2018.1.23 右目が見えない
『先生、命拾いしたわ。ありがとう』
久しぶりのHさん来院。
『不幸中の幸いで良かったですね』
Hさんは、ゴルフ大好きの元気な後期高齢者です。
ある日の午後…
『珍しいですね。午後に来院されるなんて(いつも午前)』
『ゴルフやっとたら、球がかすむようになって。なんか、右目が見えんのだわ』
検査をすると、視力は両眼とも1.2で、よく出ています。
その他、眼球の前方、後方(目の奥)にも、特に変化はありませんでした。
視野検査をしてみると…
両眼の右側半分が見えていません。
やはり…
頭痛は?なし。
しびれや手足の動かしにくさは?なし。
血圧を測ると…高い。
診察・検査の結果を話し、『脳梗塞の可能性が高いです。連絡するので、病院の脳外科を受診してください。このまま、すぐに行ってくださいね』
同日、脳外科の先生からお返事。
『脳梗塞にて緊急入院』になったとのこと。
『ほっ』
左右の眼それぞれ、同じ側が見えない視野のことを『同名半盲』と言います。
今回は右側が見えていないため、Hさんは右目が見えなくなったように感じられたのですが、検査をすると、左目も右側が見えていないことが判明しました。
脳梗塞を始めとする、脳疾患が原因で起こります。
Hさんは、しばらく入院生活を送り、無事再来されました。
ただし欠損した視野は戻っていません。
『あの時、ラウンド途中で止めて、来て良かったわ』
『ゴルフまたやられますか?』
『いや~、もう止めた。今まで、十分楽しんだで』
某カントリークラブで名前を見つけて以来、密かに憧れていたHさん。
『麻痺が出んで良かった』
『お大事になさってくださいね』
ふだん、命から遠いところにいる眼科医。
ですが、脳梗塞・脳腫瘍・脳動脈瘤など、時に命にかかわる病気を見つけることもあります。
微力ながら、お役に立てた一件でした。