2017.6.6 映画『 光』
2017年カンヌ国際映画祭選出、エキュメニカル審査員賞受賞。
河瀨直美監督作品『光』を見てきました。
単調な日々を送っていたヒロイン美佐子(水崎綾女)は、視覚障がい者に向けた「映画の音声ガイド」の仕事をきっかけに、弱視(眼科医としては、病気を推測できますが)の天才カメラマン、中森(永瀬正敏)と出逢います。
美佐子は、中森の無愛想・無遠慮な態度に苛立ちながらも、彼が過去に撮影した写真に心を動かされ、交流が始まり、関係が深まっていきます。
命よりも大事なカメラを前にしながら、美佐子を最後の写真として撮る中森。
次第に視力を奪われていき、白状生活となる中森。
彼の葛藤を見つめるうちに、美佐子の中の何かが変わり始めます。
映画の音声ガイドとは、映画の映像を言葉で説明することです。
視覚障がい者の人は、映画を鑑賞する際、セリフなどの音声しか楽しめません。
そこで、スクリーンの風景を描写するのが、音声ガイドです。
人物の表情や風景。
感情や主観は入らず、淡々と描写されます。
「緑に囲まれた日本家屋」
「庭の木が、家よりも大きく繁っている」
「逆風を前にして立っている」
などなど。
映画では視覚障がい者(の役)モニターたちが、美佐子の音声ガイドに対して意見を述べます。
例えば、「砂の彫像」という表現では、すぐに砂の像が浮かばない。
写実が多すぎて、せかされているようで、映画の世界と自分が一体になれない。などなど。
美佐子は痛手を受けますが、またトライしてよりよいガイドを作ろうと奮起します。
見えない世界で、映像をイメージするための補助となる音声ガイドは、とても難しいものだと感じました。
永瀬正敏演じる中森。
そのほか視覚障がい者を演じる役者さんたちは、眼科医から見ても、視覚障害のある人が演じているようでした。
映画では、本筋とは離れていますが、美佐子が認知症の母に尋ねる場面があります。
「お母さんは幸せ?」
「うん、美佐ちゃんが幸せなら」
そうなんですね~
息子たちが幸せなら、私は幸せ。
同様に、私が幸せなら、母も幸せなのでしょう。
子が幸せなら、どんな状況下でも親は幸せなんだ…
当たり前のことを改めて教えられました。
機会があれば、ぜひ見てください。
(伏見ミリオン座にて上演中)
クリニック待合室にパンフレットを置いておきます。