2025.4.22 科学は美しい(日本眼科学会総会)

毎年大きな学会にはテーマがあります。

今年の日本眼科学会総会のテーマは『科学は美しい』

会期は毎年4日間。

今年は東京国際フォーラムにて。

開業してからは、4日通しでの参加は縁遠い院長。

オンデマンドで後から聴講できるとはいえ、やはり臨場感を味わってこその学会。

 

今回念願の全日参加を果たしました。

学会のスタイルも時代の流れ。

たまたま初日の聴きたいセッションはENGの表示。

講演が始まると、日本人座長・演者なのにオールEnglish!

英語のスライドは見慣れているものの、講演まで英語となると、日本語への変換をしつつ内容を理解する脳内処理の連続。

1時間20分!

質疑応答も英語。

そのせいか外国人の参加者も多い。

講演が終わるとぐったり。

いかに第1言語(母国語)は、音楽のように脳に入ってきて理解されているのかを再確認。

会場で英語千本ノックを受けるとは(母国語と同様に英語が堪能なDrは日常でしょうが)。

 

外国の先生の招待講演は、以前は同時通訳でしたが今回はAI(と思われます)。

演者の話に応じて、スクリーンに和訳がどんどん出てきます。

そのまま訳してくるからでしょうか、文脈を読んで理解するのに精いっぱい(内容が高度だったせいもあるかもしれませんが)。

単語や言葉も状況に応じて使い分けします。

AI翻訳だと、言葉が生きていない気がしました(内容を理解していないままそのまま訳すみたいな)。

 

さて今回は、『レジェンドと語る○○』というシンポジウムも目玉。

○○は、目の各部位なのですが、緑内障セッションでは、院長の師匠であるY先生が登壇されました。

Y先生はK教授の招きで岐阜大学眼科学教室に来られ、研修医院長と入局は同年。

緑内障の手術が大きく変わって行く時代でした。

診療・手術や研究を大きく担っていたのが当時中堅どころのY先生でした。

緑内障の患者さんの眼圧日内変動を調べるため、研修医は2時間ごと24時間測定しました。

深夜から早朝は12時2時担当と4時6時担当に分かれるものの、2人ともそのまま仕事。

働き方改革などない時代、診療もやり研究(の末端)もやり、それでも一人前の眼科医になるためには必要なことと信じていました。

(お陰で博士論文が書けました)

Y先生は以前日本緑内障学会会長も。

今までの診療・研究の軌跡を発表されました。

 

『患者さんを診ていると見えないものが見えてくる、病気だけでなく患者さんの人生を診(見)ている』

Y先生の言葉を肝に精進していきたい!と改めて決意した院長でした。

 

さて、信心深い?院長。

今回は市ヶ谷の茶ノ木稲荷へ。

稲荷神社の御神使の白狐が茶の木で目を突き、それ以来崇敬者は茶を忌み、正月3が日は茶を吞まない習俗があったとのこと。

特に眼病の人は、17日あるいは37日21日の間茶を断って願えば霊験あらたかであったと言われています。

たくさんの眼病治癒祈願の絵馬が。

いつものように患者さんたちが良くなりますように。

 

科学(医学)は、事実の積み重ねをデータ化し解析し結果を考察し結論に至る。

その結果、新たな発見・真実に至ります。

だからこそ美しい!

 

目の神様は科学から離れて気(と脳)を緩ませてくれる場所です。

市ヶ谷の駅の傍には都会(新宿区)なのに釣り堀が!

桜の季節にお花見と参拝と釣り堀の3本立ても楽しそうです。

 

*4月29日、5月6日は公センセの部屋はお休みです。

■目の神様シリーズはこちらからご覧ください

目の神様in奈良&愛知

目の神様in 鎌倉

目の神様 in平泉

目の神様 in 仙台

やりなおしたい?

初めての御朱印

身代わりどじょう

目の霊山

余呉へGO,GO

鎌倉好き

医者も祈願する!?

 

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2025.4.15  運転外来

緑内障が専門(博士論文は緑内障)なので、地域のかかりつけ医でありながら、緑内障の患者さんは経年的に増加していきます。

長い人は、大学病院時代から30年以上。

開業して以来ずっと経過を診ている患者さんも多く、一生のお付き合いそのものです。

 

緑内障は、目の神経が主に眼圧によって傷つき、その結果視野欠損や視力障害が生じる病気です。

日本人の40歳以上では約20人に1人が緑内障という疫学調査の結果を見れば、40歳になれば一度緑内障の検査を受けたほうが良いです。

特に強度近視や家族歴ありの場合はリスクファクターです。

機器の進歩により、ごく早期の緑内障や緑内障グレーの状態も発見診断することが出来るようになりました。

 

中期・後期で診断、もしくは中期・後期になってくると、視野検査でも自覚するような視野欠損が出てきます。

視野検査では見えない部分は黒くなりますが、実際には、視野欠損はその部分が黒く見えるのではなく、なんとなくぼやけたように見えるのです。

しかも、片眼で見えない部分があっても、もう片眼で見えると、脳が処理して両眼では視野欠損がないように見えてしまいます。

このため、片眼が悪くても気が付かないことが多いのです。

 

中期・後期でも視力は保たれていることが多いので、自動車の運転をされる人がほとんどです。

眼科医としては、視野も重視し、運転時の注意すべき箇所をお話ししたり、時には返納を勧めます。

見えていると思っているけれど、意外と車を擦ったり、ひやりとした経験をしたりすることは多いようです。

 

緑内障で上方視野欠損があると、信号の見落とし特に近い距離で交差点が連続してある場合、向こう側の信号を見ていて手前を見落とすなどの危険があります。

また外側に欠損が及ぶと、飛び出しに対応できない場合もあります。

下方視野障害は、手元のメーターなどがすぐに見えない場合があります。

 

網膜色素変性症という病気は暗いところで見にくくなる病気ですが、徐々に周辺から視野が狭くなっていきます。

視力が良い場合、周辺の視野の狭まりに気づかないことが多く、脇からの飛び出しや変化に対応できなくなります。

 

脳梗塞など脳の病気、脳腫瘍などの病気でも視野に影響を及ぼすことがあります。

 

運転免許は視力だけで更新できるので、視野は不問にされています(特別な場合を除く)。

 

普段の診療では、視野欠損が運転に支障を及ぼす可能性のある患者さんには随時お話をしています。

 

そして…ついに名古屋市立大学付属東部医療センター眼科でも運転外来が始まりました。

全国4番目、東海地方初です。

緑内障などで視野に異常がある人の運転能力をドライビングシュミレーター(模擬運転装置)を使用。して判断できるようになりました。

 

車を発進すると、交差点や信号があったり、車や人が横から出てきたりなどいろんな場面に出くわします。

運転中どこに視線が向いているかを追跡記録されます。

その結果から医師が運転時に気を付けるべき具体的なアドバイスをします。

 

疑似体験はすでに昨年の学会で院長も体験。

今年の学会でも再体験を申し込みました。

視力視野が正常でも加齢による変化はあるはず。

体力知力気力に自信があるつもりの院長でも、あくまで同年代に比べて…と戒めも必要。

運転能力も然り、病気があればなおさら。

自分の視野と運転能力の関係を理解するために運転外来は有用と考えます。

 

運転外来は主治医の紹介状が必要です。

 

こちらもご覧ください

2024.6.11  運転止める?続ける?

砂嵐の運転

 

カテゴリー:クリニックに関すること 健康 眼に関すること

2025.4.8  ずっと0歳

今年のお正月、一本の電話。

N保育士から。

毎年年賀状のやりとりをしていたのですが、今年は時勢に乗り?年賀状じまいの院長。

『あけましておめでとうございます!年賀状じまいにしたから思い切って電話してみたの!』

懐かしい声。

お互いの健康状態を確認してからおしゃべり。

『会いたいな~って、ずっと思っていたの』

『私も~。絶対会いましょう。思い立ったら吉日。いつにする?』

『こちらは時間あるから、長谷川さんに合わせるよ~』

ってことで、いくつか院長が候補を挙げ、その中で日時お店を決定。

 

第1子産休明けで大学病院復帰の新米ママ(院長・当時は最下位の医局員)。

N保育士は、院内無認可保育園の長男の担任でした。

まだコートの中にスッポリ隠れてしまうくらいの小さな赤ちゃんを預けて働く。

たとえ当直免除でも周囲に気を遣う(今みたいに堂々と権利を主張できない)し、子供のことも気になるし…

元気でやっているのかな?

昼休みにお乳飲ませに行けるかな?

朝微熱あったけれど、仕事中に呼び出されないかな?

などなど。

新米ママは心配が尽きません。

初めての子育てと仕事の両立。

当時の日誌には、毎日息子の健康状態や行動について、また母の質問が書いてあります。

母の相談にも乗ってくれた頼もしいN保育士でした。

 

大学病院のお給料(一番安かった)はそのまま保育料に消えていきます(一番保育料が高かった)。

無認可なので、バザーもあるし、保護者の掃除当番もあります。

仕事も中途半端(な気がする)。

なんのために働くのか?????

悶々とした日々。

 

自分で育てれば保育料は浮くけれど、眼科医のキャリアは中断。

継続持続勤勉が自分の強みだと思う今、中断なく眼科医を続けて来れたのは、保育園のお陰です。

新米ママかつ中途半端女医を励まし、子供の成長を一緒に喜んでくれたのは、保育園の先生たち。

 

実は院内のT保育所に預けていたのは数か月。

当時の医局人事は、大体1~2か月前に発令。

Noという選択肢はなく、医局に属するならYes。

最低在籍期間半年を切っての退園だったので、違約金も発生。

泣きそうになりながら支払いました。

 

半年に満たない在園期間でのN保育士との関りでしたが、年賀状のやり取りは続いていました。

しかし、何十年ぶりの再会にはドキドキします。

 

当日会って食事をすると不思議。

この約30年の空白がなかったようにおしゃべりが弾みます。

当時の同じクラスのAちゃんは今…Bちゃんは今…

そして長男Kも0歳の時の思い出。

N保育士にとっては、もう四捨五入30歳になる子供たちもずっとハイハイしておっぱい飲んでいる姿です。

 

長男の現在の姿は、0歳のキュートなKからは想像できないお兄さん(おじさん?)です。

が、写真を見て『うん、やっぱりここのところが似ている…』

N保育士の心の中で育っていったK。

誰かに想ってもらえているのは嬉しいことです。

 

開業して以来の患者さんはもう立派な成人なのに、初診で来院した小さい時の姿が焼き付いています。

だから何年かぶりかの来院で、成長した姿(目はもちろん!)を見ることは嬉しいものです。

N保育士の気持ちがわかります。

 

眼科医のキャリアだけでなく、人との出会いも保育園に預けたからこそのご褒美です。

働くお母さん、頑張って~

 

『必ず年に1回会いましょう!』

『絶対に会いましょう!』

また新しいお楽しみが増えました。

一緒に出勤&登園

 

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 公センセの想い

2025.4.1  頑張ったら …

先日Aさんの結膜炎の治療が終了。

『今回はこれでおしまいです。また、何かあったら来てください』治療終了の際のいつもの台詞。

『あの…私、どうしても先生に言おうと思っていたことがあるんです…』

え?!何々、この改まった雰囲気?!

『息子のT、覚えてみえますか?』

Tくん、もちろん!

中学受験して進学したところまでは覚えています(それ以降は受診なし)。

『何かありましたか?』

『実は…』

T君は、学校の色覚検査で受診勧告され、当院で再検査して確定した。

その際、色覚特性の話や、進路就職の選択可能性の話などAさん(母)とT君に話をしました。

『あの時の言葉に支えられて、進路を考えました。楽器を弾くのが好きだったので、そちらの方向に進み、今では音楽家になりました。

きちんと説明してくださって感謝しています。いつかお礼を言わないとと思っていました』

今回の結膜炎での来院がお礼のチャンスと思われたそう。

『Tももう30超えたんですよ』

年月が流れるのは早い。

『検索してみてください』の言葉に、立派な音楽家のT君が現れました。

 

T君の話を聞きつつ、院長脳内検索エンジンがかかっています。

『T君、妹さんいらっしゃいましたよね?』

『はい』

『Mちゃん?!』

『そうです、先生すごい!』

Mちゃんは、心因性視力障害でみていました。

心因性視力障害とは、目に異常がなくても、視力が低下したり変動が起こります。

また、特有の視野障害を起こすこともあります。

病名の通り、心因性で、家庭内(兄弟姉妹との関係など)、習い事、友人関係などが原因の場合と、眼鏡に憧れる眼鏡願望の場合があります。

気のせい…にしてしまわず、しっかりと子供の声を聴くことが大事です。

院長自身、偉そうに言いながら、子供にちゃんと向き合えなかった母親だった自戒を込めて、小さな患者さんに接しています。

Mちゃんは、小学校には馴染めなかったけれど、新しい目標に向かって中学受験に臨みました。

いつの間にか、視力も回復。

自身も心因性視力障害の勉強をさせてもらった患者さんです。

『Mちゃん、今は?』

『SEとしてIT企業で働いています』

T君、Mちゃん、二人とも立派な社会人になって院長感涙ものです。

 

その日一番のプレゼントでした。

 

最近は記憶する必要性がどんどん減っています。

カルテも名前や番号で検索すれば、すぐに病名も内容も見ることが出来ます。

しかし、検索してもわからないことがあります。

それが、患者さんとのエピソードです。

簡単なエピソードはカルテに記載しますが、もっと深い話や診療とは関係ないここだけ(診察室)のエピソードは、院長の脳内のみです。

それでも、何か関連ワードから脳内検索すると、不思議に出てきます。

さらに、その家族までが…芋づる式に出てきます。

脳内検索処理能力、捨てたもんじゃなさそう。

 

こういうことを言うと、息子たちから『デジタル処理能力は低いことも自覚しないと!』と厳しい言葉。

先日も新幹線をネットで購入したら、ICカードに紐づけすることを知らなかった院長。

『そのまま行っても、改札でひっかかってた』息子があきれながらも紐付けしてくれました。

ご時世的には、デジタル処理脳能力向上しないと!

 

とはいうものの、無機質なデジタル検索能力より、脳内検索のほうが、名前からモノクロ画像・思い出、まつわる暖かみと広がりをもたらしてくれます。

院長脳内の患者さんデータは門外不出であり、宝物です。

頑張ったら飛べなくても翔べる!

 

こちらもご覧ください

2025.3 .25  頑張っても…

2019.7.30 見えるのに見えない

 

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