2023.1.31 白い杖の来客
『…バレーのAさんからお電話です』と受付スタッフから。
…バレー?バレエ??
昨夏のある日の朝刊。
視覚障害者と健常者が一緒に楽しめるフロアーバレーの記事が。
眼科医ゆえ、目に関する記事やニュースには特に目が行きます。
更に、『健康スポーツ医』であり『障がい者スポーツ医』の院長。
興味深く読みました。
『視覚障害者用補装具適合判定医師』養成講座でも『障がいスポーツ医』養成講座でも、実習で障害者スポーツの勉強や体験をしましたが、『フロアーバレー』は知りませんでした。
プレイの様子と、キャプテンAさんの写真が。
そして連絡先のAさん携帯番号も併記。
気になる…気になる…
面識のない個人の携帯電話にかけるとなるとオバサン(院長)でもハードルが高い…
どうしよう、気になるけど…
迷いつつ2週間。
思い切って電話をかけます。
相手は、写真よりも若い声。
体験する予定か聞かれ、まずはどんなものか知りたいので見学を、と伝えます。
2か月先までの練習日を聞きメモします。
一応連絡先を、と聞かれたのでクリニックの番号を(携帯番号よりは…)。
土曜日は絶対無理だし、日曜日も既に所用が入っており、結局行けずじまいに。
そして年が明けた1月。
クリニックに電話があったという次第。
『びっくりしました。眼科の先生だったんですね~それなら尚更説明しに行ってもいいですか?』
『もちろんです』
約束の日にクリニックに現れたのは白杖の二人の青年。
ウサギ小屋みたいな院長室で話すことに。
ドアを開けて室内へ。
ガッチャーン!
早速大きな音がします。
『すみません!』
いえいえ、『すみません』は当方です。
入ってすぐの仕事机の角に、文具を入れたプラスチックケースが置いてあったのでした。
初めての場所だと、視覚障がい者は、白杖、手指の感覚で空間把握をします。
ですので、角には物を置いたりしてはいけません(眼科医として反省)。
二人が自己紹介をしてくれます。
Aさんは、高校生の時、突然視力障害に。
その後、盲学校に転校しています。
Bさんは、幼少時から見えにくかったのですが、進行により中学校から盲学校に。
『Aさんは○○の病気、Bさんは○○の病気ですよね!?』
『正解です、さすがです』(エピソードを聞くと…眼科医ですから)
フロアバレーボールとは…
6人制バレーボールに沿った、視覚障がい者と晴眼者(視覚障害がない健常者)が一緒に楽しめるスポーツ。
ネットの下で床を転がるボールを打ち合う。
ネット前で目隠しをする3人の前衛と、コートの後ろの後衛(弱視者でも晴眼者でも)が1チームとなり、競技をする。
フロアーバレーボールチームは、他にもいくつかあり、交流試合もするそう。
また、年に一回は、愛知県大会も開催されているそうです。
『一度見学に来てください』
白杖を持つ程度になると、回復と言うより現状確認のための大きな病院での定期検査となる事が多いです。
したがって、町の眼科医は接点がなくなってしまいがちです。
『なんか目が乾くなとか、目やにが出るなと言う時に行ける眼科がないんですよね。行ってる病院は、完全予約制だし』
見える見えないだけでなく、もっと日常の病気(結膜炎とかドライアイとか)は誰にでも起こりうるはず。
『そういう時は、町の眼科に来院してね~』
見学、ぜひ行かねば。
またまた未知なる世界へサーブ!