2016.4.26 引っかかり
倉庫にあった朽ちそうな段ボール箱の中から見つけた中学の卒業文集。
中学時代に一番心に残ったことについての内容。
題名は…『絶体絶命』
以下抜粋。
中1の文化祭の終了時、舞台の後ろに行こうとして、私のセーラー服の裾が、どういうわけか緞帳(どんちょう・客席から舞台を隠す幕)の棒の端に引っかかってしまった。
「外さねば」と考える余裕もなく、緞帳は上がり始めた。
演劇部員が知らずにボタンを押している。
私はステージを見下ろせるように、宙に浮いてきた。
「助けて~。誰か助けて~」と言っても下にいる誰にも気づいてもらえない。
緞帳も最高位で停止したので、真下とその周り少ししか見えなくなってしまった。
みんなが体育館にいるうちに、何が何でも助けてもらわなければならない。
無我夢中で「助けて~」の連呼。
誰かが気づいて先生に知らせてくれた。
「1年生が引っかかっとる」
「えー!?引っかかっとる?」
「緞帳を下ろせ~」
「手を離すな~死んでしまうぞ!」
左手には眼鏡、残る右手と引っかかったセーラー服のみで自分を支える。
セーラー服の裾が破れたらおしまい!
徐々に身体が下へ降りて行き、みんなの声が大きくなる。
足が地に着いた。
手はしびれて足はがくがくしたが、それでも私は、安心感で一杯だった。
あの時、小説みたいにうまく助かったが、もし、誰も気づいてくれなかったら、耐えられず手を放してしまっていたら…と思うとゾッとする。
今ではテレ笑いで話せることも、あの時は絶体絶命だったのである。
戦争を知らない私にとっては、あの時ほど無事で良かったと思えたことはない。
中学3年生の私が中学1年の私を回顧して書いています。
あれから30年以上人生を歩んできましたが、あの時の自分の幸いなる命に改めて感謝です。
それにしても、ドアノブでよく服の袖口を引っかける私。
白衣が引っかかることもあり、弱い生地なら破れることも。
ドアノブを下げて開け、絶妙に袖口に引っかかる方向を向いて進むのだと思いますが。
袖口で済んでいますが、『引っかかり癖』があるようです。