人なので、詳しく教えてもらえますか?』
私の実力と装備(家の裁縫箱は、『よしもと大笑い弁当』を食べた後のプラスチック製お弁当箱。中身は、ハサミ・白黒の糸・縫い針)を聞くと、最適な糸と針を勧めてくれました。
当初、洋服お直しの店に頼む予定だったのですが、『誰でも出来ますよ』の一声と、併せて買った糸と針を前に『やってみる!』気に。
革用の糸と針は特殊です。
糸は、釣り用とは言わないまでも、かなり弾力があります。
針は、太く長く、先が鋭角です。
老眼のため、眼鏡は外して裸眼仕事です。
近視は、年をとっても手元作業が出来るのは幸い。
パッチとジャケット生地がずれないよう固定しつつ、悪戦苦闘。
チクチク…
一心不乱に縫い進めているうちに、研修医時代のエピソードを思い出しました。
ある病院で全科当直のサブについていた時のこと。
頭皮が裂けて血だらけの外傷の男性が搬送。
意識清明。
『縫っといて』と言われ、習ったばかりの縫合を眼科医ならでは?の細さでチクチク。
戻ってきた外科部長に『まだ、縫ってるの?頭は血流豊富だから、ザクザク縫えばいいから』
その後、頭皮の縫合には縁がなく、ご指導は活かせず現在に至ります(眼科医ですから)。
とにもかくにも両肘のパッチ完了。
素人仕事まるわかり…ですが。
『縫い目は誰も見ないよね』と思いつつも、もう一つ勧められたアクセント色の赤糸にしなくてよかった。
『織田裕二(気分)になってね~』と夫に渡します。
概ね感激していたから、『これで良し!』です。